【警鐘】進む「中台一体化」を放置するな

【警鐘】進む「中台一体化」を放置するな

〜参議院に調査委員会の設置を!!〜

平成22年7月16日「日本時事評論」より転載———————————–
〈天録時評〉

台湾と中国は、六月二十七日に中国・重慶で、貿易自由化のための包括的な経済協
定である「両岸経済協力枠組み協定」に調印し、経済の一体化を目指して大きな一歩
を踏み出した。中台は工業製品など計八百六十品目の関税を平成二十五年(2013)一
月一日までに撤廃すると共に、金融や医療など計十二のサービス分野でも市場開放を
進め、経済分野の統合を目指している。

中国政府は、今回の協定調印に至るために、大幅な譲歩を行なっている。台湾から
輸入する農産物や工業製品に対して関税を免除する一方、台湾に対しては農産物の市
場開放を求めず、労働力輸出もしないことを約束するなど、台湾側の要求を呑んでい
る。これは中国政府が、貿易自由化の包括的な経済協定の調印で譲歩する見返りに、
政治分野の交渉を促進するのが狙いであることは明らかだ。胡錦濤政権は、自らの任
期である平成二十五年張るまでに、中台統一への道筋をつけようとしている。
さらに中国は巧妙に台湾企業の取り込みを策している。中国は世界の国々と自由貿
易協定の締結を進めている。したがって、台湾企業も中国に進出すれば、中国が自由
貿易協定を結んだ国々へは関税が免除されるが、台湾から輸出する限りは関税を払わ
なければならない。しかも、中国政府は台湾が東アジアの国々などと自由貿易協定を
締結することを妨害している。従来から、大陸に進出する台湾企業の優遇を行ってき
たが、関税面の利点などから今後ますます大陸に進出する台湾企業は増えそうだ。

一方、中国との関係重視の馬英九政権が発足して二年が経過したが、政府間交流や
政治分野の交渉は進展せず、中国政府は切歯扼腕している。台湾国内に独立派を中心
に中国に併合されることへの根強い反対があるからだ。枠組み協定の調印に対して
も、李登輝元総統を先頭に十五万人の反対デモが行われた。しかし、枠組み協定で譲
歩した中国政府は、今後、強引に政治分野の交渉を迫って来るのは明らかだ。

わが国にとっての懸念は、台湾と中国との経済一体化が進み、台湾が香港化し、後
戻りできなくなることだ。台湾の地勢的位置は、わが国の安全と繁栄の鍵となる重要
な地点にある。近代化と増強を続ける中国海軍は、最近では、わが国の排他的水域内
ですら、我が物顔で軍事行動を行っている。まして、中台の一体化が進み、台湾海峡
が中国の内海と化せば、わが国の船舶の航行も大きな制約を受けることになる。中台
関係の行方は、わが国にとって死活的な重要な問題である。

しかしながら、中台関係の進展がわが国にどのような影響を及ぼすかなどは、専門
家を交えて国会で議論されることもない。政府が十分な調査を行い、情報を得て、わ
が国の国益を守る観点から、英知を結集して戦略を検討している気配すらない。わが
国の政治はすべて内向きでしかなく、党派争いに終始している間に、わが国の足元が
大きく揺らいでいる。

参議院選挙が終わったばかりだが、台湾問題などわが国にとって重要な問題につい
て、参議院に超党派の調査委員会を設置し、専門家の見解を聞いて長期的な予測を行
い、わが国の進むべき方向性を明らかにすべきだ。あらゆる角度から調査を行い、議
員が公開で議論を展開して、その調査結果を政府と議会に報告するなどの活動をすれ
ば、参議院の存在価値も高まってくる。参議院は議員のためにあるのではなく、国民
のため、国益を守るために存在するという原点に返り、衆議院のカーボンコピーのよ
うな委員会のあり方も見直し、重要な国家的課題ごとに調査委員会の設置を検討すべ
きである。


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