【論説】台湾の国際的地位について

【論説】台湾の国際的地位について

        アンディ チャン

台湾の国際的地位は戦後から今日まで未定であることは誰でもわか
っているが、台湾の帰属決定権がどこにあるかについて違った解釈
がある。台湾の帰属決定権は人民にあるはずだが、そうでないと言
う人が多い。

台湾の国際的地位についての主張は二つある。第一はアメリカは現
在でも台湾の「主要占領国」であり、従って台湾の帰属決定は「ア
メリカの責任と義務」と言う主張である。第二は、日本国はサンフ
ランシスコ平和条約で台湾澎湖の主権を放棄したが、戦争法による
と今でも天皇陛下の神聖不可分の領土で天皇が(アメリカに?)台
湾の主権返還を要求すべきだと言う主張である。

この二つの主張はこれまで多くの討論があったが、どちらにも疑問
がある。台湾の主権は未定なのにアメリカが占領権を握っていると
言う主張、次に台湾は今も天皇陛下の領土であると言うとんでもな
い主張。第一の主張は多くの人が支持しているが疑義もある。第二
の主張はナンセンス、ナンセンスだから論破する必要がある。

●サンフランシスコ平和条約(SFPT)の領土問題

SFPTの領土問題はその第2章、領域に包括されている。このうち第
2条が諸地域の領土について、第3条は沖縄を米国の信託統治とす
ることである。以下第2条には:2(a)韓国の独立、2(b)台湾澎湖の
主権放棄、2(c)千島列島および樺太の一部の主権放棄(北方4島は含
まれて居ない)、2(d)太平洋諸島の主権放棄、2(e)南極地域に主権放
棄、2(f)新南群島(Spratlyつまり南沙諸島)及び西沙群島(Paracel)
の主権放棄である。

主権放棄とはこの地域におけるすべての権利、権原及び請求権を放
棄すると明記してあることで、英語では「Right, title and claim」
つまり領土に関するすべてを放棄することである。

アメリカの一貫した立場は「中華民国も台湾も国家ではなく、政府
でもない(Neither Republic of China nor Taiwan is the nation or the
government)」としている。つまり中華民国は亡命政府、台湾国は存
在しない、台湾人は無国籍、これが戦後から今日までの現状だ。

●米国は台湾の主要占領国か

SFPTの中で「主要占領国(Principal occupying power)」と言う名詞
は第23条において使われたのみで、その他には見つからない。SFPT
条約でアメリカは主要占領国だったからアメリカは台湾澎湖におい
ても主要占領国であると主張する人がいる。つまりアメリカが今も
台湾に対する占領権を持っているから帰属決定権もあるという。

この理由で林志昇は2006年、アメリカ法廷に米国は占領国の責任で
台湾澎湖の帰属を正すべきだと告訴した。2009年の高裁で裁判官は
「台湾は国ではない、台湾人は無国籍であり、67年も煉獄の中で暮
らしてきた」と述べた。この判決の一部で林志昇グループはアメリ
カ法廷がアメリカの責任を認めたと主張し、占領国の責任と義務を
行使すべきだと主張している。だが高裁の判決は米国に占領権があ
ると述べていない。

米国高裁は?アメリカに占領権がある?と判決したのではない。林志
昇グループが主張する?SFPT第23条にある主要占領国米国?は台湾
にも通用すると言う主張に疑問がある。SFPTは48カ国の署名があ
る条約だがこれは「日本国との平和条約(Treaty Of Peace With
Japan)」、日本対47カ国の条約だから、日本と諸国の平和条約をそ
のまま台湾に当てはめることができるのかと言う疑問がある。

諸国がサンフランシスコ平和条約で領土問題を未解決で放置したの
は無責任である。しかし、SFPTは日本国と諸国が「戦争を終結させ
た条約」で、米国は日本を占領したことはあっても台湾を占領した
事実はない。

台湾の王雲程氏は詳しい論文でドイツを例に挙げ、連合軍のドイツ
占領は1990年に終結した。ドイツに準じてみれば連合諸国の日本占
領はまだ終結していないと言う。その上で(日本の)主要占領国ア
メリカは「台湾の暫定占領権」を中華民国に与えたが「主要占領権」
は今もアメリカにあると主張している。

私はSFPTとは連合諸国と日本の戦争終結の条約であり、SFPTの締結
で日本占領は終わった、従って日本が主権放棄をした諸領地の占領
権も終結したと思っている。さもなければSFPTの47カ国は今でも
日本の占領権を放棄していないという、おかしなことになる。

●台湾は日本天皇の神聖不可分の領土

この主張はまったく理屈が通らない。林志昇がこれを主張した根拠
は、(a)、1945年に天皇陛下が署名した大日本帝国憲法が発令され、
台湾は日本領となった、(b)、戦争法に拠れば戦争で他国の領土を併
呑することは出来ない、の二つである。

終戦後、大日本帝国は「日本国」となり日本国憲法が存在する。大
日本帝国憲法を持ち出して現行憲法を覆すことは出来ない。天皇が
日本国と違った権利を持つというのも矛盾している。もしも「日本
国」が47カ国の戦勝国と条約を交わし、勝手に「天皇の神聖不可分
領土」を放棄したなら大問題、ありえないことだ。

大日本帝国憲法で明記した内地以外の日本領土は、朝鮮、台湾、新
南群島などである。SFPTの2(a)で朝鮮は独立し、2(b)で台湾澎湖の
主権を放棄し、2(f)の新南群島は台湾高雄市に編入されていた。韓
国の独立、新南群島の未解決問題を放置して台湾澎湖だけが今でも
天皇の領土と言う理屈は通らない。天皇はいまでも韓国の領土権を
持っているのか。

しかも台湾は帰属未定だから天皇がアメリカに台湾の主権を主張せ
よとは滅茶苦茶な理論だ。そしてこの主張も米国が台湾の占領権を
持つとしている。

●台湾の帰属は台湾人が決める

台湾の帰属は未定だがアメリカが帰属を決める権利はない。アメリ
カにはSFPTの領土問題を未解決のまま放置してきた責任がある。し
かしアメリカの責任を追及してもアメリカはSFPTで日本との戦争
を終結したから、アメリカには日本、韓国、台湾、新南群島に対す
る占領権も決定権もない。天皇には国と違う領土権はない。

独立は台湾人の悲願だが困難を極めているので米国に頼る気持ちが
強い。この二つの主張は、台湾人が自力で独立建国よりもアメリカ
に頼る「他力本願」のためと思う。台湾人が決起して独立を目指す
ならアメリカは援助するかもしれないが、アメリカが主体となって
台湾の帰属を決めることはない。アメリカは台湾人の努力を認めて
から始めて援助すると思う。

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