【論説】上野「パンダ貸与」問題のその後ー中国を抑止する国民の良識

上野「パンダ貸与」問題のその後ー中国を抑止する国民の良識

ブログ「台湾は日本の生命線!」より。 
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あのパンダ問題は、現在どうなっているのだろうか。

昨年五月、来日した中国の胡錦濤主席は福田首相に対し、上野動物園にパンダ二頭を共同研究用として貸与することを表明した。貸与料は年間約一億円との見通しが報じられた。これを受け全国各地では、若者を中心とした受け入れ反対の署名運動が行われた。私も一度、上野駅前における街頭署名活動に参加したことがあるが、多くの人がそれに応じたのを覚えている。

その後運動のリーダーの一人、金友隆幸氏が集めた署名用紙を携え、東京都議会に陳情を行った。それとほぼ同時期に、動物園の所在地である台東区の町会連合会も、速やかなる受け入れを求める陳情を行ったようだ。

二つの陳情は都議会の環境・建設委員会に送付された。たまたま同委員会には、今時珍しい良識派の小磯明(自民)と吉田康一郎(民主)の両委員がおり、九月十六日の会議での審査では、二人が受け入れ反対の立場から質問を行った。一方、友利春久委員(公明)は賛成の立場から質問を行っている。

議事録上での字数によると、小磯氏の発言は四千余字、吉田氏は五千余字だが、友利氏はわずか二千余字。内容でも前二者が現実状況を踏まえたものだったのに対し、友利氏はほとんど価値のない情緒論に留まらざるを得なかった。

結局、この問題に関する中国のその後の動きがわからず、継続審査、つまり先送りとなったまま今日に至っているわけだ。

もし将来、中国が再びパンダ貸与に動き出し、本会議が採決を行うようなこととなっても、審議の一貫性を保つため、この日に行われた発言には、一定の配慮が払われることになると言う。

ではここで各氏の発言の一部を要約して紹介しよう。

先ず反対論が展開された。これについて朝日新聞は当時、「自民は『年1億円といわれる貸与料は高すぎる』と慎重な姿勢で、民主も『政治利用されるのは反対』」と、ごく簡単にしか伝えなかったが…。

実は小磯氏の発言は次のような忌憚ない正論だった。

―――年間一億円を払い続けなければいけないが、すでにパンダの繁殖の成果として出生数も生存率も高まっている。一生懸命研究に努力して繁殖に成功させても、その子供の所有権は中国にある。

―――陳情にもあるように、毒餃子などの食の安全問題、尖閣諸島問題解、六兆円のODAが中国人に知らされていないと言う問題など、未解決の問題がある。またチベット自治区や新疆ウイグル自治区で人権弾圧が繰り返し繰り返し行われている。このようなことを聞かされると、今後はグローバルな視点で物事というのを考えて行かなくてはいけないと思う。

―――パンダそのものは可愛いと感じても、それとは別にいろいろな状況を考えるべきだ。

―――相手国の一方的な主張やメリットに偏らないよう、国民、都民のコンセンサス、視点を重要視しながら対応、検討するよう要望する。

次の吉田氏の発言もまた、問題の核心を突いている。

―――パンダ貸与の合意が発表されると、都庁、上野動物園に抗議の電話が殺到した。産経新聞の調査では貸与反対が九一%。世論調査サイトでも反対が九五%。ほぼ全員が反対だ。パンダの政治利用に反対という意見が圧倒的で、友好親善を謳いつつ、金を取ることに反撥、さらにその金額が一年間で百万ドルと予想される点が反対の考えを決定的にしていると思う。

―――多くの国民の意見は、パンダの政治利用に乗っかることは、中国のチベット弾圧をはじめとする少数民族圧殺、さまざまな人権蹂躙、我が国への重大な国益侵害と不当要求、異常な軍拡と膨張主義、覇権主義的な行為を我が国が問題視していない、容認していると言う、中国にとって都合のよい誤ったメッセージを国際社会に与えることは望ましくないと言う意見なのだ。

―――つがいで年間百万ドル(一億八百万円)。一頭で年間五千四百万円。最高の支援費を払うローランドゴリラの年間約一万ドル(百八万円)の五十倍、百倍だ。上野動物園で一番高い値段だったサイとオカピは三千万円だが、毎年支払うパンダの支援費の方が高い。

―――毎年一億円とを支払い続けることは、国民の生活が疲弊する中で、上野動物園の周りに住んで、常日頃行ける方以外は、なかなか納得が行かない状況ではないか。

―――私が会った中で「一億円を出してでもパンダに来てもらった方がいい」と言ったのは、都庁で会った都議会議員だけ。「中国の非人道的、あるいは国際紛争行為とは分けて考えなければいけない」「好き嫌いで言ってはいけない」と言うが、これは大変不思議だ。国際関係論、国際政治経済学から言えば、すべては外交と国際関係に影響を与える、当事国同士のやりとりがあれば、影響が及ばないわけがない。

―――日本は四川地震で義援金を五億円出したが。テレビで現地の市民が「当局に援助物資を渡さないで。地方の幹部や軍が流用してしまう」と言っていた。パンダの全額がきちんと保護に使ってもらえるかは、日本としては検証が難しい。

―――中国自身がパンダを「政獣」と呼び、最も外交に有効な資源と位置づけている。国際的に摩擦を起こし、それをなだめるために使っているのがパンダ外交。これについて、我が国がきちんとした判断と対応をすることは、我が国の存立、将来の世代への責務でもある。

―――中国が民主化し、少数民族弾圧や人権侵害がなくなるよう一生懸命働きかけ、それが実現し、チベットで民族自決権が行使されるような状況になってから、正々堂々と、国際社会に侮蔑を受けない形でパンダの受け入れをすることが、我が国にとっては望ましいのではないかと思う。

以上のように二人の主張はほぼ一致したものと言えるが、ここでそれに対抗するように、友利氏が次の如く受け入れ賛成論を展開するのだが、これが実に浅薄なのだ。

―――「政治的利用」は、全部大人の理論。子供から見れば「なぜ上野にパンダ舎があってパンダがいないの」と言う感じだ。「人権」と言っても子供には全然わからない。

―――四月三十日にリンリンが亡くなった。(そして多くの入園者が記帳し、メッセージは一万一千八百枚に上った。)一つの動物が亡くなり、命と言うものを明確に感じる者が出ているのかと思う。政治目的どうのこうのと言うより、もっと根幹に迫った生命と言うものを考えれば、まさにこのことは大事だ。

―――都民、国民が上野動物園で一番見たいのはパンダ。その要求に応えるのが行政の仕事だ。逆に政治的に利用され、仕事を左右されるはよくない。子どもに夢を与え、都民が一番見たいものを見せてあげるのが大事だ。

―――(貸与の金額については)上野動物園も東京都も、具体的に中国に対して何の打診もしていないのが現実。

これらの発言を見てもわかるように、友利氏は小磯、吉田両氏の「中国の政治利用に乗るな」との主張に対し、「政治を持ち込むな」と言っているに過ぎない。これは「中国の政治的意図に目をつぶれ」と訴えているに等しく、思考停止の発言と言わざるを得ない。

そしてこのような日本人の思考停止こそが、中国の対日「友好政略」の遂行を支えていると言うことを改めて感じさせられる。

ちなみに村松みえ子氏(共産)も発言を行っている。同氏は「動物園行政はスポーツ、文化と同じく、国と国との平和と友好を主とするものであり、ここに政治的問題を持ち込むことには反対」との「共産党の意見」を表明した。ただし受け入れには賛成とも反対とも述べず、問題への深入りを避けた。

なお、貸与に関して中国と東京都、上野動物園の間の交渉が進展していないことに関し、都の小口公園計画担当部長は「中国はオリンピック、パラリンピックと、国家的な事業をしており、まだ連絡をして来る状況ではないと理解している」と述べたが、それらがすでに終了した今日になっても話の進まないのは、中国側が中国に反撥する日本国民の感情を見て、今の段階では「政獣=パンダ」を友好に利用できないと判断しているからではないのか。

「日中友好」の象徴となるべきパンダが歓迎されなければ、それだけで「友好」攻勢の失敗を象徴することになり、中国もそれだけは避けたいところだろう。胡錦濤の面子が潰れ、中国政府の威光が傷つくことになるからだ。

毒餃子、チベット弾圧などの問題を通じて高まった反中国感情が、結果として中国の対日攻勢を抑止している格好となっている。言い方を変えれば、パンダ受け入れ問題が浮上しない間は、日本国民の「良識」がなお生きていると言うことだ。小磯、吉田両氏のような堂々とした政治家の存在も実に頼もしい。

今後もこのような状況を維持し続けることが、日本国民には重要なのである。

【追記】台湾の皆様へ:貴国の国民党政権はこのたび、中国のパンダ寄贈を受け入れてしまいましたが、今後台湾社会が、同党や同党メディアの親中宣伝の影響下から脱却し、良識ある国民の声がますます高まり、中国との「関係改善」を拒否できるようになることを祈念します。なお本文で言及した東京都議会議員の小磯明、吉田浩一両氏は、つねに「台湾人の台湾」に声援を送っていることもあわせて紹介します。


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