台湾の声
台湾の最大野党・民主進歩党(民進党)の総統(大統領)候補である蔡英文・民進党主席は8月23日、総統選挙の公約となる「十年政綱」の両岸篇を発表し、具体的な対中政策の方針を示した。
馬英九総統は「一つの中国」の解釈を台中両岸が各自表明する「1992年コンセンサス(合意)」(馬総統はこれに基づき中国=中華民国と主張)の受け入れを蔡主席に求めているが、蔡主席は(当時の当事者が存在を否定する)「1992年コンセンサス」自体がそもそも存在せず、認めるかどうかの問題ではないとの考えを表明し、馬政権が主張する「1992年コンセンサス」を継承しない立場を鮮明にした。(中国側は「1992年コンセンサス」に関して「一つの中国」の合意であるとしている)
蔡主席は「台湾はすでに主権独立国家である」と強調し、(中華人民共和国とは異なる国である)台湾の現状維持を主張し、台湾内部の台中両岸関係に対する異なる見方については、与野党や社会各界の意見を凝集し、民主的な手続きでコンセンサスを形成していく「台湾コンセンサス」を確立しなければならないとし、「現実の基礎」を踏まえて中国と戦略的互恵関係を求めていく考えを表明した。
このほか、馬英九政権が中国と結んだ両岸経済協力枠組協定(ECFA)について、蔡主席は、ECFAが締結、発効されていることは既成事実として受け入れるものの、国家利益の角度から再検討し、民主的手続きと国際規範に則ってECFAの問題点を処理していく考えを示した。
8月22日に台湾の「遠見」が発表した世論調査によると、総統選挙の各候補の支持率は、現職の馬英九総統と民進党の蔡英文主席の直接対決の場合は、馬39.6%、蔡38.1%。これに親民党の宋楚瑜主席が参戦した場合は、馬35.1%、蔡33.9%、宋14.0%だった。馬総統と蔡主席の差はわずかであるが、今後蔡主席とコンビを組む副総統候補の決定や具体的な政策方針の発表などで支持率が変動するとみられる。