【蓬莱仙島】台湾のはじまり

【蓬莱仙島】台湾のはじまり

メルマガ「遥かなり台湾」より転載

最近よく休日に図書館に行っています。図書館はよく冷房が利いていて日本の新聞や雑誌もあり
ひまつぶしにいいところです。新装なった台中図書館はとてもモダンな建物で、オープン祝いに
日台の架け橋」の本を寄贈しています。

過日,図書館で台湾民話を紹介した絵本を見つけました。民話を語っているのはチュ・ママこと
邱月秀さんで新潟県の上越市に住んでいる方です。邱さんは台湾の高雄出身で日本人と国際結婚
し2人の娘さんがいます。邱さんはきっと日本で生まれた娘さんたちに民話を語ったのでしょうね。
この本は伝えられた台湾民話を邱さんの語り口そのままに音読してもらい読み手の声で聞こえの民
話にするのが本書の意図するところなんだそうです。今回紹介する「蓬莱仙島〜台湾のはじまり」は
本書の冒頭にあり、この物語は大正12年出版「生蕃伝説集」で知られるもので、漂流と鯨に乗る男の
モチーフが台湾発見の物語に組み立てられているのです。
どうか皆さんも声を出して読んでお子さんに聞いてもらうと喜んでもらえるんじゃないでしょうか。

●蓬莱仙島(ほうらいせんとう)─台湾のはじまり

従前。従前。むかし、むかし。
少年が川で、つりをしていました。ところが、川に落ちで、
海まで流されてしまいました。
海をただよっていると、大きなものがちかづいてきました。
それは鯨でした。鯨が尋ねました。
「どうしたのですか」
「釣りをしているうちに。流されてしまいました。助けてください」
「私の背中におのりなさい。」

鯨は少年を助けると。背中に乗せて泳ぎだしました。
そして、何日も何日もすぎました。少年は頼みました。
「鯨さん、私は早く家に帰りたい。島を見つけてね」
「でも私は泳いでいるだけですから」
少年は鯨の背中で、毎日毎日、島影を探しました。
ある日、ぼんやりと島影が見えました。
「鯨さん、島が見えた。島だっ!」

鯨は少年を背に乗せて、その島に近づきました。
島には、バナナや椰子、パイナップルの葉がしばっていました。
鯨に見送られて、少年は島に上陸しました。
それは見たこともない、小さな島でした。

太陽は照り輝き、たくさんの小鳥の声がします。
「なんと美しい、話に聞いた『蓬莱仙島』にちがいない。」
少年は美しいこの島で暮らすことにしました。
小屋を作り、その周りを耕して畑を作りました。
小鳥が飛んできて糞をしました。
胡瓜(きゅうり)や西瓜(スイカ)などが、芽を出して育ちました。
小鳥は、ほかにも種を落として行きました。
畑には、いろいろな野菜ができました。

島の山のほうには、むかしから住んでいる人々がいました。
みんなは少年の畑を見てびっくりしました。
山の人々は、狩りをしてくらしていたので、畑を作ることなど知りません。
畑に植えてある野菜にも、びっくりしました。
「今まで、こんなおいしいものは食べたことがない。」
山の人々は少年にたのみました。
「どうか野菜の作り方を教えてください」
少年は山の人々に、畑の作り方を教えました。
「これが、豊な実りの島、美しい仙島、今の台湾ですよ」
台湾の人々は今もこのように伝えています。

完了。めでたし、めでたし。

『チュ・ママの台湾民話』
 2001年4月15日初版発行
 発行所 星の環会
 電話 03-5292-0481
(目次)
蓬莱仙島─台湾のはじまり
中秋節の由来
月の桂
八月十五夜
天童
蟻の由来
かしこい末娘


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