【良書紹介】平野久美子『水の奇跡を呼んだ男−日本初の環境型ダムを台湾につくった鳥

【良書紹介】平野久美子『水の奇跡を呼んだ男−日本初の環境型ダムを台湾につくった鳥

居信平』

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             日本李登輝友の会事務局長 柚原正敬

 李登輝元総統も「この偉業を語り継ぐ義務が、我々にはあるでしょう」と推薦

 5月13日発売の「SAPIO」誌(小学館)で、ノンフィクション作家の平野久美子氏が鳥居信平(とりい・のぶへい)について執筆していることをお伝えした際に、単行本として『水の奇跡を呼んだ男−日本初の環境型ダムを台湾につくった鳥居信平』を出版することもお伝えした。昨日、鳥居信平の軌跡を初めて描いたこの本が発売された。

 帯の推薦の言葉は李登輝元総統が書かれている。

 「鳥居信平がつくった地下ダムが、今も役に立っている。実に頭の下がる思い
がします。この偉業を語り継ぐ義務が、我々にはあるでしょう」

 本書は、日本でほとんど知られていない鳥居信平の初の評伝であり、実によく
目配りされている。

 平野久美子さんは大正12年(1923年)に完成した地下ダム「二峰[土川]」(
にほうしゅう)のある屏東県へ何度も取材に訪れ、その工法に驚いて研究しはじめた丁!)
士(てい・てつし)国立屏東科技大学教授をはじめ、胸像を制作した許文龍さん、当時の
工事に参加したパイワン族の歴史を口伝する女性、ご長男で南極観測の越冬隊隊長を2度つとめた鳥居鉄也氏、その妹の月島峰子さん、生まれ故郷である静岡県袋井市の方々など
の関係者もさることながら、素人にはいささか分かりにくい地下ダムについては専門家の
解説や評価を取り込み、鳥居信平が勤務していた台湾製糖の歴史を台湾の糖業史とからめ
て解説している。

 鳥居信平の二峰[土川]は八田與一の烏山頭ダムや嘉南大[土川]に先行して
いるので、それとの対比もきちんとなされている。

 さらに平野さんは、社命があったとはいえいったい「何が信平を突き動かして
いたのか?」という視点も忘れない。鳥居信平や八田與一という先人の努力と気概はい
ったいどこからきていたのか、モチベーションを探るのである。平野さんは「私利私欲を
排して公益に尽くす気概や国造りの大志」があったからではないかと説く。実に平野さん
らしい視点であり、それはまた台湾のお年寄りたちが「多くの日本人が、台湾のために献
身的に働いてくれた」と評価することへの「解」ともなっている。

 日本が誇りとすべき日本人がまた一人発掘された。

 なお、本書に先立って、屏東県政府は4月21日に行われた鳥居信平の胸像の除幕
式に合わせ、平野久美子さん執筆による『台日水的牽絆 識水柔情−鳥居信平的故事』
(日台水の絆 水の優しい心情を知る−鳥居信平の物語)を出版している。日文と中文の
併記になっており、写真もたくさん掲載している。

 この屏東県版の著書については、近々、本会でも取り扱う予定なので改めてご
案内したい。               
■著者 平野久美子
■書名 水の奇跡を呼んだ男−日本初の環境型ダムを台湾につくった鳥居信平
■体裁 四六判、上製、240ページ
■発行 産経新聞出版
■発売 日本工業新聞社
■定価 1,680円(税込)
 http://www.sankei-books.co.jp/books/title/9784819110587.html


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