「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
米朝会談のニュースが世界を震撼させた。会談は果たして成功するのかと疑いながらも、ほとんどの国がこの会談を支持している。もともと圧力路線を主張する日米両国にとっても、米朝会談は圧力の効果といえるのだ。しかし対話路線を主張し続けてきた中国は、会談歓迎を表明せざるを得ないが、実際は煮え湯を飲まされた気持ちになっているに違いない。
確かに元々対話路線を主張している中国がこの究極的な対話に反対する理由はないはずだが、中国が企んでいた対話路線とは米朝の直接対話というよりも、中国が仲介する形での対話である。そのような形であれば、仲介役の中国は北朝鮮をカードに日米をゆすりながら、同時に日米をカードに北朝鮮を揺さぶることもできる。中国が主導してきた、以前の六か国協議の一連の経緯を詳細に検証すれば、米朝を仲介したがる中国の意図がわかる。
中国は、つい最近まで「二つの停止」(北朝鮮が核とミサイルの実験を停止し、代わりに米国と韓国は合同軍事演習を停止する)を提案し、それが核問題を解決する唯一の方法だと強調してきた。それなのに金正恩があっさりと米韓軍事演習を容認し、核とミサイルの実験さえ停止するとトランプに会談を持ち掛けた。このことでわかったのは、金正恩にとって、中国への配慮は全く必要のないものだということだ。
実権を握った金正恩は、叔父の張成沢、実兄の金正男を冷酷に抹殺し、彼らの周辺にいる親中国勢力をも一掃した。さらに19回共産党大会の結果を報告するために訪朝した習近平の特使を一週間も待たせても会おうとしなかった金正恩が、文再寅の特使とは平壌に到着してわずか3時間後に会談した。これらはすべて金正恩の中国への強烈なメッセージなのだ。「お前のことは何とも思ってないぞ」と。
しかし中国は北朝鮮の生命線を握っているのではないか、中国にその気さえあれば、中国に依存する北朝鮮は一日も持たないはずのではないか、と評論家たちの反論が聞こえてくる。確かに、中朝両方が文明国であればその通りだが、中国の歴史を紐解くと、中国はいかに周辺の弱小民族によって悩まされて来たかがわかる。中国の最盛期である漢と唐の時代でさえも、北方民族の侵攻に悩まされ、強国でありながらも周辺の異民族に貢いで平和を乞うてきた。それでも宋がモンゴル族に、明が満州族に滅ぼされたのだ。
中国が北朝鮮の命脈を握っているから北朝鮮が中国の言いなりになるというのは虚像でしかなく、実際はその逆なのだ。中国と北朝鮮の関係は、上場企業と総会屋の関係に似ている。上場企業が総会屋に貢ぎ続ける限り、会社は当分安泰でいられるが、総会屋への利益供給を断とうとすると、都合の悪い事実がばらまかれ、会社も危うくなる。だから、北朝鮮への国連制裁決議に賛成しつつも、中国はこそこそと北朝鮮に原油を供給し続けているのだ。
米朝会談の行方はまだ予断を許さないが、一つはっきりしているのは、米朝間の直接対話によって中国の北朝鮮への影響力がますます弱くなり、北朝鮮が中国にとってますます厄介な国になることだ。
—
台湾の声
バックナンバー
http://ritouki-aichi.com/category/vot
登録/解除
http://taiwannokoe.com/register.html
Facebook
https://www.facebook.com/taiwannokoe
Twitter
https://twitter.com/taiwannokoe
※この記事はメルマガ「台湾の声」のバックナンバーです。
講読ご希望の方は下からお願いします。