体の軍拡に警戒を
2019.10.1 産経新聞
中国は1⽇、1949年の建国から70年を迎えた。⾸都北京では軍事パレードなどの盛⼤な
祝賀⾏事が⾏われる。覇権の追求に向けて⼈⺠を⿎舞するのだろう。
他⽅で中国には不都合な現実がたくさんある。⾹港では中国⽀配への抵抗が衰える気配がな
い。当局の規制をよそに1⽇も⼤規模デモや激しい抗議が予想される。
抵抗運動の学⽣指導者、周庭⽒は、⼀般市⺠を巻き込む根強い抵抗の理由に「⾹港が中国にな
ってしまう恐怖感」を挙げた。
北京の指導部が「当然」と考える⾹港の中国化に⾹港市⺠は恐怖を感じる。これこそ中国の強
権政治が持つ本質である。
≪⾹港の「恐怖」が本質だ≫
このまま中国共産党の独裁下で覇権の確⽴へと邁進(まいしん)するのか、それとも政治的な
⾃由や⼈権を重視した別の道を模索するのか。建国70年の節⽬を迎えた中国は、⼤きな岐路に
さしかかっている。
習近平国家主席は、この現実を真摯(しんし)に⾒つめるべきである。
中国共産党は、⾰命闘争の勝利を正統性の根拠として⼀党独裁による⽀配を続けてきた。その
間に公正な直接選挙による国⺠の審判を⼀度も受けていない。
⼀党独裁下の70年は、悲惨な事件の連続だった。
「反⾰命鎮圧」を掲げた⼤量粛清に続き、急進的な社会主義化で迫害が相次いだ。続く⼤躍進
運動や⽂化⼤⾰命でも膨⼤な犠牲者を出した。だが、信頼し得る検証はなされていない。30年
前の天安⾨事件も真相は藪(やぶ)の中である。
過去だけではない。新疆ウイグル⾃治区では、今も多くのイスラム系住⺠が「再教育」の名の
下で強制収容されているのに、それが何万⼈なのかも不明である。
常識では考えられないことがまかり通っている。昔も今も、⼈権が軽んじられている事実をし
っかりと認識しなければならない。
確かに、中国は世界2位の経済⼤国になった。旧ソ連型の計画経済と決別し、変則的ながら市
場経済を取り⼊れた結果である。
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天安⾨事件と東⻄冷戦の終結で共産党の信望は失墜した。経済⼒をつけなければ、かつて
「兄」と仰いだソ連共産党と同じ運命をたどったことは疑いあるまい。
当時最⾼実⼒者だったトウ⼩平の政略で共産党政権の存⽴には成功した。だが、豊かになれば
⼈権尊重や段階的な⺠主化に動くとみた国際社会の期待は⾒事に裏切られた。忘れてはならない
歴史だ。
しかも権⼒の暴⾛は、いよいよ⻭⽌めを失ってきた。習⽒は汚職撲滅を掲げた政敵排除で権⼒
基盤を固め、憲法を改正して国家主席の任期制限まで撤廃した。
任期制と集団指導体制は、⽑沢東が終⾝権⼒を独占した弊害を教訓に導⼊された。それをあっ
さりと覆す権⼒集中だ。独裁を強めるこの変化を、国際社会は⾒過ごしてはならない。
≪⽇本は前のめり避けよ≫
軍事パレードには、⽶国を射程に収める移動式弾道ミサイルをはじめ、多数の先端兵器が登場
すると⾒込まれる。透明性に⽋ける国防政策の下での軍備拡張の脅威は⼀段と⾼まるだろう。
70年前に内戦に敗れた中国国⺠党が拠点を移した台湾では⺠主化が定着した。その台湾で⾏
われる来年1⽉の総統選に対し、中国は武⼒⾏使の可能性を⽰して圧⼒をかける。とても容認で
きない。
共産党政権は、巨額の国防費やこれを上回る可能性のある治安対策費を投じて、その⼒を内外
で誇⽰する。巨⼤経済圏構想「⼀帯⼀路」も、札束をばらまいて中国優位の国際秩序を⽬指す試
みだ。
経済⼒に吸い寄せられるように中国になびくのは危うい。経済成⻑が軍拡や国内弾圧を⽀えて
いる事実は、⽇本企業にもしっかりと認識してもらいたい。
習政権⾃らが政治改⾰を断⾏して⺠主化に動くことは期待しづらい。そうだとしても⼒の⽀配
は中国国⺠だけでなく、アジアの安全保障にとっても脅威である。国際社会がなすべきは、中国
の⼈権への監視を強めることだ。その上で天安⾨事件後に放棄された政治改⾰を断固として求め
るべきだ。
⽶国は中国の覇権を阻もうとあらゆる⼿を尽くしている。⽇本も同様の危機意識で中国の脅威
に対処する必要がある。⽇本は天安⾨事件後、いち早く対中⽀援を再開して強権⽀配の復活を助
けた。関係改善を急ぐあまり同じ轍(てつ)を踏まないよう改めて求めたい。
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