「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より転載
香港「雨傘革命」の裏話をもうちょっとしよう
北京はマフィア、商工会、同郷会にくわえ、1500名の特務を動員していた
九龍半島の旺角(モンコック)は商人の町、しかもやくざが商店主からみかじめ料を集金する特殊地帯。雨傘運動のデモ隊は、この町にも流れ、道路を封鎖したところ、親中派のやくざと思われる集団が暴力行為に及んだ。
この町で抗議集会を展開したのは、今回のデモの主体である「学連」「学民思潮」とは関係のない一般市民グループと思われる。
中国共産党は香港に秘密党員を多く抱え、その一部は特務の潜入工作員である。
おもてむき「商売あがったりだ」として学生運動に抗議する商店主らは、地元商店会、商工会、それに同郷会などからの動員で「デモ反対」の抗議集会を行わせた。
一方、支援の輪は中国大陸にも飛び火し、有名アーティスト(詩人の大蔵など)が支援を表明するパフォーマンスを行った。香港の映画界でも親中派のジャッキー・チェンは例外で、新星アイドル俳優の梁明偉、劉徳華、周潤発、張家輝ら四大スターが雨傘運動支援を表明した。
香港でも『リンゴ日報』の黎智英(ジミー・ライ)や民主党創設主席の李柱銘、キリスト教香港地区元主教の陳日君らが現場で支援演説をした。
北京も露骨な弾圧をできない。
なにしろ欧米ばかりか亜細亜華僑圏、日本の華字新聞も大きく取り上げている。
このため北京のメディアは香港の学生らの抗議集会を「暴乱」とは言わず、雨傘革命を「非法集会」と表現するに留めた。
大陸であれば、これは「反国家暴乱罪」とかで逮捕するところだが、民主主義意識の高い香港では、語彙を撰んでいる。
さて雨傘運動の主体で去るリーダーたちは、いかなる人間なのか。
指導者らは三派に分かれ「学連」「学民思潮」、そして野党民主党を主体のリベラル派に糾合された市民の団体連合。つまり三者三様、まとまりがなく、リーダーシップ不足、もっと正確に言えばテンでバラバラで、組織力がない。
だからデモは四カ所に分散し、指揮系統がないので、旺角からチムサーチョイ、行政府のある金鐘(アドミラル)、銅鐸湾(コーズウエイベイ)に拡大分散してしまった。共通したスローガンは「和平抗命、香港精神」である。