埋もれた戦争犠牲を伝えたい 大学教授ら訴え「台湾人の慰霊碑を」
2016年8月16日 東京新聞朝刊
【台北=迫田勝敏】台湾の大学教授らでつくる台湾教授協会(張信堂会長)は十五日、記者会見し、第二次世界大戦中に犠牲になった台湾人を慰霊するため、平和公園の建設と慰霊碑の建立を蔡英文政権に求める運動を始めると明らかにした。台湾は日本の敗戦までは日本統治下にあったが、戦後は中華民国が統治して「戦勝国」となった。このため戦争中の台湾人犠牲者は中華民国のものではないとして、当局による慰霊などは行われていない。
日本の厚生労働省の統計では、台湾では軍人、軍属約二十万人が徴用され、約三万三千人が死亡した。しかし、戦後に「戦勝国」である中華民国が台湾を統治したため、戦争中に多くの台湾人が犠牲になった事実はあまり知られていない。歴史教科書でも、台湾人犠牲者の存在も含めて戦中・戦前の台湾の歴史は詳しい記載がなく、台湾は戦争中、日本と戦ったと誤解している人も少なくない。
教授協会の張会長は、こうした埋もれた歴史を若者に伝えることが平和公園と慰霊碑建立の目的だとする。平和公園の建設地は、台北市内の華山文創園区などが候補に挙がっている。同区は日本時代の酒工場跡地で、当時は鉄道駅もあり、ここから台湾人兵士たちが出征したという。
2016.8.17 11:00