【東京新聞】在日台湾人の「国籍」問題「中国」強制から「台湾」OK

【東京新聞】在日台湾人の「国籍」問題 「中国」強制から「台湾」OK

(2009.08.21東京新聞)

入管法改正 ようやく解消 「台湾人意識」高まりと合致

現行の外国人登録証明書で「中国」と表記されてきた在日台湾人の国籍が、出入国管理法の改正に伴い、「台湾」に改められることになった。「台湾と中国とは別の国」として表記変更を求めてきた在日台湾人らは「改正運動の成果だ」と勝利宣言。それにしてもなぜ台湾人に中国籍が強いられてきたのか。

(外報部・浅井正智)

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台湾旅券所持者が日本で外国人登録すると、交付される外登証の「国籍等」欄には、中国大陸出身者と同じ「中国」と記載されてきた。

日本政府は、1972年の日中国交正常化で台湾と断交した後も在日台湾人を中国籍扱いしてきた。2007年末現在、中国籍として外国人登録されている約60万人のうち、台湾出身者は約4万2千人に上る。

7月に成立した改正入管難民法を受け、現行の登録証に代わり3年以内に「在留カード」が交付されるが、台湾人の国籍欄には、日本政府が「政令で定める地域」として「台湾」の表記が認められる。

法改正の陰には、在日台湾人らの粘り強い活動があった。01年に在日台湾同郷会会長(当時)の林建良氏(50)が「台湾出身者の尊厳を踏みにじるもの」と国籍表記の変更運動を開始。運動は台湾にも“逆輸入”され、李登輝元総統を旗振り役に全土に広がった。

あたかも台湾が中国の実効支配を受けているかのような印象を与える中国籍表記が、なぜ長年続けられてきたのか。法務省入国管理局に問い合わせると、「『中国』は中華人民共和国の略ではない。より広い国家概念としての中国を指す」とすぐにはのみ込めないような説明が返ってきた。

これに対し、林氏は中国籍表記の背後に「日本政府の中国への気兼ねがあった」と解説。

日中国交正常化の際の日中共同声明で、日本は「台湾が中国の領土の一部であるとの中国の立場を十分理解し尊重する」と表明。林氏は「日本は中国の主張を認めたわけではないが、共同声明の内容が、台湾問題での中国への配慮と、台湾の立場の無視につながってきた」とみる。つまり国籍表記は、日台間の問題である前に、日中間の問題というわけだ。

林氏が在日台湾人組織を通じて調べたところ、台湾と外交関係がない国でも、在留台湾人の国籍を「中国」としてきたのは日本だけ。他の国は「TAIWAN」など中国と区別する表記が使われているという。とすれば日本だけが特異な措置をとってきたことになる。

台湾の政治大学選挙研究センターの調査(昨年12月)では、自らを「台湾人」「台湾人、中国人のどちらでもある」と意識する住民は合計91・6%。表記変更は住民の「台湾人意識」の高まりにも合致する。

既に4回の民選総統選を経験するなど民主化を着実に進めてきた台湾と、一党独裁を放棄しない中国の政治実体としての違いが明確になってきたことも、台湾籍実現を後押ししたといえる。

国籍表記問題は台湾独立派が主導的に取り組んできたが、立場を異にする国民党寄りの在日台湾人も一定の評価をしている。馬英九総統の日本後援会代表、荘海樹氏(76)は「本来は『中華民国』がふさわしい」としながらも、「中国とは区別される政治実体と認められるなら『台湾』でも構わない」と話した。


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