友日論」
永山英樹
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■「日米離間」工作に他ならない小沢一郎の日米中「正三角形論」
中国の膨張からアジア・太平洋地域の民主主義を守る防波堤が日本と台湾の列島
線だが、その防波堤の「強度」が大きく低下しつつある。
建国以来この方、日米離間(日米同盟解体)を夢見てきたのが中国だ。たしかに
一時期、日米同盟に支持を表明したことはあっても、それはソ連との対抗上のも
のであって、米国をアジアから駆逐し、日本を自国に従属させることこそが、真
の安全保障であるとの信念には変わりがない。それが覇権主義国家と言うものだ
ろう。
そうした中、日米離間の前段階の戦略として生まれてきたのが、日米中を正三角
形のの関係に置くというものだ。日米、日中、米中を「等距離」にすると言うの
だから、これは疑いなく日米同盟の弱体化を目指すものだ。
ところが今日、それに呼応する形で蠢くのが日本の民主党の親中勢力なのだ。
「日米同盟は基軸」とする一方で、「アジア重視」(中国重視)の方針を示すと
の矛盾姿勢も、正三角形構築の動きと思えば合点が行く。
昨年十二月十日から議員団を引率して訪中した小沢一郎幹事長は、胡錦濤主席と
の間で正三角形論を確認し合っている。同行した輿石東参院議員会長、山岡賢次
国対委員長も、現地でそれを主張した。
■台湾・国民党が「和中・友日・親米」論
もちろん将来において米中G2はあり得ても、そこに政治小国にして非核国家の
日本が入り込む余地はない。正三角形の一角として米中間の周旋を志しているよ
うに見えても、実際には日本は中国の影響下に陥って行くしかないはずだ。
そのことは小沢たちも知らないはずがない。民主党政権が国民を欺く媚中亡国勢
力と呼ばれる所以はここにある。
さて、そのような民主党に連携の手を差し伸べているかに見えるのが、台湾の国
民党政権だ。もちろんこちらも媚中亡国勢力と言える。
馬英九総統の側近である国家安全会議の蘇起秘書長(幹事長)は十二月二十四日
の記者会見において、日米中との大国との関係について次のような考えを述べた
。
「台湾は三つの大国の間で小さくなっている。三国の間を周旋するため立ち上が
るべきだ」
そして「馬英九政権は和中、友日、親米となる」ことを政策の主軸とすることを
明らかにした。
■「似た物同士」の民主党に期待する国民党「媚中」政権
この「和中」については「これまで海峡両岸は争ってきたが、そのようなことを
する必要があるだろうか。台湾ではまだ中国を毛嫌いするものがあるが、理解で
きない」と述べた。
その一方で「親米」については、「米国は台湾の安全の最大支柱。これまで台湾
が最も困窮し、危機だった時に支持してくれたのは、言うまでもなく米国だった
」と強調するのだが、このように米国に守られながらも中国傾斜にひた走り、米
国を憂慮させる姿は日本の民主党政権とよく似ている。
そして「友日」についてだが、「これは当然だ。言語、歴史、文化など台湾と日
本との関係はこれほど密接であり、これは将来も継続されるべきだ」としながら
、次のように強調する。
―――とくに今の日本は、「新日本」だ。なぜなら自民党に代わって民主党が政
権をとった。若い世代には新しい国際的な見方がある。そして台湾も「新台湾」
となった。国民党が政権をとったが、かつての国民党とは違う、新台湾と新日本
は新たな交流が必要だ。
民主党の「新日本」への期待を滲ませた発言である。馬英九氏や国民党はこれま
で、日台中の三角形の関係をアピールしてきたが、それは自ずと中国を頂角とす
る二等辺三角形の関係となるのだろう。分かりやすく言えば「ともに中国へ朝貢
しよう」と言ったような・・・。
■李登輝時代以来の対日関係を解消する国民党政権
蘇起氏の「友日」論は続く。日本の記者に対してこうも強調した。
―――過去の歴史の重荷はすべて捨てよう。日本は新たな態度で台湾に接して欲
しい。日本語ができる人材だけが日本の友人ではない。
「過去の歴史の重荷」とは、国民党との戦争の歴史や台湾統治と言った「日本の
侵略」のことなのだろう。そして「日本語ができる人材」とは李登輝氏の世代の
ことを指す。
つまり現在とは異なる李登輝時代の「かつての国民党」のことだ。言わば「旧台
湾」と「旧日本」が中国を脅威と看做して連携していた時代とは決別するとの宣
言のようなものである。「新たな態度で」と求めてくるのは、つまりそう言うこ
となのである。
これでは「防波堤の強度」は低下する以外にないのである。
■日本と台湾との関係は「ぎくしゃく」するべきだ
この蘇起氏の発言について共同は次のように伝えた。
―――鳩山政権発足後、馬政権幹部が日台関係について、こうした考えを公式に
表明するのは初めてとみられる。
―――日台関係は、台湾の主権をめぐる失言で馬政権から反発を受けた日本の対
台湾窓口機関、交流協会台北事務所の斎藤正樹代表(大使に相当)が今月21日
付で辞任するなど、ぎくしゃくしていた。
共同は、これで「ぎくしゃく」が解消へと向かうと期待しているのだろうが、実
はこの「ぎくしゃく」こそ、日台の本来あるべき関係の「生みの苦しみ」としな
ければならないのである。
そもそも齋藤氏の「失言」とは、「台湾の地位は未定」と言うものだった。つま
り日本が戦後台湾を放棄した後、この島の新たな帰属先は未確定のままだとの、
厳然たる国際法上の事実を述べたものである。
国民党が「反発」したのは当然だった。なぜなら台湾が中国領ではないことが明
らかになれば、中華民国は領土を持たない亡命政権であることが暴露されてしま
うからだ。
従って共同がこれを「失言」と報じること自体が「失言」であり、さらに言えば
国民党や中共の中国人による「台湾は中国の一部」と誤宣伝する立場に立った「
誤報」なのだ。
「台湾は中国の一部」「一つの中国」なる虚構で国民党は中国に接近し、やがて
は中国に併呑しかねない状況であるのだから、「台湾の地位未定」論の真実こそ
が東アジア防衛の鍵の一つとなるはずだ。
逆に言えば「一つの中国の原則」を掲げて膨張政策を正当化する中国覇権主義に
はアキレス腱ともなり得るものだ。
■東亜の安保を視野にー「反中国」運動であるべき「反民主党」運動
国民党政権によって中国の統一磁力への抵抗力は放棄されつつある。もし今後、
台湾と言う「防波堤」に穴が開けば、そこから中国の軍事勢力は一挙に東支那海
、南支那海、そして西太平洋へと伸張するだろう。そしてそうなれば日本の命綱
であるシーレーンは中国に扼され、日本はあの国に物が言えなくなるだろう。そ
して日米同盟を解消せよと言われれば、それに従わなければならなくなり、日本
は中国の属国となろう。
日本の民主党政権も台湾の国民党政権も、「それでも構わない」と言わんばかり
だが、その根本的理由は中国の前で臆病だからである。
ちなみに先に中国に屈したのが日本だ。中国を恐れて台湾支持の姿勢を見せず、
台湾人から国防の自信を大いに奪った。そしてついに台湾も屈するに至った。人
々が中国との対立を諦めたのが国民党政権を選択した理由の一つでもある。
そして今日、国民党政権は中国が許容できる範囲内での対日関係を構築しようと
している。もとより民主党政権も、それに異存はないことだろう。
十二月、すでに小沢氏の指示によって、民主党内部では新たな対台湾窓口となる
議員連盟が発足することが決まっているが、その動向は注視しなければならない
。
このように「戦わずして勝つ」趨勢にあるのが中国で、「座して死を待つ」のが
日台である。日米中の正三角形論が亡国構想であるのなら、それを打ち破るのが
中国のアキレス腱を衝くに足る日台関係となるのだろう。
昨年九月に来日した李登輝氏が民主党へのメッセージとして「東アジア共同体よ
りも日台関係の強化を」と語ったのも、その意味からではなかっただろうか。
民主党政権打倒の国民運動は、東アジアの安全保障を視野に入れた反中国膨張運
動でもなくてはならないはずだ。