【木坂麻衣子氏】「ありがとう台湾」

【木坂麻衣子氏】「ありがとう台湾」

メルマガ「遥かなり台湾」より転載

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先月5日は清明節と言ってお墓参りの日で、この日は墓地やお寺、廟などは一日中お線香が絶えませんでした。
自宅の近くにある宝覚寺は大仏様だけでなく日本人墓地や元日本人兵士の慰霊碑があるお寺としても有名ですが、
法事をする会場の一角に日本の東日本大震災で犠牲になられた方のために祭壇が設けられ多くの人たちが手を
合わせていました。
また台湾から多額の義援金が寄せられたことは読者の皆さんもご存じだと思います。今月3日に台湾の『自由時報』と『聯合報』という大手新聞紙に「ありがとう台湾」という感謝の気持ちを伝える広告が大きく掲載さ
れました。

これは、台湾から世界一多額である150億円以上という義援金が被災地に贈られたにもかかわらず、日本政府は
他の外国の新聞に感謝の広告を掲載しただけで、台湾の新聞には出さなかったことに疑問を感じた木坂麻衣子
さんという若い女性の発案だったです。「台湾の人たちにも目に見える形でお礼を言うべき」とインタ−ネッ
トの「ツイッター」などを通じて台湾の新聞への広告掲載を提案。広告掲載料のため1口1000円の募金を呼び
掛けところ、1600万円以上が集まり、約240万円の広告掲載料を軽く超え、今回の広告掲載が実現し、残金は
被災地に寄付されるそうです。

以下はネットで知った記者との取材を受けた時のやり取りの部分です。この中で「政治に関係なく素直にお礼の
言える国でありたい」と述べていたのが強く印象に残りました。これは、個人においても他人から手助けしても
らった時は「ありがとう」と言うのは当然なことですよね。

Q:記者  A:木坂さん
(台湾の人たちに目に見えるかたちで御礼をしたい)
Q: そもそも、新聞広告を出そうと思ったきっかけは何ですか?
A: ケタはずれに大きい義援金を送ってくれた台湾のみなさんにお礼が言いたいな、と。
Q: でも、日本から総理の名を入れて、対台湾窓口機関・交流協会台北事務所を通して台湾にお礼の言葉を
送りましたよね。
A: それは台湾の総統に向けて贈った礼状のようなものですよね。台湾の人たちに目に見えるかたちで御礼を
したいと思ったのです。
Q: 木坂さんは、台湾に対して何か強い思い入れがあったのでしょうか?
A: いえ、以前から特別何かあるというわけではないです。台湾人の友人は何人かいますけど。
Q: 莫大な義援金を出してくれた台湾の人たちに感動したという感じでしょうか?
A: 莫大だからというか、台湾の人口規模にしたら100億円規模の義援金はすごい努力だと思います。

(ダメもとでスタートしたが……)
Q: 今回のお礼広告の企画ですが、いつごろ思い立ったのでしょうか?
A: 4月11日の夜ですね。事務所からの帰りになんとなく。
Q: このインタービューをしてるのは4月20日ですが、すでに広告掲載費用の振込みがスタートしています。
かなりのスピード展開ですね。かなり苦労したのでは?
A: そもそも、大きな新聞社が広告枠をなんでもない個人、しかもフリーランスの人間に売ってくれるか?
とは思いました。その当初は「ダメもと」だと思ってました(笑)。でも運良く友人の知り合いを通じて
台湾の新聞社とつながることができたんです。企画意図や主旨を理解してもらい、広告枠を売ってもらえ
ることになりました。
そのお金が集まり切らなかったら、新聞広告はあきらめて被災地への義援金にしようと思っていました。

(銀行口座の開設が難関だった)
Q: そのお金を管理する事務所も設立したんですよね。しかもそこの口座まで作って。
A: やることはもう決まったので、あとは銀行口座を任意団体名義でとれるかどうかでしたね。
銀行に「活動内容や議事録を提出して欲しい」と申請の時に言われて困りました。自分で思いついて
Twitterでつぶやいてるだけなので、議事録もなにもあったもんじゃないですし(笑)。
Q: Twitterは活動の証拠になるのですか?
A: 窓口の銀行スタッフにiPhone4でTwitterをみせたんですけど、紙で提出しないといけないらしく、
ダメでした(笑)。
Q: 銀行スタッフもTwitterをiPhone4で見せられて「活動してます!」というのは初めてのケースですよね(笑)。
A: 結局、やっぱり紙で銀行に「活動の証拠」のようなものを提出しなくてはならなくなってんですね。
しょうがないから、ボランティアでまとめサイト作っていただいたのでそれをプリントアウトして、
Twitterもプリントアウトして、1件だけネットのニュースでとりあげられていたのでその記事と一緒に
提出しました。

(どこまでも親日な台湾の人たち)
Q: 台湾の新聞社のスタッフは、この活動に対してどのような意見や感想を持っていましたか?
A: いやもう、全面的にご協力いただいています。励ましのメールまで頂きました(笑)
そもそも、あちらはお礼を言われる側なのに。
Q: 広告の掲載費用はどれくらいかかるのでしょうか? 2紙に広告を掲載すると聞きましたが。
A: 『聯合報』と『自由時報』の2紙あわせて、日本円で約240万です。
Q: その広告費用は割引価格と聞きましたが、それは台湾の新聞社のはからいなのでしょうか?
A: はい。そもそもお礼の広告出すのにこちらから値引き交渉というのは筋の通らない話なので、
「正規価格を教えて欲しい」と打診したらいきなりディスカウント価格が帰ってきました。
Q: そこまで親日だと本当に申し訳なく思ってしまいますね。
A: 本当に心から感謝です。

(Twitterで拡散し協力者が多数集まる)
Q: でも、数ある台湾の新聞のなかから、この2紙を選んだ理由は?
A: 『聯合報』は、私の小学校時代の同級生で台湾の日本人学校を卒業した友人がいるので、彼女を通じて、
「だれか台湾の新聞社の知り合いいない?」ときいたところ、「聯合報なら紹介できるよ」という人が
メールをくれました。『自由時報』に関しては、もともとツイッターで相互フォローしていた作家・評論家の
西村幸祐先生が間に立って交渉して頂きました。
Q: 人脈と知人の協力で実現できたわけですね。
でも、どうやってこの活動がTwitterで拡散していったのでしょうか。活動の一番難しいところは、その活動を
より多くの人たちに知ってもらうことだと思うのですが。
A: 最初のきっかけは『ニコニコ動画』管理人の西村博之さんですね。活動の内容をTwitterに書き込みしたら、
「有志で集まらなかったら100万までなら出しますよー」と返してくれたんです。このコメントでかなり多くの
方々が活動を知ってくれました。本当に嬉しかったです。
Q: 西村幸祐先生はじめ、芸能人の いとうまいこさん たちがTwitterで賛意を示していただき、拡散していきました。
ひろゆきさんのツイートも含めた一連の流れをニュースサイトが記事にしたのも大きかったと思います。

(正義は人の数だけ存在すると思う)
Q: 台湾のニュースサイトによると、「新聞に広告を出さなくていいから被災地に使ってほしい」や「気持ちだけで
十分。被災地に使ってほしい」という台湾の声もあるようですが。
A: はい、知っています。そういうお声もあると思っていました。でも「お礼はいらないよ」といわれて
「あ、そう」というのはやっぱり違うと思うんですよね。もちろん被災地への義援金は私はじめ多くの方が継続的に
なさってますし、それは大事な事だと思います。ただ「助けてもらったらお礼をいう」というのは、これはまた別で
やらなければいけないと思っています。
Q: なるほど。
A: 確かに今、震災の影響で日本中が必死ですが、そういうときだからこそ、きちんとお礼が言える国でありつづけたい
なと。これは私なりの正義なので「それでも広告費よりは被災地への義援金に使うべき」という意見もまた、正しいと
思います。私は正義は人の数だけ存在すると思うんですよね。
Q: 国とか人種、文化、政治など関係なく「ありがとう」といえる国ということですね。
A: 日本が他国の新聞に広告を出して、義援金のお礼をしたところがあるんですね。台湾が100億円規模の義援金を出して
おきながら、日本は台湾に新聞広告は出してないんです。政府がどのような形のお礼をしたにせよ、義援金を出したのは
総人口2300万人の台湾の人たちです。2300万人という人口の規模から考えて100億円というのは信じられない金額ですよ。

(あまった広告費用は義援金に)
Q: すでに広告費用が振り込まれているそうですが、4月20日の段階でどれくらい集まっているのでしょうか?
A: 総額6,822,817円です……。20日のお昼に通帳を記入しに行ってたまげました。
Q: すごい金額ですね。広告費用が240万円ですよね。余ったお金はどうするのでしょうか?
A: 全額、日本赤十字社を通じて被災地への義援金とさせていただきます。
Q: 募金はいつまで募集していますか?
A: 4月26日分まで受け付けます。銀行が閉まっても26日のうちに振り込んでいただければ大丈夫です。
Q: 台湾へのお礼にもなり、被災地への支援にもつながるわけですね。
A: はい! それが一番嬉しいですね。ブログでも説明はしたのですが「被災地への義援金にせずに広告費をだすのは
どうも気が引ける……、という方も実際にいらっしゃいますので。

(台湾に行ったことなし! 行ってみたいが金欠)
Q: 木坂さんは個人的に台湾行ったことはあるのでしょうか?
A: まだないんです。友だちが台北にいるし、行きたいんですが……。
Q: 台湾にはどんなイメージがありますか?
A: バナナ(笑)。あと、優しくておっとりした人が多い感じでしょうか? 自分の友だちだけかも?
Q: 台湾は飛行機で成田空港から3時間程度ですよね。これをきっかけに行ってみては?
A: はい。ぜひぜひ。あとは自力でお金貯めます(笑)。

(台湾という友だち)
Q: 今回の活動によって、台湾人の皆さんが「日本人の感謝の気持ち」を感じてくれたら嬉しいですね。
A: 嬉しいですね。海の向こうにたくさん「友だち」がいるっていいもんだと思います。
これからその友だちの数がもっと増えるんだなと考えると嬉しい気分になりますね。


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