文:多田恵 2017.8.19
昨(18)日午前中、台湾の総統府の憲兵が切りつけられる事件が起きた。犯人は他の憲兵に取り押さえられ、警察により取調べが行われている。犯人の所持品の中に中国国旗(五星紅旗)があった。中国政府の意向を受けての犯行の可能性もある。
所持していた「遺書」には「毎日、中国中央電視台(中国の国営テレビ局)を見ていて、祖国の建設が日々向上するのを目にし、心が奮い立つ」「習(近平)さんに見て欲しい。これは命令だ、徹底的に執行する」などの文言があり、「中国の一日も早い統一を願う」と締めくくられている。
凶器は直前に「国軍歴史文物館」から盗まれた、「南京の役 殺 一〇七人」と刻まれた軍刀で、“南京事件”で使用されたものとされているが、これについて報道した台湾政府の通信社「中央通訊社」の記事では、「刀は1938年に制定された九八式であるため、南京攻略戦時にはまだなかったとする指摘もある」との説も紹介している点が注目に値する。この“証拠品”が偽造であることを示唆しているためである。
なお、8月14日には、台北市士林区の円山水神社の狛犬(市指定の古蹟)が盗まれていることが判明した。現場には、「台湾を奪って百万人殺し、中国に侵入して数千万人を虐殺した、倭寇は犬畜生、皇民は卑しい出自で犬日本人のできそこないだ」とする詩のようなものが書かれた紙が残されていた。これは、台湾人が脱中国化することを、日本化ととらえて、罵倒しているものと理解される。
台湾は着実に脱中国化へ向かっている。これに対し、中国が相当神経を尖らせていることが窺われるが、このような対処では、ますます台湾人の中国嫌悪感情がつのるのではないか。台湾で熾烈な歴史戦が行われている。
『台湾の声』バックナンバー http://ritouki-aichi.com/category/vot