【台湾「沖ノ鳥島」騒動】疑われる馬英九総統の「反日媚中」策謀

【台湾「沖ノ鳥島」騒動】疑われる馬英九総統の「反日媚中」策謀

ブログ「台湾は日本の生命線」より転載

http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2841.html

■中国の反台湾行為には寛大な馬英九総統だが

四月八、十二日、ケニアに中国人相手の詐欺容疑で逮捕した四十五人の台湾人(無罪判決を受けた者を含む)を自国に強制送致させた中国。三十日にはマレーシアにも同様の容疑の台湾人三十二人を中国に引き渡させた。

これに関しNHKは五月一日、「中国と距離を置く立場の民進党による新政権が今月20日に発足する予定で、中国側の一連の措置には民進党をけん制するねらいがあるとの見方」台湾では出ているという。

こうした中国の措置に関し、台湾総統府は四月三十日、中国に対し「厳正抗議を行う立場だ」と強調する一方で、「馬英九総統はすでに関係部門に対し、大陸(中国)側と意思の疎通を図り、協議を行うよう指示した」ことを明らかにした。

しかし少し穏やか過ぎないか。少なくともに現在進行中の日本の台湾漁船拿捕に対する抗議行動のヒステリックさに比べれば。

■ますますエスカレートする馬英九政権の反日

日本最南端の沖ノ鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)で違法操業していた台湾漁船「東聖吉十六号」を、海上保安庁が拿捕したのは四月二十四日。船長は翌日担保金を支払い釈放されているが、これを受けての馬英九氏の態度は実に強硬なのである。

今回海保に拿捕された「東聖吉十六号」。この船長から意外な証言が・・・

「沖之鳥は島ではなく岩。それを起点にEEZは主張できない。我が国は断固として漁民の公海上での操業の自由を守る」とし、「日本の違法な権利拡張に反対する」との声明を発した。また政府内部には沖ノ鳥島を今後「沖ノ鳥礁」(沖之鳥礁)と呼び変えるよう指示した。

そしてその上で海岸巡防暑(海上保安庁に相当)は五月一日、漁船保護のためとして巡視船と訓練船の二隻を沖ノ鳥島周辺海域に向けて出航させた。また報道によれば海軍も同日、ラファイエット級フリゲート一隻を同海域に派遣した。五月末まで少なくとも一隻を配備する方針。反日はエスカレートするばかりだ。

■中国の歓心を買うためのパフォーマンスか

このように対中国に比べ対日本では意気軒昂な馬英九政権だが、これについて香港の評論家、黄世沢氏は台湾紙自由時報(五月二日)での寄稿でこう書く。

「国民党政権の対中、対日政策は基本的に、自分達は中国人とする認識の上に立っており、完全に台湾を売るものだ。だから自国の国防を顧みず、尖閣諸島や東海(東支那海)での中日対立では完全に中国の側に傾き、中国が依然としてミサイルを台湾に向け、逆に日本は台湾との軍事的盟友であることも忘れるのだ」

思えばこの政権は二〇〇八年の発足直後にも、尖閣諸島近海での台湾遊漁船の海保巡視船との衝突、沈没事件を巡って反日を煽り、尖閣問題での日台分断、台中連携を狙う中国を喜ばせたが、政権終焉直前の今になり、再び同様の状況を作り出そうというのだろうか。

ちなみに馬英九氏が用い出した「沖之鳥礁」なる名称は中国が案出したものだ。

沖ノ鳥島は第一列島線と第二列島線のちょうど真ん中、沖縄とグアムとを結ぶ直線上のほぼ中間点に位置する。そのためたとえば台湾有事の際、中国はその一帯で潜水艦や機雷で米空母機動部隊などの接近を拒否する必要があり、そのため二〇〇一年ごろから海底調査を進めて来たのだが、日本のEEZ内では日本側の許可を擁する。そこで沖ノ鳥島をEEZの起点たり得ない「岩」だと主張しはじめ、そうした新呼称も用い出したのだ。

沖ノ鳥島海域は第一、第二列島線間のちょうど中間に位置する戦略的要衝。ここを制したい中国が同島を「岩」と
呼び始めた経緯がある

したがって、どうも今回の日本への対応は、中国の関心を買うためのパフォーマンスではないかと疑われるのである。

■日本重視の民進党新政権に圧力をかける狙いも

そこで、ここでもNHKの分析を見てみよう。五月二日にこう報じている。

「今月20日に退任する国民党の馬総統が、日本への厳しい姿勢を鮮明にしている背景には、日本との関係を重視する姿勢を打ち出している民進党の蔡英文次期政権に圧力をかけるねらいがあるという見方」が出ていると。

要するにケニア、マレーシアの問題で中国に「民進党をけん制する狙い」があるのと同様、対日問題で馬英九氏には「民進党に圧力をかけるねらい」があるというわけだ。

これまでの馬英九の国民党は一貫して「聯共制台」(中共と連携して民進党など台湾人政治勢力の台頭を抑止する)。今後もそれを貫こうということか。

それが事実なら、これもまた中国に迎合したパフォーマンスだと言えるだろう。

■浮上する馬英九総統の反日策謀である疑い

今回の反日騒動が馬英九氏の策謀であるとの疑いは、実際すでに台湾では持たれているようだ。

自由時報は二日、次のように報じる。

――――日本はすでに一九八七年から沖ノ鳥島の堤防建設などを行った後、二百カイリのEEZを主張している。我が国はそれを承認はしていないが、しかし関係者によれば、台日両国は長年来の黙約があり、我が国の漁船がその海域で操業する際、日本の公船が接近すれば直ちにそこを離れ、公船が経ち去った後は再び戻って操業を行うという「見て見ぬふり」方式で不必要な正面衝突を避けてきたという。

―――しかし外航部門の交渉担当者は、今回の争いの発生について、今少し事実を明らかにすべき点があるという。

―――それによれば日本の海保巡視船は四月十七日、沖ノ鳥島の二百カイリ内で多数の台湾漁船が操業しているのを発見。日本側は我が国の漁業署に漁船を退去させるよう要求した。これを受け漁業署は漁船に「取り敢えず離脱を」と通知し、その大部分を引き返えさせた。ところが二十日以降になっても、「東聖吉十六号」など二隻は沖ノ鳥島付近に残っており、巡視船は取り締まりに向かい、二十四日ごろに「東号」を拿捕した。

―――同号船長によれば、漁業署に連絡したところ、「操業を続けていい。離れる必要はない」と言われており、そのため拿捕される結果となったという。

馬英九政権はわざと日本側にこの漁船を拿捕させ、騒ぎを起こそうとしたのだろうか。そのように思わせる話ではある。

もっとも漁業署の副署長は、日本側から十七日に要求を受け、漁船に「その海域は公海だが、日本の動きに気を付けるように」と通知したことは認めたが、「東号」が離脱したか否かは「知らない」という。そして「二十四日にもし日本側から連絡があれば、漁業署は同じような通知を漁船にしたはずだ」と話しているそうだ。

■国民党政権のコメントに表れた日台離間の願望

さて、馬英九氏の「岩」発言に対し、日本政府は直ちに抗議。岸田文雄外相も四月二十八日の記者会見で、「沖ノ鳥島は国連海洋法条約上、島としての地位が確立しており、周辺には排他的経済水域が存在する」と強調。「台湾独自の主張は受け入れることができない」と述べると、今度は台湾の林永楽外相が二十九日、あくまでも「岩だ」と反論。

孫立群行政院報道官に至っては二十八日、こう言い放った。

「皆さん、よく考えて下さい。東日本大震災の時、台湾は日本に対してどのようにしたことか」

言うまでもなく当時の台湾人の日本被災地に対する温かい支援は日本全国を感動させ、両国民の心の距離が一気に縮まり、今日のきわめて良好な日台親善関係が現出したわけだが、この報道官はそれをぶち壊そうというのだろうか。

この報道官は馬英九氏、洪秀柱氏らと同じく在台中国人。そのためか日本への敵意が剥き出しで一般の台湾人とは少し異なる印象があるが、しかし一般の日本人はそうした違いなどわからない。こんなコメントを聞けば台湾国民全体が、「実は傲慢で恩着せがましい人々だった」と誤解しかねない。

そう考えれともしや国民党政権は、すでにこのようにして日台離間に着手しているのかも知れない。

■反日「置き土産」を新政権はどう処理するか

そうした日台対立の状況の中、注目されるのが間もなく政権を受け継ぐ民進党の姿勢である。

洪秀柱国民党主席が今回、民進党の日頃の姿勢に関し、「逢中必反、逢日必軟(中国には強硬だが、日本には軟弱)。これが理解できない」と批判したように、国民党、そして中国にとっても、日本に対して強硬姿勢を見せることは「中華民族」の証。もしそれができないなら「数典忘祖」(先祖が中国人であることを忘れた)の裏切り者と看做して痛罵するのが中華民族主義というものだ。

そこで「脱中国化」を進めるであろう新政権には、何としても馬英九政権の反日強硬姿勢を継承させたいところだろう。

もちろん新政権が態度を軟化させればさせたで、国民党は「媚日で台湾の主体性を否定」「漁民の利益を守ろうとしない」とのレッテルを張ってやろうとウズウズしているはずであるが、当の民進党はどうだろう。

民進党の呉幹事長は五月一日、メディアの取材に対し、党としての次の四点の考えを示した。

「政府は漁民を保護する責任があり、そのためにはいかなる措置も継続する」

「台日間には早くから良好な漁業権協議のメカニズムがあり、そうしたものを通じて協議を継続し、問題を解決する」

「問題解決まで双方は自制すべき。特に日本には漁民への妨害を控えるよう訴える」

「新政権発足後は交渉ルートを通じて協議を進め、漁民の権益に悪影響が及ばないようにする」

呉氏は「漁民保護で軍艦の派遣は考えているか」と聞かれ、「軍事的な意味がとても大きく、慎重に考えなければ。しかし漁民の保護は蔑にできない」との見方を示した。

以上のように民進党は、国民党の「反日」キャンペーンに乗せられたくもないが、「台湾の主体性なし」と批判も受ける訳にはいかないといった状況だろう。

日台離間の火種という国民党政権の置き土産を、民進党新政権がどう処理するかに注目しよう。


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