【傳田晴久の台湾通信】「台湾防疫の実態」

【傳田晴久の台湾通信】「台湾防疫の実態」

1. はじめに

イギリスで確認された変異ウイルスの感染が世界各地に拡大していますが、各国の防疫体制はどうなっているのでしょうか。防疫体制の世界のお手本、台湾の防疫について、その実態を伝える動画を見ることが出来ました。KAKEIの『Taiwan・ビジネス』で「台湾人は怒っている」というタイトルで、台湾の厳しい防疫体制を紹介してくれています。大変参考になると思われますので、台湾通信にて引用、ご紹介したいと思います。

2. 林佳慶氏の動画紹介

以下は、KAKEIこと林佳慶氏の動画の語りを文字起こししたモノです。
「とても残念ですが、12月22日台湾でコロナウイルスの国内新規感染者が1名出ました。4月12日以降、連続235日約8か月間新規国内感染者はゼロでした。コロナの封じ込めが成功して、今まで自粛していた大型イベントも今年の9月から解禁。先日台湾で結婚式やブティックショップなどのイベント用にお花(の提供)やライブ演奏している台湾の経営者仲間と意見交換したのですが、1月から8月の売り上げはほとんどなし。9月のイベント解禁は昨年の9月から12月の期間と比べると売上が3倍近くになって、これからどんどん売上を拡大していくぞという矢先にこのニュースです。とてもショックです。

私が台湾のイベント関係の仕事をしている経営者仲間から台湾のビジネスの事情を聞いたのは、12月21日、まだ新規国内感染者が出る前日でした。21日に話をした時は経営者仲間からこれからの事業展開をとてもワクワク話していただきしたが、その翌日に台湾国内で新規感染者が出るなど想像もしていませんでした。
国内感染者が出たことによってイベントも自粛になるかもしれない、これから頑張ろうと思った時にこんなニュースが出てきました。とてもやりきれないですよね。悔しいと思います。

実は今回の台湾国内で、新規感染者が出たこと、ネット経由でも台湾人の怒りを感じることが出来ます。なぜ台湾人は怒りを感じるのか。今回台湾で国内新規感染者になったのは、30代台湾人女性、怒りの矛先は台湾政府や新たに感染してしまった台湾国内の新規感染者の30代女性ではないのです。それでは台湾人は誰に怒っているのでしょうか。それは台湾国内の女性が感染する切っ掛けを作ったエバー航空のニュージーランド国籍のパイロットに対してです。
このニュージーランド国籍のパイロットへの怒り、それはこのパイロットがコロナに罹ったことに対して怒りを感じているのではなく、このパイロットが台湾国内のコロナに関する隔離ルールを守らず、また台湾に居る期間の活動報告に関して虚偽の報告をしたことによって、結果台湾で国内新規感染者を出してしまった。それに対して、台湾人がその行為に対してとても憤怒しているんですね。
それでは何故このパイロットは虚偽の報告をしたのでしょうか。

実はこのパイロットと今回の国内新規感染者の女性、12月7日から11日の間まで頻繁に、密接に濃厚接触をしていたんですね。本来この期間、このパイロットは自宅滞在要請期間、そして自主健康管理期間中でした。自宅滞在要請期間というのは外出を原則認められません。この間に外部の人との接触も認められません。自宅滞在要請というものは台湾ではお願いではなく、強制力を持っているんです。

その例として、先日自宅滞在要請期間で防疫ホテルで隔離中の外国人労働者が、夜中お腹を空かせて部屋から出て、廊下にある電気ポットからカップラーメンにお湯を入れたことが、台湾政府の決めた隔離ルールに違反するということで、台湾元10万元、日本円にして約40万円近くの罰金を、この約8秒間という短い間部屋から出たということで、このようなペナルティを受けたケースがあります。

また自主健康管理期間というのは、自粛とは違い外出が認められます。但し、4つ守ってもらう事があります。それは毎日朝晩1回ずつ体温を測定する事、1日の行動を詳しく記録する事、公共の場所への出入りは極力控える事、外出時は医療用マスクを着用する事、この4点が自主健康管理期間中の対象者に求められます。
しかし、このパイロットは隔離期間中に今回感染した台湾人女性と頻繁に会いました。そして自主健康管理期間中に台北の三越デパート、台北のそごうデパート、桃園のコストコという人の出入りが多いところに出入りしたことが判明。しかもパイロット本人のコロナ感染が判明した際に、今回の国内新規感染者の女性との接触を一切報告していない虚偽の活動報告をしました。虚偽の活動報告をした理由は、このパイロットの口からは出ていないですが、台湾の新聞報道によると、このニュージーランド国籍のパイロットは既に奥さんと子供がいるので、台湾人女性との関係が明かるみに出ることを嫌がり、虚偽の報告をしたのではないかといわれています。

今回のルール違反、このパイロットは台湾元30万元の罰金、日本円にして110万円の罰金が科されます。
ここで不思議に思うのは、虚偽の報告をしても、何故その後虚偽が発覚したのか、実は台湾でコロナに感染した場合は、先ず担当の医師がこれまでの2週間の活動報告のヒアリングをします。ただこのパイロットの活動報告に疑問を感じた担当医師は警察に活動の追跡を依頼、警察はこのパイロットが運転する車と携帯のGPSによって、このパイロットの行動が証言と矛盾していることが発覚、台湾の場合はここまで追跡するんですね。

台湾がコロナの封じ込めに成功したのは、もちろん台湾政府がコロナに関する初動体制と対策が確立されたというのもありますが、台湾国民の協力もコロナの国内新規感染者が(今まで)8か月以上ゼロをキープできた理由となっています。それを一人のルールを守らない人、しかもルールを守らないだけでなく、今度は台湾人を欺く行為、しかもそのパイロットが行ったデパートなどは一時休業して全館消毒しました。その期間中は商売ができないんですね。パイロットひとりの迷惑行動が、一生懸命商売やっている人の邪魔をし、しかも他人の健康をも脅かした。自分に甘く、人にも甘い、とても寛容な心を持つ台湾人もさすがに今回の出来事にはカンカンです。パイロットが所属するエバー航空の公式フェースブックページには、このパイロットに関する批判のコメントが多数寄せられました。エバー航空は今回問題を起こしたパイロットを免職処分としました。

今回台湾で、国内新規感染者が出てしまったことはとても残念ではありますが、ただ完全にアウトオブコントロールになったわけではありません。まだ感染源を特定・追跡できる状態にあります。今回の台湾国内新規感染者の女性と、この2週間のうちに接触した人数は167名、その167名が出入りする771カ所の職場などは完全消毒。こここまで台湾政府は把握しているんですね。

ただここで油断はまだできない状態です。コロナの潜伏期間が最長14日間といわれているので、この2週間でコロナの感染が蔓延するかどうかが、今後の台湾の生活に大きく影響します。この2週間がキーとなります。この2週間ですが、実はクリスマス、大晦日、元旦というビッグイベントが集まる時期です。台湾政府からは各イベントを中止するという要請は出ていない。イベント開催にあたり、新たなガイドラインが出ました。そして台北市のカウントダウンイベントもまだ中止にはなっていないですが、前日に中止を発表することもあると台北市長の柯文哲氏は話しています。もし急遽キャンセルになったら、この時期に向けて既に色々な企画をして、場合によっては多数の投資をしているイベント関係事業者や商売をしている方のことを考えると、本当に心が痛みます。これからの2週間は不安が続きますが、2週間後に追跡不可能な国内新規感染者が出ないことを強く祈っています。」

3. 陳時中氏の指示

中央流行疫病指揮センターの指揮官陳時中氏は、年末年始のイベントへのガイドライン、五つの原則を示しています。
①イベント参加者はマスクを着用すること。
②電源を入れた携帯電話を所持すること。③地方公共団体は予防策(マスクの強制
 着用、手洗・消毒の励行など)の実施。
④イベント会場での飲食禁止(違反者には罰則を)、
⑤自宅検疫、隔離、自律的な健康管理者、発熱、嗅覚異常、下痢している者(一般市民、出演者、スタッフを含む)の入場禁止。

4. おわりに

防疫体策として言われていること、やっていることは日本も大差ないと思われますが、その厳しさが全く違うように思われますが、如何でしょうか。片や「自粛」、片や「強制・罰則」・・・・、「自粛」で済めばありがたいのですが、今は非常時です。


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