(転載自由)
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以下は6年前に上梓した単行本「日本よ、こんな中国とつきあえるか」の一部ですが、参考のために再度掲載させていただきます。
「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
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●SARSは「中国肺炎」と呼ぶべきだ
二〇〇三(平成一五)年春、中国が発生源のSARS問題が世界を震撼させた。
日本ではSARSの呼び方を「新型肺炎」や「サーズ」にしたり、直訳の「重症急性呼吸器症候群」にしたりしていたが、いずれも適当ではない。まず、時間が経過すれば新しい病気ではなくなるSARSを、いつまでも「新型肺炎」と呼ぶわけにはいかない。
それに、もともと「SARS」は「Severe Acute Respiratory Syndrome」(重症急性呼吸器症候群)の略称であり、症状を表現している便宜的な呼び方にすぎない。「症候群」と名付けられている病気は、複数の原因もしくは原因不明の要素からもたらされた病気である。しかし、重症かつ急性の呼吸症候を表わす病気は、サーズ・ウイルスの感染症だけではない。
以前からある呼吸器の病気で、新生児から高齢者までさまざまな病因で引き起こされた「急性呼吸窮迫症候群」ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)の臨床症状も、SARSと同じく重症・急性の呼吸器症候である。その点、独特な臨床症状と病理的特徴を有し、感染原因のウイルスまで特定されているSARSは、「疾患」(Disease)であって、「症候群」(Syndrome)ではない。香港風邪、スペイン風邪を引用するまでもなく、この病気の厳重性から考えれば、発生源が中国であるSARSは通称として「中国肺炎」と呼ぶべきであろう。
当時から「中国肺炎」の呼称は、中国に対する差別になると危惧を表明する向きもあった。だが、たとえばウイルス性出血熱には「ラッサ熱」「マールブルグ病」「エボラ出血熱」「クリミヤ・コンゴ熱」の四つの疾患があるが、ラッサは発生したナイジェリア北部の村の名前であり、マールブルクもドイツの都市名だ。エボラもまた発病者が発見された近くの川の名称であり、クリミヤもコンゴも地名であり国名だ。ましてや単なる通称ではなく、正式の学名になった「日本脳炎」の名称に差別を感じている日本人は果たしてどれくらいいるだろうか。発生源を伝染病の病名にすることはむしろ普通であり、差別とは全く関係のない命名なのである。
いくら他国に被害を与えても非を認めない中国が、反省を込めて素直に「中国肺炎」の通称を受け入れることはなかったが、「差別だ」と中国が反発すれば大議論になり、「中国肺炎」が蔓延した要因も徹底的に検証され、世界にとって有益だったことは間違いない。
中国では、「中国肺炎」を「非典」と呼んでいる。「非典」とは「非典型肺炎」のことであり、典型的でない肺炎はすべて「非典型肺炎」と呼ばれている。「マイコプラズマ肺炎」や「退役軍人病肺炎」なども、「非典型肺炎」の部類に入るわけだ。
「中国肺炎」はそれらの「非典型肺炎」とは比べられないほど強力な伝染力と致死力を持っている。「中国肺炎」を「非典」と呼ぶのは、中国人特有の責任逃れのまやかしでしかない。
二〇〇三年二月二六日、ベトナムのハノイで、中国系アメリカ人が初めて「中国肺炎」患者として確認されたが、その一年ほど前からすでに広東省あたりで広がっていたのではないかと、香港の新聞では報道していた。
また、台湾大学付属病院伝染病部部長の張上淳教授は、二〇〇二年一一月に広東省で亡くなった台湾人ビジネスマンは「中国肺炎」で死亡した可能性がきわめて高いと発表した。実際、広東省の衛生当局が外部に漏らさないように隠蔽指令「内緊外鬆」(内部ではしっかりやるが、外部には何事もないように見せろ)を出したことも報道された。この中国の隠蔽体質が、台湾を含む世界に絶大な被害をもたらしたのである。
●責任を転嫁し謝罪しない中国
アメリカ戦略国際研究センター(CSIS)の中国研究部長ベイツ・ギル氏は二〇〇三年五月中旬に開かれた米議会公聴会で、「SARSについての中国当局の秘密主義的対応は、中国が新指導部の下で開放と自由の方向に進みだしたという見方は早計にすぎることを印象づけた」と警告した。
この「中国肺炎」に関する隠蔽工作は氷山の一角にすぎず、これまで発表された中国の経済成長率、銀行の不良債権、国営企業の経営状況、失業率などのあらゆる統計は、当局の都合によって偽造されたものが多いことに、国際社会は気づき始めている。
中国当局が国際社会に謝罪しないのは、自分に都合のよいようにこの経緯を捏造しようとしているからであろう。北朝鮮の家族が瀋陽日本領事館に逃げ込んだときも、中国は警官の日本領事館への侵入を認めようとせず、「領事館員の要請で入った」と責任を日本になすりつけた。全世界の人がテレビ中継で見ていた天安門事件についても、中国は「一人の死者も出なかった」と公言したのである。証拠を目の前に突きつけられても、ウソをつき通すのが中国のやり方なのだ。
今回の「中国肺炎」も、死に至る伝染病を世界中にばら撒きながら謝罪しないのは、国際社会に謝罪すれば、中国が発生源である事実を認めることになるので、責任転嫁ができなくなってしまうからであろう。
中国の無責任さは、台湾の世界保健機構(WHO)へのオブザーバー加入についての妨害からもわかる。医療水準は台湾の足元にも及ばず、台湾とは直接の関係がないにもかかわらず、中国は「ちゃんと台湾の面倒を見ているから、台湾のWHOオブザーバー加入は不要だ」と嘯いたのである。
その後、五月一九日に開催されたWHO年次総会では、台湾の新聞記者の質問に対して、中国代表団の一員であった元中国軍縮大使沙祖康は、「うるさい! お前ら(台湾人)のことは誰も相手にしないよ」と露骨な暴言を吐いた。これが中国人の本音なのだ。
ところが、その直後、中国は台湾に医療用品を援助すると言い出した。台湾がそれを断ると、今度は記者会見で低俗な言葉を使いまくって台湾政府を罵る始末だ。それは、まるで「オレの酒を飲めないのか」と、からむチンピラさながらだった。
さらに、WHO総会での決議に、台湾への支援が可能になるよう、「SARSの監視、予防、制圧のためのすべての要求に、WHOは適切に対応する」との条項が盛り込まれると、中国代表は「政治干渉だ」と会場で叫んだのである。
このように台湾人の人命を軽視し、WHOの台湾援助も阻止しようとしている中国が発生源のSARSを「中国肺炎」と命名しなければ、いずれ発生源が中国であることも風化されてしまい、隠蔽によって被害が拡大したことも忘れ去られるであろう。
今からでも遅くはない。世界の人々がこの教訓をしっかりと記憶に刻み込むように、「SARS肺炎」は「中国肺炎」と呼ぶべきではなかろうか。
●鳥インフルエンザの実態を隠蔽する中国
毒性の強いH5N1型ウイルスの感染によって引き起こされる鳥インフルエンザは、現在、世界中に広がりつつある。その死亡率は五〇パーセントを超え、SARSの一五パーセントをはるかに上回る。世界的な大流行が起これば、死亡者数は五〇〇万人から一億五〇〇〇万人にのぼると国連が予測している。しかも、その忌まわしい伝染病はすべて中国と関係している。
実際、一九世紀に発生した五回のインフルエンザの世界的な大流行の原発地は、すべて中国だ。地域環境と中国人の不衛生な生活習慣から見れば、そこは新型ウイルスの誕生に絶好の条件を備えているのだ。
中国での鳥インフルエンザ流行の実態について、中国政府は相変わらず隠蔽工作に徹している。中国内部情報に信憑性が高い「大紀元新聞」によれば、中国当局により次のような隠蔽工作がおこなわれているという。
(1)中国内部から伝えられた情報によると、二〇〇五年の一一月一二日までに中国で一三省に鳥インフルエンザの感染者が発生し、死亡三一〇人、隔離五五五四人に達している。しかし、中国当局が公表した情報では、死亡者はたった二人しかいない。
(2)中国当局は、鳥インフルエンザに関する情報を国家機密として取り扱っている。許可なく関連情報を公開する場合は「国家機密漏洩罪」で厳しく罰する条例を定めている。
(3)鳥インフルエンザ研究の専門家である香港大学微生物学の管軼助教授は、二〇〇五年七月ごろ、英科学誌「ネーチャー」に研究論文を発表し、中国南部が鳥インフルエンザの原発地である可能性を指摘したことにより、共産党当局に国家機密漏洩と糾弾され、ウイルスのサンプルを押収されたうえ、研究の中止が命じられ、中国での研究室も閉鎖された。
(4)中国青海省で発生した鳥インフルエンザに関する情報を漏らしたとして、二〇〇五年六月に、八人の中国の若者が中国当局に身柄を拘束された。
(5)WHOの関係者は、「中国当局は、最悪の状況に追い込まれない限り、われわれには本当のことを明かさない」と語った。
(6)国連食糧農業機関(FAD)は「中国当局の許可なしに、専門家を感染地に派遣調査することはできない。中国の本当の伝染状況を把握するのは困難である」と指摘している。
中国では個人はもちろんのこと、地域や団体がそれぞれの利益のために情報を隠蔽することは数多く見られるが、多くの人命に関わる流行病の情報を隠蔽するのは、中国共産政権のような独裁国家にしか見られない。
疫病に国境はない。中国の隠蔽工作を国際社会が許すことは、疫病の散布を容認するに等しい。日本をはじめとする国際社会は、ここまで中国に遠慮する必要はない。本当に鳥インフルエンザの被害を食い止めたかったら、中国の隠蔽工作を許してはならず、積極的に情報の開示を求めるべきなのである。