「ヴェクトル21」2015年4月号より転載
鈴木上方人(すずき かみほうじん)中国問題研究家
●中国人の爆買い
中国の旧正月である春節期間に来日した中国人の爆買いが話題になった。ほとんどのマスコミがこれを肯定的に報道しているが、多くの日本人は冷ややかな目で中国人たちの爆買いを眺めている。高価な商品を買ってくれる中国人を歓迎する企業がいる一方で、札束で頬を叩くような態度で買い物をする中国人たちに辟易している日本人店員も少なからずいるだろう。
実際、銀座では買い物へやってきた中国人でひしめき合い、街中にけたたましい中国語が飛び交っている。ところ構わず大声で騒ぎ、飲食をし、子供の排泄まで気ままにさせる中国人たちは、気品漂い銀座を悪趣味なチャイナ・タウンにしてしまった。
●日本人と中国人は相性の良い民族同士?
日本の2月は小売業の閑散期であるため、この時期の爆買いはまさに恵みの雨とも言えるだろう。もともと日本では「お客様は神様」という顧客至上主義の接客姿勢であり、それ故日本のサービスは世界中から高く評価されている。どんな顧客に対しても分け隔てなく笑顔で接する日本の店員は、世界各国で顰蹙を買っている行儀の悪い中国人客に対しても当然ながら親切に接している。だから中国人にとって日本は、良い商品と良いサービスを受けられる最高の国と言えよう。
つまり中国人の爆買いは、日本人にとても中国人にとても実に都合が良いのである。爆買い現象に限って言うのならば、日本人と中国人は実に相性の良い民族同士なのだ。
●相互理解は好感を高められるか
観光庁が発表した「訪日外国人消費動向」によると、中国人の日本旅行の目的としてショッピングをあげたのは66%にも上り、他国の観光客と比較すれば、日本における四季の体感、歴史、伝統や生活文化への関心が薄いという。そのため観光庁は、中国人観光客に対して買い物だけでなく、日本の自然や文化にも関心が高まるように知恵を絞ってアプローチしている。とある有名なタレントも中国人が日本で経験した日本の良さを中国で紹介してくれれば、いずれ中国人の反日感情も和らぐだろうとテレビのバラエティ番組で発言し、中国人の来日を歓迎していた。
なるほど、中国人が日本の津々浦々まで足を運び、買い物だけでなく、日本文化にもたっぷり浸かってもらえれば日本をも好きになり、対日感情も好転するのだという期待はまさに日本人的純真な発想だ。中国人が本当にそうなってくれるかどうか、香港を例として見てみよう。
●交流すればするほど嫌になる人種
人口7百万の香港には年間4000万もの中国人観光客が訪れており、まさに香港の隅々に中国人たちが足を踏み入れている状況である。中国人は充分すぎるほど香港の良さを理解できるとみて良いだろう。当然、香港人も中国人との接触が日常的になり、中国人への理解も更に深まったに違いない。日本的に考えれば、これほど濃厚な交流があれば、中国人と香港人は当然一層親密になっているはずである。
しかし現実といえば香港人はところ構わず大声で騒ぎ飲食し痰を吐き、人目を憚らず公共の場で排泄する中国人の不作法に堪忍袋の緒が切れ、一方の中国人も香港人の中国人を軽蔑する態度に不満を抱いている。交流の結果は、香港人は中国人観光客を「イナゴの大群」、中国人は香港人を「殖民地の犬」と罵り合う派手な喧嘩に発展するものとなった。香港人が我々に教えてくれたことは、中国人とは交流すればするほど嫌になる人種であるということだ。
似たような状況は台湾でも起こっていた。台湾のあらゆる観光名所に中国人観光客がひしめいているが、こういった中国人のいるところを台湾人は敬遠している。台湾の中国人への観光開放は2008年だが、それ以来、台湾人の中国人への反感が年々高まっている。つまり、話せばわかる、交流すれば親密になるという日本人的な発想は、少なくとも中国と香港や台湾との間にはまったく通用していない。
●中国人専用と化した日本の温泉旅館
では、中国人観光客の大群が日本の至るところに押し寄せればどうなるのか。実際に中国人観光客を受け入れている日本の温泉旅館を覗いてみれば、その実情がわかるだろう。事実、中国人の好きな富士山近くの温泉地には、中国人専用と化した温泉旅館が何軒もある。無論、日本には「中国人専用」という看板を掲げる旅館などある訳がない。
しかし、皆が入る大浴槽で下着を洗濯したり、夜中に廊下で大宴会をやって騒いだり、些細なことで派手に喧嘩したりする中国人観光客が泊まる旅館では、日本人が寛げるはずもないのだ。結果として、中国人観光客を受け入れる旅館は中国人専用の旅館になってしまうのである。
結局中国人の爆買いは、中国人相手に商売する企業は潤うが、そのツケはすべての日本人に回ってくることになる。そのツケとは何か。一言で言えば、格なのである。確かに大量消費の中国人観光客は上客かもしれない。だが、日本社会の品格を間違いなく落としている。中国人客の受け入れと品格の維持を両立できぬジレンマを世界の多くの国々が抱いているのだ。
中国人の入店を拒否しにくい人種差別にうるさい今のご時世では、中国人観光客の存在は悩みのタネだ。本来日本は国益の観点から、中国人観光客の前近代的な行為を毅然と批判し、その悪行をやめない中国人観光客の受け入れをきっぱりと拒否できる法的整備をすべきなのである。その厳しい姿勢がひいては中国人の民度をも高め、中国のためになるであろう。
●礼儀作法とは内面的な品格の外面的表現
一番の問題は、中国人自身が何故嫌われているのかを理解できないことだ。中国人は自国を「礼儀之邦」と称し、しきりに中華文化の優越性を吹聴している。そのような悠久の中華文化を持つ中国人たちは何故こんなにも民度が低く、どの国へ行っても嫌悪されるのだろうか。
その答えは実に簡単だ。それは実生活の中国社会では誠実さが存在しないからである。18世紀のフランス思想家シャルル=ルイ・ド・モンテスキューは、中国人を狡猾さと勤勉さとを併せ持つ極めて不可解な民族だとし、中国人には誠実、勇敢、善良などの高貴な品格が存在しないと断言している。礼儀作法とは内面的な気高さの外面的表現であり、高貴な気品が存在しなければ、当然礼儀作法も身につかないのだ。
贖罪心理が働いているためか、戦後の日本政府もマスコミも中国人や中国文化を過剰に美化している。しかし大勢の中国人が来日することによって日本人は近距離で中国人を観察できるようになり、中国人の本質をより理解できるようになった。日本の最大の脅威である中国への理解は日本の存亡にも関わることと考えると、中国人の爆買い現象は日本を救うきっかけとなるかもしれない。