〔原題:自分の味方を敵に回すな(AC通信No.505, 2014/07/19)〕
良薬は口に苦しという諺がある。よく効く薬ほど苦くて飲みにくい
もの、ためになる忠言ほど耳が痛くて聞きづらい、忠言は耳に逆ら
うとも言う。
苦くても効く薬だから我慢して飲むのは大人で、苦いから飲まない
と言うのは子供や未成熟な人である。苦いものは有害で有害だから
毒だという人は味方を敵に回すようなもので救われない。
●アメリカを告訴した林志昇理論
林志昇がアメリカ政府を告訴した案は、アメリカ地裁と高裁で却下
された。だが林氏理論は間違っていないと主張して台湾民政府
(Taiwan Civil Government: TCG)を組織し、二年前に分裂を起こし、
米国台湾政府(Taiwan Government-USA:TG-USA)の二つのグループ
が出来た。
サンフランシスコ平和条約(SFPT)の第2条(b)で日本が台湾の主権
放棄をしたため台湾の国際的地位は未定である。林氏理論では日本
が放棄したのは「権利、権原、請求権」で「主権放棄」ではないと
いう。しかも、終戦で日本に進駐した占領軍は米軍が主体だから米
国は「主要占領権」を持っていると言う。
このあと林志昇は、SFPTの発効後も米国は「主要占領権」を持ち、
台湾の主要占領権も持つと言う。この理屈により、米国はSFPT発効
から50数年も台湾の占領権を持っていた、だから台湾は米国の属領
で台湾人は米国の居住権を申請できるというのが訴訟の要点だった。
だがこの訴訟は米国の地裁、高裁、最高裁で却下された。
最近になってもTCGとTG-USAのグループは米国が台湾の主要占領権
を持つ、台湾は米国の属領であると主張している。但し両グループ
の主張に違いがある。
TG-USAは「米国の支持と了解を得て台湾政府を創る」と主張する。
TCGは「台湾は日本天皇の神聖不可分の領土で、日本がSFPTで放棄
したのは台湾の主権ではない。だが米国は今も台湾の占領権を持つ」
と主張している。
●SFPTの解釈に疑義あり
この数ヶ月、TCGとTG-USAのメールには、SFPTの第4条(財産の処
分)と第23条(条約の批准と発効)の拠ると米国は台湾の主要占領
権をもってことが確実だと書いている。詳細はAC通信、No.501と
No.502を参照されたい。これは真実でないと私は思って、中国語で
SFPT条約の中で台湾の主要占領権その他についての考察を発表した。
私のSFPTの見解を要約すると以下のようになる:
第一、SFPTは連合国48カ国と日本の締結した平和条約で、戦争終
結の宣言である。主要占領国米国とは日本占領を指すのであって台
湾は第2条で放棄されただけ、米軍が台湾を占領した事実はない。
第二、SFPTが発効すると占領軍は日本から撤退し(第6条)、占領権
は終結した。占領権が今でも(日本で?)有効と言うのは不合理だし、
台湾でも有効とはもっと不合理だ。
第三、もしも米国が台湾の占領権を持つならSFPT第2条(b)に明記
すべきで、第4条(財産の処分)にある米国占領軍、第23条(条約
の批准と発効)で占領権を持つという主張は根拠がない。つまり米
国は「台湾の主要占領国」と言う根拠はない。
第四、米国は台湾の主要占領国であると言ったことはなく、そのよ
うな言動もないし、台湾関係法にも明記していない。そのような事
実は何所にもない。
●反論と再反論
早速TG−USAから反論があった。SFPTが発効した後になっても蒋介
石政権は続けて台湾を統治しているではないかと言う。
私はすぐに再反論を書いた。これこそ米国が台湾の主要占領国では
ない証拠である。米国が台湾の主要占領国なら蒋介石政権を追い出
す権利があるはずで、SFPTを締結した時、78年に米国と「中華民国」
が断交した時も「中華民国」を追い出さなかった。しかも台湾にお
ける白色恐怖や38年の戒厳令、独裁政治でも米国は沈黙していた。
米国には主要占領国として「中華民国」を制裁する権利がないのだ。
また反論があった。米国が何もしなかったのは台湾人が米国に抗議
しなかったからだと言う。そんなバカなことはない。「中華民国」
政権に虐待されても台湾人が米国に訴えなかったから米国は何もし
なかった?そんな主要占領権があるか?米国の人権無視である。
そうすると最後にアンディの理論は「中華民国」が喜ぶだけだ、ア
ンディは何故このような議論をするのか、利敵行為が目的かと言う。
なにおかいわんやである。
味方を敵視する理屈、つまり議論が不利になったら相手が利敵行為
をしていると非難して沈黙させる。せっかくの忠言も耳に入らない
なら沈黙するしかない。
●自分の味方を敵に回すな
彼らの仲間には、たとえ少しぐらい不合理でも、台湾のためなら少
しの不合理は受け入れると言う人も居るがそうはいかない。味方で
ある私が不合理な点を指摘できると言うことは敵(「中華民国」)
も既にわかっていることである。不合理な理由で独立運動は出来な
い。忠言が気に入らないから、味方の口を封じて敵に回すような愚
行を犯すべきではない。
台湾独立は多くの困難を抱えている。正義と正当な理由をもって進
むべきである。敵に有利な間違った理論を使わなくても正当な理由
はいくらでもある。米国が主要占領国だからTG-USAやTCGが米国に
抗議するのは米国を刺激し、困らせるだけである。
米国は台湾の主要占領国ではないが台湾の安全を保護することを
「台湾関係法」で明確にしている。米国を刺激する行動は台湾のた
めにならない。米国は友好国で台湾の保護国である。だから抗議で
はなく友好的態度で接することが外交の真骨頂である。
2014.7.21 09:00転載