【その四】台湾と靖國神社

【その四】台湾と靖國神社

靖國神社「社報」3月号より転載

日本李登輝友の会事務局長 柚原正敬

 後日、靖國神社から華阿財氏と李新輝氏の叔父に関する御祭神調査の結果が届き、華氏の叔父は高木香という日本名で祀られていることが判明した。残念ながら、李氏の叔父は確認に至らなかったが、大東亜戦争終結からすでに六十五年も経とうとしているのだ。台湾出身戦歿者の場合は、その兄弟ならまだしも、年下の甥や姪の世代では日本語を話せない場合も少なくなく、所属していた部隊名や戦歿した年や場所、あるいは当時の本籍地などを正確に知っていることは期し難い。ましてや、異国となった日本にそうそう来られるわけでもない。

昭和十三年生まれだという華氏は日本語を話せる日本語世代に属するが、それでも普段は日本語を使う機会はほとんどないという。夫人は日本語を話せない。今後、台湾出身戦歿者の新たな御遺族を探し当てるのはかなりの困難が伴うことは確実だ。

日本李登輝友の会では毎年十二月に「台湾出身戦歿者慰霊祭」を靖國神社において斎行している。昨年で五回目となる。台湾出身戦歿者を対象とした靖國神社での慰霊祭は恐らく日本で初めてのことと伺っているが、私どもの今日が戦歿者の尊い犠牲の上にあることを忘れないようにし、日本と台湾の深い結びつきは台湾出身御英霊からの賜り物であることに思いを致し、感謝と報恩の誠を捧げる場としている。

この慰霊祭に、できれば台湾の御遺族をお招きしたいと考えている。それが新たな御遺族の発見につながることを期待するからである。

また、台湾には台湾出身戦歿者を祀る宝覚禅寺があり、李登輝氏が総統のときに揮毫した「霊安故郷」碑が建立されている。この慰霊碑の建立には日本人も協力している。そこで、靖國神社と宝覚禅寺が姉妹交流できないものかと密かに考えている。

国交のない日本と台湾において、姉妹都市交流を結んでいるのは岡山市と新竹市、仙台市と台南市、八王子市と高雄市など十六自治体に及ぶ。秋田の田沢湖と高雄の澄清湖の姉妹湖の例もある。戦歿者をご縁とした姉妹交流が日台間にある方がむしろ自然である。台湾に靖国神社を知らしめる意味でも、その実現を切に願っている。


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