【阿彰の台湾写真紀行】雞絲麵(ke-si-mī / koe-si-mī:ケェシィミィ/クェシィミィ)

【阿彰の台湾写真紀行】No. 12 雞絲麵(ke-si-mī /
koe-si-mī:ケェシィミィ/クェシィミィ)

 日本のインスタントラーメンやカップ麺のルーツではないかと言われる台湾の雞絲麵(ke-si-mī
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koe-si-mī:ケェシィミィ/クェシィミィ)」は、日本に日清チキンラーメンが登場するはるか以前から台湾にある、“お湯をかけるだけですぐに食べられる即席麵”である。

 雞絲麵を簡単に説明すると、素麺(そうめん)を油で揚げてから天日干しにしたものだ。屋台や食堂で、野菜や卵などを加えて調理されたものが売られるだけでなく、スーパーや個人商店、伝統的な市場などで、各食品メーカー製造の袋詰めのものが買える。

 その中でも特に人気があり、有名なものは、「黑雞牌雞絲麵」(力山食品)で、海外へも輸出されているようだ。調味料の他に付属で入れられている冬菜(白菜などから作られる中華式の漬物)が美味しいという評判もよく聞く。

 力山食品の初代社長は元々小麦粉の販売をしていたが、支払いができなくなった製菓・製麵工場の機械を差し押さえたことを切っ掛けに、自分でも雞絲麵を作るようになったそうだ。初代社長の後を継いだ息子さんも「現代のインスタントラーメンやカップ麺が発明されるはるか以前から台湾には雞絲麵があった」と発言している。その息子さんの記憶によると、子供の頃に、行商の人が天秤棒を担ぎ、麻竹の葉(チマキを包むのにも使われる葉)に包んだ雞絲麵を呼び声をあげて売っていたそうだ。

 力山食品は、伝統的な雰囲気や味を守るために、今でも手で麺を巻いて束ねるなどの手作りに拘っている。素麺(そうめん)を日干しする時間の調整が難しいらしい。紫外線で麺の殺菌ができるのだが、干す時間が短いと殺菌効果は弱くなり、干す時間が長すぎると麵が固くなり、手で巻くのが難しくなるそうだ。防腐剤を使わないことにも拘っている。そのほうが伝統的な味が保てるからだ。また、以前は素麺(そうめん)を揚げる時に使う油はラードだったが、現在では人々の健康のために、輸入パーム油を使っている。

 台湾がまだ日本の植民地であった1944年(昭和19年)1月の「民俗臺灣」(主に台湾の民俗習慣を紹介する日本語雑誌)に、当時の台北市艋舺(
báng-kah:バンカッ)における台湾人の食習慣についてのレポートが掲載されているが、「雞絲麵」についての記述もある。そこには「雞絲麵は索麵に味をつけたもので、熱湯をそそいでそのまま食べることが出来る」と書かれている。文中の索麵(さくめん)とは素麺(そうめん)の古い言い方である。また、「薏麵は大麵の中に卵を混ぜたもので、普通はあまり使用しない」と薏麵(意麵という表記もある)についても触れられている。文中の大麵は、太めの油麵(かん水=アルカリ塩水溶液を使用した麵)のことで、台湾で昔からよく使用されている黄色い麵のことだ。薏麵(意麵)が現代のインスタント麺のルーツだという説もあるが、この「民俗臺灣」の記事を読む限り、雞絲麵のほうが、今でいうところの即席麺とかインスタントラーメン、カップ麺のルーツ、或いはヒントになったものではないかと思える。

 実は薏麵(意麵)の起源についてはいろいろな説があるが、その中の一つを紹介しよう。薏麵(意麵)のルーツは、伊秉綬
(いへいじゅ:福建省寧化人)という清代中期の書家で、広東省恵州や揚州の知府を歴任し、美食家でもあった人物の家の台所で生まれた「伊府麵」と呼ばれた、短い時間で茹でることができる麵であり、この「伊府麵」が台湾に伝わった後、略称「伊麵」の「伊」の字が変わってしまって「薏麵」や「意麵」になったのではないかという説である。

 現在、台湾では薏麵(意麵)の形態はいろいろな種類がある。細くて縮れた麵や、太くて平べったい麵もあれば、保存が効くように、意麵をさらに油で揚げて成形し(これを鍋燒意麵と呼ぶ店もある)、衣に包まれたような形態のものもある。また、この類の意麵は、非常に短い時間煮るだけで柔らかくなる。そして鹽水意麵や福州意麵、汕頭意麵といった、台湾や中国の地名が付く名称で呼ばれるものもある。地名が付くものは、意麵の発祥地だからとか、或いは、意麵は元々福州人が発明したから、汕頭人が製造・販売していたからだといった、起源にまつわるストーリーと関係しているようだ。

 もしかしたら本来は全く別物だった幾つかの麵が時代とともにさらに別々に変化して、それらがいつの間にか同じ名称「意麵」で呼ばれるようになった可能性もあるし、元は一種類の麺だったものが各地で時代とともに全く違う麺に変化してしまったけれど、同じように「意麵」と呼ばれているという可能性もあると思う。また実は中国にも昔から台湾の雞絲麵のように、お湯をかけるだけですぐに食べられる麵があって、旅をする時などに携帯されていたらしい。

 雞絲麵はお湯をかけるだけですぐに食べられるのだが、やはり少し茹でたほうが美味しいからということで、家庭では茹でてから食べる人も多いようだ。食堂や屋台ではモヤシやキャベツ、ニラなどの野菜が少し入れられているほか、お金を足せば、溶き卵やワンタンなども加えてもらえる。また、各種鍋料理の中に入れる人も多い。このように簡単に作れる麺なので、食堂や屋台での価格は、卵やワンタンなどの食材を加えなければ40元(150円)ぐらいである。陽春麵(ヤンツゥンミェン=中国語)や滷肉飯(ló͘-bah-pn̄g:ロォバァプン=台湾ホーロー語)などと同じように、台湾の食堂・屋台料理の中で一番安い食べ物の一つだ。


編集部より:「阿彰の台湾写真紀行」では、台湾在住のデザイナー、『台北美味しい物語』著者である内海彰氏が撮影した写真とエッセイをお届けします。写真は末尾のリンクから取得することができます。またウェブで閲覧できるバックナンバーでは、記事とともに表示されます。


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1夜市の雞絲麵.jpg

2食堂の雞絲麵.jpg

3黑雞牌雞絲麵.jpg(包装)

4黑雞牌雞絲麵.jpg

5朝市で売られている雞絲麵.jpg(包装)

6朝市で売られている雞絲麵.jpg

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