【警鐘】台湾選挙覆う中国の影

【警鐘】台湾選挙覆う中国の影
【警鐘】台湾選挙覆う中国の影

2011.12.6 産経新聞

      特別記者・千野境子

 来年の指導者交代劇の嚆矢(こうし)となる台湾総統選挙(1月14日投開票)で、初めて民間の「台湾で公正な選挙が実施されるための国際委員会(ICFET)」が発足した。

 国際法の専門家として知られる彭明敏氏ら10人が組織委員会を立ち上げ、日欧米など国際社会に関心と参加を呼びかけている。

 1996年に李登輝氏を選んで以来5回目の直接選挙となる総統選でも、国際監視団は初の試みだ。趣意書に「私たちは公正な選挙結果を覆す重大な政治事件が起こる可能性もあると考えております」とある。

 切迫さを感じさせずにはおかないその文面に、知名度がまだあまり高いとはいえない国際委員会への関心がにわかに膨らんだのだった。

 今回の総統選は従来12月に行われてきた立法委員(国会議員)選挙との初の同時選挙だ。このため時期も3月から1月に早められた。

 実はこの2つの「初」が国際的な選挙監視団構想へと向かわせた。なぜなら総統就任式(5月20日)は従来通りであるため、移行・空白期間が2カ月から4カ月と倍の長さになってしまったからである。

 「その間に何か事件や危機が起きたらどうしますか。選挙の後に何が起こるか分からないと危ぶむ人は少なくない。それで政府、国会にもアプローチ、超党派で国際的な監視を高めたい、となったのです」と発起人の一人で前台北駐日経済文化代表処代表の許世楷氏は語る。

 許氏によれば、過去の総統選との違いがもう1つある。中国(資本)のメディアへの浸透が一段と進んだことだ。許氏は固有名詞を指摘するのは避けたが、「台湾人なら皆、知っていますよ」と言って、いま選挙戦で流れているというブラックジョークを教えてくれた。

 「選挙は民進党VS国民党ではない。中国共産党が加わっている」

 ICFETが掲げる「目標」からは、自由と民主主義に託す台湾の人々の思いが伝わってくる。

 ・台湾人が30年間、苦労して勝ち取った民主主義と人権を守る。

 ・人民の意志を反映し外部からのいかなる不当な干渉も阻止する。

 ・選挙の過程、選挙の後も平和な内的外的環境を確保する。

 そして、こうした目的を保持するため、ICFETは国際的な民主主義コミュニティーの注目を喚起する活動に従事する−というものだ。

 ここでも名指しはないが、外部の不当な干渉が中国を指すのは明らかだろう。96年の総統選前は中国軍が大軍事演習を行い、2000年には「武力行使」をにおわす「台湾白書」を発表するなど“圧力”をかけた。皮肉にも逆効果だったが。04年では再選を目指す陳水扁総統の遊説中に暗殺未遂事件も起きている。

 今回は、優勢とされた国民党・馬英九総統が「中国との平和協定」に言及して失速、民進党・蔡英文候補との接戦が伝えられる。不測の事態を回避するためにも国際的ウオッチの重要性は増しているといえる。

 ICFETは今月14日に、今後の活動や意義を訴える記者会見を予定している。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世やミャンマーの野党指導者アウン・サン・スー・チーさんら世界の指導者にも手紙を出し、カーター元米大統領からは「(候補者)3人の要請がほしい。その方が参加しやすいし、台湾へも行く」との返事が届いたそうだ。

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