【論説】「流亡政府」論争

【論説】「流亡政府」論争
【論説】「流亡政府」論争

     アンディ チャン

民進党の党首蔡英文が5月25日、中華民国は流亡政府である、と言った
ので国民党側は大騒ぎして反論したが、一部の民進党政治家も国民党の
反論に慌てて理屈に合わないことを言い出した。この論争はこれから年末の
選挙まで続くと思われる。

台湾に住む中国人は、台湾は中華民国の領土であると言って、中華民国
の正当性を主張する。しかしアメリカを始め世界各国は中華民国を正統な
政府と認めず、台湾が中国領とも認めていない。だから中華民国は世界各
国が流亡政府と見ているのである。

台湾人は中華民国を認める者もいるし、認めない者もいる。中華民国がど
のように解釈されるか、幾通りもの解釈がある。混乱は台湾人側に多い。
しかし最近では台湾の國際地位は未定であると認める人が多くなった。

●中華民国は流亡政府である

5月25日台湾教会の主催した、「中華民国が台湾に流亡60年、及び戦後
の國際環境」という新書発表会で、民進党の党首・蔡英文が中華民国は流
亡政府であると述べたので、国民党側は慌てて反論した。事実を人民に知
られたら中国人の居所がなくなるから慌てるのだ。

新書発表会の講演で蔡英文は、「中華民国は流亡政府であり、これまで数
十年間、統治権力は中国と台湾の合体性格をもっていたが、最近は台湾人
のアイデンティティ意識が強くなり、中国性が主体で台湾性が客体だったの
が主客逆転して、台湾性が主体となった」と述べた。つまり中国人の統治か
ら徐々に脱却して台湾人が主体となりつつあると述べたのである。

在台中国人は中華民国は‘流亡政府であると言われたことに対し敏感に反
応せざるを得ない。中華民国が流亡政府なら台湾の独立気運が高まること
になり、台湾が独立すれば在台中国人は行き所がなくなる。彼らは中国に
戻りたいと思はない。

●ヒステリックな在台中国人

台湾問題は複雑である。二年前に馬英九が台湾は正式に中国の領土で
あると述べたが、斉藤正樹元大使が「台湾の国際的地位は未定である」
と述べて大論争になり、今でも台湾人の記憶に残っている。中華民国
は台湾の領土権を持っていない、中国も持っていない。つまり台湾の
主権は台湾人にあることは国際間の常識で、今では台湾人の常識でも
ある。

国民党側の反論は、蔡英文が以前は中華民国政府の官僚だったが、蔡
英文は過去の間違いを認めるのかと彼女を責め、民進党が中華民国を
認めないなら年末の五都選挙は流亡政府選挙に参加するのは不合理だ
と指摘した。

台湾人が中華民国は流亡政府であると認めたなら、中華民国政府の影
響力が大幅に低下し、ひいては台湾を追い出される結果となるかもし
れないと心配している。

●台湾人の解釈にも混乱

殆どの台湾人は中華民国は流亡政府であることに同意する。しかし、
この流亡政府の統治をどのように変えて、台湾国を創るかという点で
違った意見がいろいろでてくる。

独立建国の最大の阻害は、「台湾は既に民主国家である」という主張で
ある。台湾の地位は未定であると言えば台湾独立は当然のことだが、
民主国家であると言えば「台湾=中華民国」となって台湾人の建国は
難しくなる。

一部の人は「正名制憲」で中華民国を台湾国と変更することができる
と夢想している。その根本方法とは選挙であり、選挙で大多数を勝ち
取れば正名制憲は可能だというのだ。

これは明らかなウソである。革命流血が怖いから、不可能なことを可
能なように言いふらすのだ。

中華民国は独裁国家である。中華民国の選挙で台湾人政党が過半数を
制したことはない。選挙で正名制憲をする主張とは、(1)立法院選挙
で大多数をとり、(2)総統選挙で独立意識の強い台湾人が当選して、
(3)中華民国の公民投票で正名制憲の投票に大多数が賛成票を投ず
るという三つの過程を通さねばならない。独裁的な流亡政府の制度で
流亡政府を倒すのは無理である。

●選挙を重視して独立を主張しない民進党

蔡英文の発言のあと、民進党内部ではこの発言に反対するような言動
が出てきた。「中華民国が流亡政府だったのは間違いないが、その後は
民主的な政党交替と民主選挙により、今ではこの流亡政府が正当な民
主国家に変身した」というのだ。

流亡政府が正当な政府に変身できると言うのは不合理である。流亡政
府が正当な政府になるのは中国大陸の領土を取り戻し、大陸の中国人
が政府を支持しなくてはならない。流亡した土地で勝手に政府を合法
化できるはずがない。

民進党は流亡政府の政党であるが、民進党の存在によって流亡政府が
合法化されることはない。民進党は流亡政府の制度下で選挙をやりた
いから勝手な理屈を作って人民を騙す。つまり民進党は台湾の独立を
目差さない私利私欲の集団である。中華民国は流亡政府であると言え
ば選挙が出来なくなるから民進党員は蔡英文発言に反対なのだ。

なんという愚かな政党だろう。私だったら、「流亡政府を流亡政府と言
ってどこが悪い、流亡政府を倒す為に選挙をするのだ」と正論を言う。
政党の党員が党首の言葉を修正するなどバカの上塗りである。選挙を
するなと言う国民党の反論に慌てふためく政治家の見識のなさは惨め
である。

●ECFA協定と流亡政府

台湾では馬英九が中国とECFA協定を結ぶことに反対で、ECFAの是非
を公民投票で決めると騒いでいる。それなら蔡英文が言った通り、「中
華民国は流亡政府だから台湾人を代表する資格がない、馬英九はECFA
にサインする資格がない」と主張すればよい。

公民投票は流亡政府の投票である。流亡政府を認めないなら投票する
必要はない、投票結果を認めなくてもよい。五都選挙の結果も認める
必要がない。

台湾人の目標は中華民国を追い出して独立建国することである。民進
党は中華民国の政党から台湾建国の政党に変わるべきで、中華民国の
政党を自認して国民党と選挙で争う必要はない。

もともとECFAとは中国による台湾併呑の契約だから、馬英九の流亡
政府が台湾人の民意を無視して中国に従属することは出来ない。それ
なのに無思慮な台湾人が中華民国を「合法化された民主国家」などと
言い出すから馬英九がECFAにサインすると言えば慌てるだけで反対
できない。中華民国は台湾人の政府ではないと言えばECFA協定など
認める必要もない。

●「流亡政府」論争が独立意識を招致する

台湾は民主国家であると言えば中華民国を認めて、中華民国の制度に
縛られる結果となる。台湾国を名乗ることが出来ず、台湾は中華民国
であると名乗って中国人と論争をするのは愚劣である。

私の見聞する限り、台湾人は民進党に大いに失望している。しかし台
湾人の政党は民進党と台聯党だけで、民進党が台聯党を潰したのであ
る。今回の反応を見ても、せっかく蔡英文が流亡政府と断定してくれ
たのに、国民党の反論に慌てふためいて選挙のほうが独立より大切と
さわぐのは愚劣である。

中華民国を認めて台湾は民主国家だというよりも、中華民国は流亡政
府である、だから五都選挙では台湾人を市長に選び、流亡政府をもう
一度流亡をさせると言えば台湾人の士気が盛り上がって独立建国が出
来る。

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