【結果分析】台湾県市長選挙

【結果分析】台湾県市長選挙
【結果分析】台湾県市長選挙

               「台湾の声」編集部

 12月5日、直轄市及び直轄市に昇格する台北、台中、台南、高雄を除く17県市
の統一地方選挙(県市長選挙、県市議員選挙、郷鎮市長選挙)が実施された。

 このうち、最も注目された県市長(知事)選挙の結果は、17ポストのうち、中
国国民党(国民党)が基隆市、桃園県、新竹市、新竹県、苗栗県、彰化県、南投
県、嘉義市、台東県、澎湖県、金門県、連江県で12ポストを獲得。野党の民主進
歩党(民進党)は雲林県、嘉義県、屏東県、宜蘭県の4ポストを獲得。そのほか
無所属が花蓮県の1ポストを制した。

 この結果だけを見た場合、与党の国民党が圧勝したように見えるが、台湾メデ
ィアはいずれも国民党の敗北、民進党の勝利と報じた。

 確かに今回、国民党系(前回の親民党、新党も含む)は14ポストから12ポスト
に減少、民進党は3ポストから宜蘭県を4年ぶりに奪還して4ポストに増えたの
だから、国民党は後退、民進党はドン底を脱して前進したとはいえるが、表面的
に見た場合、過半数に大きく及ばない民進党の勝利とは言い難い。

 しかし、得票率を見た場合、台湾政治に大きな地殻変動が起き始めていること
が読み取れる。前回の2005年の県市長選挙は、今回選挙が行われた17県市のみで
比較した場合、国民党は49.8%(親民党を加えると51.8%)、民進党は38.2%(
台湾団結連盟を加えると39.5%)で、その差は10%以上開いていたが、今回は国
民党が47.9%、民進党が45.3%で、その差は2.6%にまで縮まったのである。つま
り、前回の県市長選挙では民進党が大敗したが、今回は得票率だけを見た場合、
国民党と民進党がほぼ同等の実力を備えたと見ることができる。さらに、今回選
挙のなかった直轄市となった県市を加えた場合、国民党と民進党の差はさらに縮
まり互角となる。

 次に、各県の得票率を見てみると、
(国=国民党、民=民進党、客=客家党、無=無所属その他)
(前回比増減に国民党は親民党、新党を含む、民進党は台連を含む)
基隆市 国55.1%(−11.9)、民42.1%(+9.1)、無2.8%
宜蘭県 民54.3%(+6.5)、国45.7%(−5.7)
桃園県 国52.2%(−8.6)、民45.7%(+7.4)、客2.1%
新竹市 国55.6%(−13.6)、民41.3%(+10.6)、無3.1%
新竹県 国38.5%(−28.6)、無31.0%、民30.6%(−2.4)
苗栗県 国63.8%(+15.9)、民33.6%(+3.7)、無2.6%
彰化県 国54.9%(−0.6)、民43.6%(+3.1)、無1.5%
南投県 国50.9%(+5.6)、民39.8%(+9.4)、無9.4%
雲林県 民65.4%(+12.0)、国34.6%(−9.9)
嘉義市 国52.2%(−2.4)、民45.7%(+0.3)、無2.1%
嘉義県 民55.9%(−6.8)、国40.7%(+3.4)、無3.4%
屏東県 民59.3%(+13.1)、国40.7%(−1.2)
花蓮県 無74.6%(当選者55.1%)、国25.4%(−41.8)
台東県 国52.6%、民47.4%(前回は無所属のみ)
澎湖県 国49.4%(−1.3)、民48.1%(−0.1)、無2.6%
金門県 国37.3%(−17.0)、無62.7%
連江県 国98.6%(国候補2人)(+45.7)、無1.4%
合計  国47.9(−4.3)、民45.3(+5.8)、無6.8%

 前回と比べて、国民党はほとんどの県で得票率を落とし、民進党は逆に伸びて
いることがわかる。民進党は前回圧勝した嘉義県でやや得票率を落としたほか、
基盤である雲林、屏東で国民党との差を広げ、宜蘭県でも6.5ポイント伸ばして逆
転した。

 また、これまで民進党の得票が伸び悩んでいた台湾北部の基隆、桃園、新竹市
でも得票率を40%台に乗せ、特に桃園は6.5ポイント差に迫った。これまで民進党
が弱かった台湾東部についても、民進党は台風被害の大きかった地区で国民党か
ら得票を奪い、5.2ポイント差に迫った。離島の澎湖は、最近国民党が推進してい
たカジノ開設に関して、その是非を問う住民投票の結果、カジノ開設反対が多数
を占めるなど国民党に逆風が吹き、民進党が1.3ポイント差まで肉薄した。

 今回の得票率の増減は、特に急速な対中傾斜、台風水害救災の不手際、米国牛
肉開放の不透明な譲歩など、馬英九総統及び国民党政権への反感が大きく影響し
ていると見られる。

 一方で、台中両岸直行便や両岸経済開放の恩恵が比較的期待される桃園や新竹
で逆に国民党票が減少しているほか、国民党が今回も強かったのは苗栗、彰化、
南投など台湾中部であることも注目したい。これらの地域は、台湾人意識が強い
農業県であるが、長年の人脈を持つ国民党地方派閥が依然強い基盤を持ち、馬政
権の失政続きに加え、馬政権が進める両岸経済協力枠組協定(ECFA)でさらに伝
統産業の失業率増加が見込まれる懸念があるにもかかわらず、地元の国民党候補
が強い実力を持っていることがわかる。これら台湾中部のいわゆる国民党本土派
(台湾派)が今後党内でどれだけ発言権を得られるかも今後の国民党の方向性に
影響してくるだろう。

 今回、民進党は得票率では躍進したが、結果的にポストは過半数に遠く及んで
いない。つまり、この程度の得票率であれば2年後に行われる立法委員(国会議
員)選挙の小選挙区も、県市長選と同じように国民党が議席の大半を占め続ける
ということが予期される。民進党が逆転するには、今回よりももっと得票を伸ば
すしかない。

 今回の選挙後、数ヶ月内に桃園県、新竹県、台中県、嘉義県、花蓮県、台東県
で7議席の立法委員補欠選挙が行われる。ここでどちらが勝ち越すかが今後の流
れを決める分水嶺となりそうだ。

 来年12月には、今回選挙が行われなかった台北市、新北市(旧台北県)、台中
市(県を合併)、台南市(県を合併)、高雄市(県を合併)の直轄市市長選挙が
実施される。この5市の人口は、今回の17県市よりも多く、今回以上に重要な選
挙と位置づけられている。国民党は台北市と台中市、民進党は台南市と高雄市で
それぞれ強い基盤があり、最も人口の多い新北市が最激戦区となることが予想さ
れる。

 国民党寄りの台湾紙「聯合報」が選挙後の12月6日に行った世論調査によると
、国民党の馬英九総統の支持率が満足33%、不満49%だったのに対し、民進党の
蔡英文主席の支持率は満足43%、不満24%で、馬総統の支持率を10ポイントも上
回った。このように、民進党の勢いは増してきており、馬政権は台湾世論を意識
して一層慎重な政権運営を迫られることになりそうだ。

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