【産経正論】戦後70年に思う 抑止強める安保法制に期待する

【産経正論】戦後70年に思う 抑止強める安保法制に期待する
【産経正論】戦後70年に思う 抑止強める安保法制に期待する

産経新聞2015.8.11

 ヴァンダービルト大学名誉教授 ジェームス・E・アワー

 米合衆国憲法では国を守り、防衛するための権限を合衆国大統領に与えている。だが、攻撃的意図をもって他国を襲う権限を与えてはいない。米国は、敵の攻撃から自国を防衛することは許されると警告しつつ、戦争放棄のパリ不戦条約に署名、批准した。国連憲章の序章と第1条は、国際紛争の平和的解決を要請しながらも、国連の最も重要な役割である集団的自衛を容認している。

 米国はこれらの規定の順守を義務づけられているが、聞き覚えがないだろうか。私には、「平和」憲法または「不戦」憲法などの誤った異名をつけられることが多い日本国憲法の第9条に非常によく似ているように聞こえるのだ。

 ≪戦略的認識に乏しい政治決断≫

 日本の最高裁は1959年、日本が日本国憲法の法的な枠内で自国を防衛することができるという事実を明確にしたが、日本が個別的な自衛権しか持たないとは言及していなかった。だが、72年、佐藤栄作内閣は、日本は個別的および集団的自衛権を有するが、集団的自衛権の行使を禁じると表明するという政治的決断を下した。

 このような政治判断は合法的ではあるが、長期的にみれば戦略的に認識が甘く危険であることが判明しているし、最も重要なのは、判断が憲法に基づくものではないということだ。

 もしも米国が日本と韓国に対し、法的には行使できるはずの集団的自衛権を日本と韓国のために行使しないと政治的に決断した、と突然通告したとしたらどうなるか考えてほしい。

 もし北朝鮮が韓国を攻撃したり、日本人乗客や石油や他の貨物を乗せた日本の商船を攻撃したり、あるいは日本海で海上自衛隊の艦船をミサイルで攻撃したとして、米国が何もしなければ日本はより安全になるのだろうか。もしも中国が東シナ海で日本の船舶を攻撃したり、南シナ海やインド洋を航行中の日本の商船や自衛隊艦船を攻撃したり、あるいはイランがホルムズ海峡に機雷を敷設したりしたらどうなるだろう。

 ≪現実的判断を下した安倍内閣≫

 米国が集団的自衛権を行使しないと決めることはあり得ないし、愚かな判断であるのだが、米議会と行政府がそのような政治的決断を下すことは合法なのだ。

 もちろん、日米の安全保障上の協力関係は63年間も良好に機能してきたのだから、米国がそのような危険で認識の甘い行動を取るとは全く思えない。

 だが、日本が72年に決断したのと同じように、米国も(日米安全保障条約に基づく日本への1年前の事前通知によって)2016年に合法的に集団的自衛権を行使しないことにすることは可能なのだ。

 北朝鮮が日本領土や日本海の船舶輸送に対する差し迫った脅威であることや、中国が東シナ海で日本に対して攻撃的な行動を取っているという事実を踏まえ、安倍晋三内閣は14年7月1日、侵略戦争を行わず、日本の存立に影響のない状況下で中東などでの米国との軍事活動に参加せず、そして、日本に正当な自衛行動に従事することを容認する、日本国憲法に違反しない合法的で(1972年当時よりも)はるかに現実的な(集団的自衛権の限定行使を容認する)閣議決定を行った。

 52年に発効した旧日米安保条約が60年、「相互協力及び安全保障条約」として改定されたとき、日本が米国の世界戦略の危険な道具の手先になるとして危機感を募らせた抗議の群衆が東京の街頭を埋め尽くしたが、そのような事態は起きなかった。

 確かに米国は60年以降、ベトナムやその他の地で戦争に従事していたが、日本は、これらの戦争が日本の安全を脅かすものでなかったため関与しなかった。

 ≪正当性欠く安保法案反対論≫

 衆院で可決され、参院に送られた安全保障関連法案の成立は、日本の自衛隊を不必要に危険に陥れるような行動を要求するものではない。

 日本領土に近い場所にソ連の弾道ミサイル搭載潜水艦やその他の攻撃戦力が存在したにもかかわらず、日本が冷戦期を通じて安全を維持できたのは、日米の海軍力が一体となった抑止力が、ソ連に太平洋での戦争の危険を冒したくないと思わせたからだった。

 日本人と米国民の大多数が日米同盟の強化を望んでおり、だからこそ、米国民や共和党と民主党の政治指導者たちは、安倍内閣による政策決定と新しい法案を支持する見解を示しているのだ。

 日本の声なき大衆も安全保障関連法案に賛成とみられるが、マスコミや学者を含む騒がしい集団が反対を唱えている。

 もちろん、民主国家では反対する自由はあるが、この法案が、日本国憲法の下で違法であるとか、国連憲章に反するものであるとか、あるいは日本にとって日米同盟を一層危険なものにするという反対意見は、私にすれば正当性を欠くものであるように思われる。

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