【正論】沖縄独立運動は中国の思う壺だ

【正論】沖縄独立運動は中国の思う壺だ

2013.6.13 産経新聞

               平和安全保障研究所理事長・西原正 

 5月8日付中国共産党機関紙、人民日報は、琉球諸島の帰属は「歴史的な懸案で未解決である」とする論文を掲載した。政府直属の研究機関、中国社会科学院の2人の研究員によるものだ。日本はこうした不見識な、悪意ある主張に真面目に取り合う必要はない。しかし、時機を合わせたように沖縄で浮上している奇妙な沖縄独立論には、中国の反応などを慎重に注視して、沖縄の安全を確保する態勢を構築すべきである。

《人民日報論文に尖閣の狙い》

 中国政府は人民日報論文には、「研究者個人の見解で、政府の立場ではない」と見え透いた「無関係」発言をしているが、学者らの政治的発言に常に敏感な中国共産党・政府が政治的計算をして認可したと考えるべきである。

 中国は日本側の反応をみて、沖縄県の一部である尖閣諸島の領有権主張に揺さぶりをかける狙いだろう。日中間の東シナ海の海底油田開発区域問題で、日本側の主張に疑義を呈する意図もあろう。習近平政権が唱える「海洋強国」樹立戦略の一環といえよう。

 中国では近年、「沖縄は明清の時代に中国の属国であったのを日本が奪い去った」との主張が次第に強まっているようである。国内の反日デモでも、「琉球諸島を奪還せよ」というプラカードがしばしば見られる。広東省深センには、「中華民族琉球特別自治区準備委員会」という組織まであって、会長はテレビやネットで「同自治区を設置せよ」と主張し、一定の支持を得始めているという。

 論文掲載から1週間後、沖縄の本土復帰の日5月15日を記念し、沖縄県では「琉球民族独立総合研究学会」なるもの(純粋な意味の学会ではなく、沖縄の独立を達成しようとする運動体)が設立された。翌16日付の人民日報系の環球時報は「中国の民衆は琉球独立運動を支持すべきだ」との社説を掲げている。中国官営メディアの素早い反応は先の「無関係」発言が虚言であったことの証しである。

《県民の独立志向は極めて低い》

 遺憾なことに、沖縄の指導者や主要メディアは中国を利する言動をしているのである。まず前述の独立学会が設立されたことを受けて、先の環球時報ばかりか、沖縄の琉球新報までが17日付の社説で強く支持する論陣を張った。「政府による過去の基地政策の理不尽、振興策の数々の失敗に照らせば、沖縄の将来像を決めるのは沖縄の人であるべきだ」と。

 第2に、沖縄選出の照屋寛徳衆院議員(社民党)が自己のブログ(4月1日付)で、「今なおウチナーンチュ(沖縄の人)は日本国民として扱われていない現実の中で、沖縄は一層日本国から独立した方が良い」と、国会議員にあるまじき無責任なことを書いた。

 第3に、沖縄県の仲井真弘多知事も中国との経済関係を推進する過程で政治問題を避け、中国を利する結果となっている。尖閣諸島を中国の一部とした中国の領海法(1992年制定)に対抗して、尖閣を行政区に持つ石垣市が2011年1月に、尖閣日本領有宣言を行う式典を催したが、仲井真知事は欠席している。しかし、直後に開かれた沖縄新華僑華人総会の設立祝賀会には出席して、祝辞を述べたという(恵隆之介『沖縄が中国になる日』13年刊)。

 沖縄県民の独立志向は極めて低い。06年の知事選では、琉球独立党(現かりゆしクラブ)党首、屋良朝助氏は6220票(得票率0・93%)しか取れずに落選している。11年11月に琉球新報が、「どのような沖縄を望むか」と問う県民の意識を調査したところ、「現行通りの日本の一地域として」が61・8%、「特別区として」が15・3%、「独立」がわずか4・7%だったとのことである。

《無責任に煽る現地「左翼」》

 沖縄の「左翼」は、県民が望まない独立を無責任に煽(あお)っているのだ。彼らは米軍基地が閉鎖され県外に移設すれば、米中武力衝突の可能性がなくなり、平和な沖縄になると主張する。だが、それこそ中国の思う壺(つぼ)である。そうなれば中国は軍事的圧力を強め、やがては沖縄を支配下に置こうとしてくるであろう。環球時報はすでに、「沖縄を日本から解放すべきだ」と言っているのである。

 沖縄の多くの人は、自県の一部である尖閣諸島をめぐる日中対立に無関心を装っている。沖縄県庁には本来なら、安全保障や軍事問題の専門家を置いて尖閣諸島や沖縄諸島の安全に関する研究をし、中央政府と協議するのが県民の安全への責任であるはずだ。

 中国は基地反対派や沖縄独立派への政治的、資金的支援などを行うであろうし、学生や大学教員の中国への招聘(しょうへい)などにより、親中派を育てようとするであろう。さらに、観光客などに交じって情報工作員も入ってくるであろう。そうした中国人たちの動静を監視する態勢を強化すべきである。

 また、在沖米軍基地に出入りする米兵への嫌がらせも、反基地グループによって行われているようだ。沖縄県警の増員と訓練も必要である。そうすることで強靱(きょうじん)な沖縄社会を作るべきである。(にしはら まさし)

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