【傳田晴久の臺灣通信】「低頭族」

【傳田晴久の臺灣通信】「低頭族」
【傳田晴久の臺灣通信】「低頭族」

 

1. はじめに

今回の台湾通信は政治がらみの話ではなく、風俗に関するものです。と言っても「風俗業」、「性風俗」とは関係ありません。えっ、つまらないですって、そんなこと仰らずに・・・・・。

日本には「暴走族」とか「社用族」と呼ばれる人々がいますが、台湾にも色々な「××族」と呼ばれる人々がいます。「上班族」と言えばサラリーマンのこと、「草莓族」(いちご族)と言うのはひ弱で傷つきやすい若者を指します。さらに「月光族」なんて言うのもいまして、これは毎月給料を使い果たしてしまう若いサラリーマンの事です。「光」は中国語で「…し尽くす」と言う意味があります。最近、「低頭族」と呼ばれる連中が取りざたされています。今回はこの「低頭族」について報告いたします。

2. 低頭族とは?

日本にもたくさんいますね。日本では何と言いましょうか。「スマホ族」とか「迷惑スマホ族」なんて言う言葉もあるそうですが・・・・・そういえば「親指族」と言うことばがありましたねぇ。iPhoneやiPadなど、いわゆるスマートデバイスを片時も離さず、歩きながら、食事をしながら、ただひたすら情報を追い求めている姿は何とも言えない滑稽さを醸し出しています。私は彼らの仕草を「ラッキョウの皮むき」と呼んでいます。

十年以上昔でしたが、仕事で香港に行った時、私は一人で、とある飯屋風の店で食事をしていましたら、近くの席にカップルが座りました。彼らはそれぞれ注文を終えると、いきなり雑誌と単行本を取り出すと足を組みながら読み始めました。料理が来ても委細構わず、本と雑誌に没頭。小一時間して私は席を立ちましたが、その間二人は一言の会話も交わしませんでした。夫婦なのか、恋人同士なのか、今では「あれは赤の他人だったかもしれない」と思うようになりました。低頭族のハシリでした。

3. 非難する人々

台湾で北京語を勉強して居る時、米国からきていたある学生が授業中に携帯電話を机の下でチラチラ見ていました。老師(女の先生)はそれを目ざとく見つけるとさっと手を伸ばして携帯電話を掴み、睨みつけながら取り上げてしまいました。先生は何も言わずに授業を継続し、終了すると携帯電話を彼の机の上に置いたまま、黙って教室を出て行かれました。この出来事に気づいたのは隣にいた私だけのようでした。授業中に「やる」のはやはりまずいですよねぇ。

「低頭族」の危険運転を防止する目的で、台湾の立法院(日本の国会に相当)の交通委員会は昨年(2012年)「道路交通管理処罰条例」(道交法)改正案を成立させ、今年の1月から施行しました。この「低頭族条例」違反者は今年1月の施行から3月末時点で計8,053人に上ると言います(内政部発表)。自動車の罰金は3,000元(約10,000円)、バイクは1,000元(3,300円)と言います。スマホや携帯を使用しながらの運転は極めて危険、自分の生命は自己責任であるからいいとしても、他人の命を奪うものですから、「低頭族」の運転は絶対に許されません。

日本では電車やバスの中での通話はかなり減ったのではないでしょうか。車掌や運転手のうるさいくらいの注意喚起が功を奏したのではないかと思いますが、台湾ではまだまだです。新幹線(高鐵)の中でも、長距離バスの中でも突然大きな呼び出し音をさせたり、馬鹿でかい声で通話をしている輩が後を絶ちません。

4. 擁護する人々

「低頭族」を擁護する意見もあります。「低頭」現象は一種の新しいコミュニケーション方式であって、科学技術発展の結果である。以前我々は電車やバスの車内でうつむいて本を読んでいたではないか。現在の人々がうつむいて見ているのは携帯電話であり、スマホである。科学技術の進歩が我々に対してより多くの選択の自由を与えてくれているのである。我々はこの自由の機会を大切にすべきであって、制限しようなどと考えるべきではありません。また或る教師は「現実の世界が面白ければ、人は自然と頭をもたげるものである」と述べています。

5. 新抬頭運動
ちょうど1年前の自由時報(2012年7月22日)に「新抬頭運動」という記事が載っていました。ネットの世界で活躍している蔡阿嘎と言う人が「新抬頭運動」を呼び掛け、ネットの世界で議論を引き起こしていると言います。

彼は「2年前まではスマートフォンを持っている人は極めて稀な動物であったが、今日では台湾には既に5,300,000人の低頭族がいると推計でき、「低頭」現象はまさに現代人の生活に入り込んでいる。小さな画面に新しい世界を見ることが出来るが、あなたの心の世界に入り込んではいない。少しの間頭を持ち上げようではないか。画面と呼び出し音に邪魔されないひと時を過ごそうではないか」と呼びかけています。

そしてまた、「会食の時、携帯電話は1か所に集めよう。もう十分だ、食事をする時はキーを押すのを止めよう、写真を撮るのは止めよう、フェースブックは止めよう。頭を上げて、私を見て、見て。」と呼びかけています。

6. 日本で見た事

日本ではどうだろうかと思い、先月一時帰国した時にいろいろ様子を調べてみました。

ワークサンプリング(瞬間観測法)の要領で、7人掛けのベンチに座っている乗客の何人がスマホや携帯電話を見ているか、何人が本を見ているか、何人が寝ているか、何人がそれ以外の事をしているか、記録してみました。

合計55回観測したうち、「低頭族」が一人もいなかった(7人は寝ていたか、本を読んでいたか、おしゃべりなどをしていた)のは11回、即ち20%であり、のこり80%(44回)は誰かが「低頭族」であったと言うこと。では7人のうち何人が「低頭族」であったかを見ると、2人が一番多く25%、1人、3人がそれぞれ18%、4人は16%であり、5人は2%、6人7人すなわち全員が低頭族であると言うのはなかった。おおざっぱに言えば、今回の観測では7人中2、3人は低頭族であったと言うことです。

台湾の場合、何時も全員が低頭族であると言うことではありますまい。日本の場合は55回の観測で、7人のうちの5人以上が低頭族であった確率は極めて小さかったと言うことになります。なお、これは余り混まない日中の観測であって、上記の数値には統計的な意味はなく、まぁ、ちょっと面白い傾向が見える程度の数値です。

7. おわりに

「低頭族」は長時間スマートデバイスを手元に置き、うつむいて画面を注視し、指を動かし、ゲームをしたり、インターネットを楽しんでいる。姿勢の悪さから色々な病気(低頭族症候群)を心配したり、人対人の口頭によるコミュニケーションの希薄化を予見したり、未成年者がインターネット犯罪に巻き込まれるのを恐れたり、社会的に諸問題が懸念され始めています。

思うに、個人の責任において「低頭族」になり、色々な問題に巻き込まれるのは個人の勝手でしょうが、自動車(バイク)事故などを引き起こし、他人に危害を及ぼすのは願い下げです。

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