【傳田晴久の台湾通信】「台湾語は消滅危機言語?!」

【傳田晴久の台湾通信】「台湾語は消滅危機言語?!」
【傳田晴久の台湾通信】「台湾語は消滅危機言語?!」

             傳田晴久

1. はじめに

時々引用させていただく「台湾の声」に「国連発表、台湾語が消滅危機?!」というショッキングなタイトルの動画が紹介されました。世界には消滅の危機に瀕している言語が数多くあるとは聞いていましたが、まさか台湾語もそれに類するとは知りませんでした。今回の台湾通信は、YouTube「KAKEIの台湾ビジネス」(2021年4月5日)林佳慶氏の動画を紹介し、「言語の消滅」について考えてみたいと思います。

2. 林佳慶さんの動画

「まだ台湾のことをあまり知らない方は、台湾人は全員台湾語を話すと思っている方が多いと思います。台湾の人々は全員が台湾語を話せるわけではないんですよとお答えすると、皆さんびっくりされます。そりゃそうですよね。日本だと日本人が全員日本語を話します。当然台湾もそうだと思いますよね。台湾語を話せる人が少なくなっているのは台湾の歴史背景とも関係があります。簡単に話すと日本統治時代が終わり、中国から来た国民党が台湾を統治するようになった1946年、中国から来た行政長官陳儀が国語政策を打ち出し、日本語、台湾語、客家後、原住民族の言語をすべて使用禁止と制定しました。」

ここでいう「台湾語」とは、「台語、福佬語/河洛語(ホーローご)
、台湾閩南語(たいわんびんなんご)とも言い、台湾人口の74.5%以上を話者とする言語」(ウィキペディア)です。現在の台湾の人口は約2350万人と言いますから、台湾語の話者は約1750万人ということになります。

3. 国民党政府の国語政策

「それから10年後の1956年には学校で台湾語の使用を禁止し、学校には台湾語を話す学生を取り締まる委員会も作り、学生同士がお互いを監視するというシステム、もし台湾語を話しているのが見つかったら台湾元一元の罰金を払わないといけないのです。当時の台湾元一元の価値は、台湾元二元でうどん一杯買えてしまうということ、子供にとっては大金でした。また台湾語を話したら、罰金だけでは収まらず、罰金+私は台湾語を話しましたという札を首からかけて校庭で蛙飛びの罰、もしくは外で立たされ、手の平を叩かれたりしました。このようなことをすることによって、台湾語は話してはいけない言葉、レベルが低い言葉と知り、そのような意識を植えつけられていったのです。」

この相互監視制度、体罰・罰金付きの制度、罪状を書いた札を首にかけるやり方、某国の典型的やり方に戦慄を覚えます。そしてこのようなやり方で、母語を貶めることを現在もどこかの地域で実施しているのでしょうか。

4. 台湾語禁止政策の結果

「この国語政策は1988年の戒厳令が解ける迄続き、1993年に李登輝総統が小・中学校の授業として台湾語を始めとした母語教育を選べるようにしましたが、国語政策(台湾人から母語を奪う行為)が行われた40年間、台湾語は粗末な言葉、場合によっては下品な言葉というイメージがついてしまい、私と同じ年齢層で台湾語を流暢に話せる台湾人はとても少なくなっています。2020年の台湾教育部(日本の文科省に相当する政府機関)の統計によると1986年から1994年に生まれた台湾人で、台湾語が話せるのはわずか22.3%、台湾で台湾語や客家語を使用する層はほぼ60歳以上の台湾人のみ、それ以外の層はほぼ北京語で会話をするという結果、また12歳以下の子供がいる家庭で台湾語をはじめとした母語で話す比率は16.61%でした。この統計からみて、国民党が台湾人の言葉をここまで消滅させた国語政策が40年でなくもっと長く続いていたら、この世からすでに台湾語はなくなっていたかもしれません。UNESCO(国連の教育科学文化機関)は、台湾語も今後消滅の危機に瀕する言語、レベル3の危険水準に2021年になったと、台湾のテレビ華視が報道しました。」

ユネスコでは消滅の危機にある言語・方言の程度を、以下の6段階で示しています。
(1)安全 すべての世代によってその言語が話されている状態
(2)脆弱(ぜいじゃく) ほとんどの子供たちが話しているが、特定の場所(家庭など)に限って使われている状態
(3)危険 子供が家庭でもはや母語として習得しない状態
(4)重大な危険 祖父母以上の世代によって話されており、親世代では理解されるものの会話で使用されておらず、親子や子供同士でも話されていない状態
(5)極めて深刻 祖父母の世代でさえ部分的に、また、まれにしか話されない状態
(6)消滅 その言語を話す人がいない状態

台湾語はこの(3)危険段階、子供が家庭で母語として習得しない状態にあるというのです。

5. 言語消滅ということは・・・・

「母語が消滅するのはとても深刻なことですが、北京語の方が世界で話す人が多いからマイナーな台湾語を覚えるよりもメジャーな北京語を最初から母国語として覚えた方がお得と思う人がいるかもしれません。実際どうでしょうか、台湾語文教基金会執行長の陳豊恵氏はもしこの言語が消滅したら『これはこの民族の文化も一緒に消えることを意味する。演劇も詩を書くことも創作することもこの民族の魂そのものが消えてしまう、これはとても悲しい事である。』そう話しました。この話を聞いても想像しづらいかと思います。皆さん想像してみてください。日本語の使用を禁止され、すべて英語で話さないといけないとします。日本語でしか伝わらない表現、例えばわびさび、おもてなし、これと似たような英語の訳語はできるかもしれませんが、日本語の表現のように正確に表現する訳語はないと思います。言葉は文化とは切り離せない存在、言葉を亡くすというのは文化を亡くすと同等なのです。」

若い頃、英会話のレッスンを受けたことがありました。もちろんものにはなりませんでしたが、その時の講師は日本の大学に留学中の米国人でしたが、ある時「日本の『わびさび』について説明しろ」との指示がありました。お得意(?!)の日本語で説明することも難しい「わびさび」の概念説明を英語で・・・・、受講生四苦八苦の後、先生は確かpoliteだったかpolitelyだったか、一言で説明しました。その時の講師は、確かハーバード大学の学生だったと思いますが、日本文化を勉強中だったのでしょう。我々受講生はただ呆れ、ニヤニヤしていたものでした。

6. 台湾政府の対策

「台湾で台湾語を話せる人口がどんどん減っており、1986年から1994年に生まれた台湾人(27~35歳)で台湾語が話せるのは、わずか22.3%ということでした。但しまだ台湾語が消滅したわけではありません。台湾政府も母語の保護と発展に力を入れおり、2018年12月25日台湾の国会にあたる立法院は国家言語発展法案(台湾におけるすべての母語の伝承、復興、発展を保証する法律)を可決。そして翌年2019年7月に台湾の公共テレビ台湾語チャンネルが開設、台湾の蔡英文総統もこう話しています。『台湾語は私たちの生活の言語』『美しい言語である』『ただし若い人を中心に台湾語を話す人が少なくなっている』『公共テレビ台湾語チャンネルの設立によって台湾語文化の推進をさらに発展させ我々の子供たちがテレビを見ながら台湾語が学べる』。まだ台湾語教育が台湾で浸透するのに時間がかかりそうですが、希望を捨てない限り、手遅れではありません。」

7. 日本人への呼びかけ

そして林佳慶さんは、「日本の皆様、もし身の回りに台湾の友達がいたらぜひこう聞いてみてください。『台湾語話せますか?』もし話せないと言ったら、『よかったら一緒に勉強しませんか?』とお声がけしてください。もしかしたら皆さんが台湾人の文化と言語を守るそんな大きな存在になってくれるかもしれません。」と呼びかけました。

8. おわりに

台湾語が消滅危機言語であることを初めて知りましたが、台湾にはよりマイナーな言語、すなわち原住民の言語がありますし、色々調べましたら、わが日本にも消滅危機言語があることが分かりました。そして、我々は消滅危機言語に関心を持つべきことを学びました。台湾通信次号では、それらについていろいろ調べてみたいと思います。


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