2002年に『パーク・ライフ』という作品で芥川賞を受賞した吉田修一(よしだ・しゅういち)氏は、2012年11月に文藝春秋から『道(ルウ)』という小説を上梓した。
ヤシが生い茂る細い道を自転車に乗った青年らしき人物がこちらに向かってくる写真を使ったカバー装丁を見て、日本人のデザイナーがイメージする台湾というのはこんな感じなのかと思ったことを覚えている。
フィクションといいながら、章扉の裏ページに産経新聞の台湾新幹線(台湾高速鉄道)に関する記事を掲載していることになんとなく違和感と親近感を覚えながらも、台湾新幹線プロジェクトの始まりから終りまでの8年間に織りなされた男女の恋愛や男同士の友情などを描いていた。
台湾をテーマにした日本人作家の作品はそれまでほとんどなく、日本李登輝友の会の会員にも台湾新幹線に関わったJR東海の技術畑出身の方がいたので、発売されるとすぐに目を通した。
このたび、この小説『路(ルウ)』がテレビドラマとなって、日本と台湾で同時に放送されるという。それも、制作も日台共同だという。
そこで、本棚から探し出してパラパラと繰っていたら、マーカーを引いた箇所が目に留まった。新幹線が開通した最後の章「2007年 春節」のところで、「台湾の人が日本を思う気持ちに比べると、日本人が台湾のこと(台湾と中国のこと)を知ろうとする気持ちは、あまりにもお粗末としかいいようがない」とあった。
当時、このフレーズに心を動かされてマーカーを引いたのだろうが、今でもその思いは変わらない。作者がきちんと台湾に取り組んでいる姿勢が行間から読み取れる、とても後味のよい作品だった。
全3回の放送予定で、初回は5月16日(土)総合・BS4Kで夜9時(21時)から。有難いことに再放送もある。初回の再放送は5月21日(木)総合で午前0時15分(水曜深夜)から。詳しくはNHKのホームページをご覧いただきたい。
◆NHK:日台共同制作ドラマ「路〜台湾エクスプレス」 https://www.nhk.or.jp/drama/dodra/ruu/index.html
—————————————————————————————–共同制作ドラマ「路」、台湾と日本で同日に放送開始 16日から【中央通信社:2020年5月8日】https://japan.cna.com.tw/news/aart/202005080008.aspx写真:ドラマ「路〜台湾エクスプレス〜」の劇中写真。右は主演の波瑠=公共テレビ提供
(台北中央社)台湾の公共テレビ(公視)と日本放送協会(NHK)が共同制作したドラマ「路〜台湾エクスプレス〜」が16日から、日台で放送開始される。同作は吉田修一の小説を原作とし、台湾高速鉄道(高鉄、新幹線)の建設プロジェクトを背景に日本人と台湾人の心の絆を描いた作品で、台湾各地で撮影が行われた。
主演は波瑠(はる)。波瑠は新幹線建設チームの一員として台湾に赴任した日本の商社社員、春香を演じる。相手役で、春香が大学時代に初めて台湾を訪れた際に出会った思い出の台湾人男性エリックを演じるのは、人気アイドルグループ「フェイルンハイ」(飛輪海)出身のアーロン(炎亞綸)。このほか、日本からは井浦新、寺脇康文、高橋長英、台湾からはシャオ・ユーウェイ(邵雨薇)、ヤン・リエ(楊烈)、リン・メイシュウ(林美秀)らが出演する。NHKの松浦善之助が演出を、大河ドラマ「篤姫」の脚本を手掛けた田渕久美子が脚本を担当する。音楽を手掛けるのはピアニストの清塚信也。
16日から、日本ではNHK総合などで毎週土曜午後9時、台湾では公視で毎週土曜午後9時(日本時間同午後10時)に放送される。全3回。
台湾では放送終了後、動画配信サービス「CATCHPLAY+」や「LINE TV」で当日中に配信開始されるほか、全話終了後には「MOD」や「myVideo」でも配信される。
(王心?/編集:名切千絵)
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