2・28事件−歴史の改竄(ざん)を許してはならない [台北 迫田 勝敏]

2・28事件−歴史の改竄(ざん)を許してはならない [台北 迫田 勝敏]
虚言に基づく「記録映画」の製作を命じた台北市の最高責任者は馬英九氏

【緊急リポート】
歴史の改竄(ざん)を許してはならない−国民党による228事件改竄の動き

                              迫田勝敏(台北在住)

[1月3日付「台湾の声」より転載]

台湾の歴史が曲げられようとしている!

 2・28事件から60周年になる今年、事件を改竄(かいざん)する問題映画が完成した。映
画は、事件の発端をつくったタバコ売りの女性、故林江邁さんを描き、フィクションで
なく、「記録映画」と銘打っている。

 問題は事件の発端だ。台湾の公式記録では、1947年2月27日の夕刻、林さんが台北市内
の天馬茶房前の路上で闇タバコの取り締まりに遭い、タバコを没収され、殴打されたこと
が発端だが、「記録映画」では蒋介石軍の兵隊が林さんの娘、林明珠さんからタバコを買
おうとし、中国語が分からない娘さんが、略奪と誤解したことが発端としている。

 公式記録は事件の当事者は林江邁さんと専売局の取締係員としているのが、映画では娘
さんと兵隊になり、衝突の原因も取締りの係員の殴打だったのが、映画は言葉が通じなか
ったための誤解とする。つまり、暴動の原因は暴力でなく、誤解だったというのだ。

 誤解で暴動になったとしても、その後の2万人とも3万人ともいわれる大量虐殺は正当
化できるものではないが、善意の兵隊と被害者意識の強い台湾人という構図となると、事
件の悪辣さが減殺される。これは明らかに蒋介石側の罪を軽くする歴史の改竄だ。

 しかも問題は、この改竄が、事件の現場にいたと称する娘の林明珠さんの「証言」で行
われていることだ。事実なら歴史的証言だが、林明珠さんはいままでなんども事件につい
て語ってきたが、現場にいたことも、兵隊のことも一言も話していない。なぜ、今になっ
てこれまでの証言を覆し、そんなことを言い出したのか。

 新年早々(1月2日)に阮美[女朱](げん みす)さんが、民進党の田秋菫立法委員た
ちの支援で反論の記者会見をした。

 阮さんは父親が2・28事件で拉致され、殺された。ご夫君の強力で私財を投じて、父親の
行方を探し、80歳になる昨年まで事件の全貌解明を続けてきた人だ。その詳細は「台湾、
二二八の真実、消えた父を探して」などの著書に詳しいが、凄まじい執念には敬服するば
かりだ。

 その阮さんによると、林明珠さんの「証言」はすべて嘘。現場に兵隊はいなかったし、
林明珠さん自身、2001年に阮さんが取材した時に、自分はその場にいなかったと話してお
り、その証言テープは記者会見でも披露された。娘さんの兄もその証言に立ち会っており
、ビデオも会見で放映された。

 実際、現場証人はまだ何人も健在だ。筆者自身もその一人の話を聞いたことがあるが、
専売局の係員がタバコを没収し、それを取り戻そうと係員の足に抱きついた林さんを銃床
で叩いて怪我をさせたと聞いている。現場証人の話は当然ながら似たような話になってい
る。それがまぎれもない史実なのだ。

 では、なぜ歴史改竄の映画を作ったのか? 実は「記録映画」を作ったのは台北市だ。
つまり製作を命じた最高責任者は馬英九市長ということになる。文化局は昨春、製作を民
間(製作者・楊渡)に委託し、製作の過程で文化局も楊渡氏も阮さんに話を聞きに来るこ
とはなかったという。林明珠さんの「証言」、いや「虚言」だけで製作した。というより
最初にストーリーがあってそれに合った「証言」を林明珠さんがしたということも考えら
れる。

 しかもこの記録映画をVCDにして発売する予定で、市内の小中学校には貸し出しもす
るという。つまり、台北の小中学生の歴史教育の教材である。しかも虚言で改竄し、2・28
事件は悲惨な事件だが、蒋介石軍は悪くはなかった、台湾人の誤解が原因だったと教え込
もうというわけだ。これでは蒋介石時代の反日歴史教育、中国の江沢民時代の反日歴史教
育と同じ手法ではないか。

 もし、そんな2・28事件像が出来上がるとどんなことが起きるのだろうか。少なくとも事
件を一つの史実として蒋介石政権、国民党・外省人批判をし、独立志向を強めてきたグリ
ーン陣営の主張が弱められることになろう。相対的にブルー陣営の意気が上がる。

 田立法委員は「馬英九の『企図脱罪』(罪を逃れる企み)だ」とし、「馬英九は事件の遺
族に対して謝罪せよ」と求めている。昨年、私設記念館を閉じ、事件調査はもう止めると
一時は宣言した阮さんも嘘は許せないとさらに追及していく構えだ。3日の自由時報は会
見の模様を半ページ使って報道し、一部テレビも阮さんのインタビューを放映するなどよ
うやく動きが出てきた。

 しかし聨合報、中国時報などは一言も報道しないし、報道しても「記録映画」を否定し
、放映禁止にし、回収しなければ何の意味もない。台北市文化局の仕事だから市議会で責
任追及し、当時の最高責任者であった馬英九の責任追及もできるはずだ。そこまでやれる
かどうかは世論の支持があるかどうかにかかっている。

 馬英九市長は昨年末、任期満了で国民党主席に専念し、来年の総統選に向け動き出した
。馬英九の置き土産、「記録映画」は小中学校での放映が始まれば、来年の総統選だけで
なく、将来の台湾の行方にも影響するのである。(2007・1・3)

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