WHOが台湾加盟案を拒否、台湾は友好国を通じて加盟求める

世界保健機関(WHO)が4月11日に送付した台湾の正式加盟申請を却下する方針だ
という。その理由は、台湾が主権国家ではないからだそうだ。

 そうだとすれば、何とも面妖な話だ。

 第一に、この主権国家論は、台湾を中国の一部として加盟に反対してきた中国の主張
そのものだからだ。

 中国は今回の正式加盟申請について「WHOは主権を持つ国しか入れない国連専門機
関だ。その規定に基づいて、台湾は中国の一部分として、加盟メンバーの資格でそれに
加盟することは出来ず、また、オブザーバーとしてWHO会議に参加することも出来な
い」とのコメントを発表し、さらに「大陸側はこれまで一貫して、台湾同胞の衛生や保
健の維持、両岸の医療衛生分野の交流と協力を高度に重視している」と付言している。
いったい、これまで中国は台湾の医療衛生分野で何をしたというのだろう。

 第二に、WHOには194の国家と地域が加盟・準加盟し(2006年5月現在:外務省)、
この中には、ニュージーランドの北東2,400キロに位置する人口1,591人の「ニウエ」、
同じくニュージーランドの北東約3,000キロに位置し15の島々より成る人口13,572人の「ク
ック諸島」(いずれも外務省ホームページより)、そして北朝鮮など、日本政府が国家
として承認していないや国や地域も含まれているからだ。

 これらの地域や国家は確かに理論的には主権国家なのだろうが、人口2300万人の台湾
が加盟国になれなくて、1,591人の国が加盟国というのは、防疫面から考えてなんとも理
解しがたい話だ。

 さらに、WHOの最高意思決定機関で、全加盟国によって構成し、毎年1回開催され
る世界保健総会(WHA:World Health Assembly)にはパレスチナ自治政府や国際赤十字
など、主権国家ではない自治政府や国際機関さえオブザーバーとして参加しているので
ある。ましてやWHOは「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(憲
章第1条)を目的に掲げているのである。台湾に住む2300万人の人々は「すべての人々」
に入らないとでも言うのであろうか。

 これは誰が考えても、明確な人権問題である。WHOは建前論から脱して、台湾人の
人権を守るための措置を早急に講ずるべきである。また、これまで台湾のWHO年次総
会へのオブザーバー参加を支持してきた日米も、より積極的な対応をとるべきである。
       
                  (メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原正敬)


【4月27日 台湾週報】

 4月11日に陳水扁総統が世界保健機関(WHO)の陳馮富珍(マーガレット・チャン)
事務局長に「台湾」名義でのWHO正式加盟を申請する書簡を送ったことについて、W
HOは4月25日、WHO法律顧問が国連決議案およびWHO憲章等関連法的文書を検討
後、「台湾は主権国家ではく、WHOの加盟国となる資格はない」として、この法的見
解を台湾に通知し、台湾の申請を却下する方針を示した。

 WHOスポークスマンは、「WHOのルールに基づいて、台湾の申請は『議題とせず
(Non-issue)』とした」として、今後何も処理する必要性がないことを強調した。一方
で、台湾のWHO加盟申請案が5月に開かれるWHO年次総会の議題になるかどうかに
ついては、「加盟国が決定することで事務局は決める立場にない」と表明した。

 台湾の外交部は4月26日、まだWHOからの関連文書は受け取っていないことを明ら
かにし、葉菲比・外交部スポークスマン代理は、「中華民国・台湾は主権が独立した国
家であり、過去10年台湾はWHO年次総会にオブザーバー参加を申請してきた。今回は
はじめて台湾名義でWHOに正式加盟を申請した。外交部は今後も台湾の訴えを全世界
の友邦に向けて説明を続けてゆく」と強調した。

 また、黄志芳・外交部長は、「今回台湾が推進している正式加盟案の意義は、国家全
体の意志を示すところにある。米国の立場は、台湾が有意義に参加することは支持して
いる。日本やEUの立場も米国とほぼ同じといえる。台湾はそれでも努力を続けて(正
式加盟への)支持を求める」と述べ、「台湾WHO加盟の問題は主に政治問題であり、
法的問題については台湾の立場が完全に通用しないわけではない。東ドイツがWHOに
加盟した例があるように、台湾はWHOのカヤの外に置かれるべきではない」と強調し、
友好国を通じてWHO年次総会で台湾加盟問題を議題に上げる活動を展開する方針を示
した。



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