独立建国聯盟主席への各界からの追悼の言葉を編纂して『黄昭堂追思文集』(台湾独立建
国聯盟編纂、前衛出版社刊)が刊行され、その劈頭に掲載された李登輝元総統の追悼文
「黄昭堂永遠站在台湾国」(黄昭堂は永遠に台湾国の側に立つ)の邦訳をご紹介した。
昨年12月20日、昭和大学・上條講堂において催された「黄昭堂先生お別れの会」には安
倍晋三・元首相も参列して弔辞を述べられた。安倍元首相はその弔辞に「黄昭堂先生に誓
う」と題し、この『黄昭堂追思文集』に寄稿されている。下記にご紹介したい。
安倍元首相は、黄昭堂先生の遺影の前で「今後、台湾の人たちが世界の孤児ではなく、
世界の国々から全体として権利を勝ち取ることができるように全力を尽くして参ります」
と誓っている。台湾の国際機関への加盟を促進するとも受け取られる烈々たる弔辞だ。
黄昭堂先生に誓う
元首相・衆議院議員 安倍 晋三
黄昭堂先生のご遺徳を偲び、心からご冥福をお祈り申し上げます。
2012年は世界各地で選挙が行われる年です。中国においては胡錦濤主席から習金平主席
に替わります。一方、台湾でも総統選挙が行われ、中国国民党の馬英九主席が勝つのか民
進党の蔡英文主席が勝つのか分かりませんが、台湾の国民が選ぶことは明らかです。それ
は、台湾の国民の誇りとするところであろうし、その誇りを勝ち取るために生涯を懸けて
戦われてきたのが黄昭堂先生だったのではないでしょうか。
しかし、命半ばで亡くなられた黄昭堂先生にとって、台湾の真の独立を勝ち取ることこ
そ台湾の人々にとって誇りある国民となることではなかったかと拝察しています。ですか
ら、選挙を待たずしてこの世を去るというのは大変残念だったのではないかと思います。
黄先生が人生の大半を擲って台湾のために尽くされた功績を台湾の人々が忘れることは
ないだろうと思いますし、また、勉学の地として、台湾の独立運動を始められた地である
この日本で交わった多くの友人の方々、そして日本人は先生の生涯を決して忘れることは
ないだろうと思います。
先生のご功績により台湾は変化しました。事実、選挙によって総統を選び勝ち取るとい
うのは、自由と民主主義を価値観とする国々にとっては極めて重要なことで、台湾の総統
選挙の結果に対して我が国も選挙結果を尊重するメッセージを出すべきだろうと思いま
す。
今年9月に台湾を訪問した際に、黄昭堂先生には大変温かく迎えていただきました。その
ときのことを今でもよく思い出すのですが、まさかこれほど早く先生とお別れするとは思
いもよりませんでした。
私は先生の友人として、また台湾の友人として、今後、台湾の人たちが世界の孤児では
なく、世界の国々から全体として権利を勝ち取ることができるように全力を尽くして参り
ますことをお誓いしてお別れの言葉といたします。どうぞ安らかにお眠りください。
【「黄昭堂先生お別れの会」における弔辞より】