元産経新聞記者で帝京大学教授の高山正之氏は、週刊新潮に「変見自在」とい
う辛口コラムを連載している。台湾のことにも舌鋒鋭く触れることがあり、5月
26日号(5月12日発売)の151回目でも、産経新聞を潰そうとしたフジサンケイグ
ループの鹿内信隆氏を枕に、台湾の戦後史の真相をみごとに剔抉されている。
鹿内氏が産経新聞の社長時代に朝日の毛沢東べったりの記事を書くのに対して
、ならばと『蒋介石秘録』を産経に連載し、反共の雄に祀り上げたことが真相を
誤解させ、日本人に「一つの中国」という印象を与えたが、それは間違いだとす
る内容だ。
「誤解のもとはカイロ宣言だ。……台湾は米国がズルして盗ったハワイとは違う。
見え透いた嘘だからカイロ宣言にはルーズベルトもチャーチルもサインしていな
い。
日本は条約上『台湾を放棄』はしているが、それを中国に譲るなどとは言って
いない」
そこに蒋介石が逃げ込んできたと指摘し「形から言えばパリ陥落で逃げ出した
ドゴールが英国に拠って亡命政権を作ったのと同じになる」と的確に喩え、また
、2・28事件のことも「ドゴールの例で言えば亡命先の英国でクーデターを起
こし、チャーチル以下を皆殺しにして英国を乗っ取ったと考えればいい」と、こ
れまた分かりやすい。
228紀念館に展示されている遺書が日本語で書かれたものもあることも紹介
しつつ、その台湾住民の前に李登輝氏が現れ、「彼らは今、李登輝氏に触発され
立ち上がる機会を掴んだ。『蒋介石の台湾』の陰から本来の島の主人が顔を覗か
せたのだ」と、蒋介石時代に決別した台湾を紹介する。
最後に、連戦の訪中に触れ、連戦が「中国人は手を結ぼう」と強調し、胡錦濤
が合意したのは「彼らも台湾が『中国人の島』でないことを知っているからだ」
と指摘、「鹿内が搗き北京と朝日が捏ねし『一つの中国』も、やっとひび割れて
きた」と結ばれている。
『蒋介石秘録』が連載された背景について初めて知ったが、短いながら戦後台
湾史の実相を伝えるる佳品だ。
なお、林建良氏(世界台湾同郷会副会長、本会常務理事)によれば、中学生の
ときに強制的に『蒋介石秘録』を読まされたという。独裁者に都合のよい内容だ
ったことが、この一事に表れている。 (編集部)
高山正之氏が戦後台湾の実態を剔抉
週刊新潮の連載で『蒋介石秘録』の背景と「一つの中国」の嘘を指摘