が拿捕(だほ)し、26日、乗組員らは600万円の担保金を支払って釈放された。
台湾の馬英九政権は25日午後、総統府で国家安全高層会議を開いた際、馬総統は「島の定義に当
てはまるのか、それに基づく200カイリの排他的経済水域を主張できるのか、国際間で極めて大き
な争議があると指摘」(4月26日付「台湾週報」)するに留まり、外交部も「日本が沖ノ鳥『島』
から200海里の排他的経済水域を主張できるかどうかについては、国際社会でいまだ議論がある問
題だとし、この立場はこれまでにも、日本側に何度も伝えている」(4月25日付「台湾国際放
送」)という説明だった。
ところが、27日正午に招集した国家安全上層部会議では、馬氏の主張は一転して沖ノ鳥島を岩だ
と明言、「日本が島嶼と主張しているいわゆる『沖ノ鳥島』は『島』ではなく『岩礁』であり、三
坪ほどの大きさは『人間の居住に適し、独自な経済的な生活を送れる』という島嶼の条件を満たし
ておらず、沿岸から200カイリの排他的経済水域、そして大陸棚の主張も認められない」(4月27日
付「台湾国際放送」)と主張したという。これは、中国と韓国の主張と同じだ。
馬氏は、前日の26日に子飼いの張善政・行政院長に「絶対に岩で、島ではない。経済水域はな
い」と主張させ、それを踏まえるように27日の国家安全上層部会議を招集したようだ。
馬氏は総統を退任するまで「なにかやらかすだろう」というのが衆目の一致した見方だった。案
の定、総統選挙のさなかの昨年11月7日には、突如、シンガポールで中国の習近平国家主席と会談
し、「92年コンセンサス」の堅持を提案して、台湾に「一つの中国」という負の遺産を背負わせ
た。
3月29日には、蒋介石氏や蒋経国氏が崇拝するに値する人物であるかはさらなる議論が必要だと
指摘する声を無視して、総統府3階の大ホールの名称を蒋経国に由来する「経国庁」と命名してい
る。これも、台湾内部に向けた負の遺産と言える。
そして今度は、沖ノ鳥島を問題化し、蔡英文・次期政権に負の遺産を背負わせたと言えよう。蔡
英文氏が日本重視策をとることを表明していることに対抗し、沖ノ鳥島を問題化することで日台離
間策を狙ったとも言える。その一方で、中国と韓国にすり寄ったとも言え、総統退任後を考えての
主張の転換だろう。
朝日新聞も「5月20日の退任を前に日本や対日重視を掲げる次期政権を牽制(けんせい)する狙
いと見られる」と指摘している。下記にその記事を紹介したい。
台湾総統、沖ノ鳥島「岩」と主張 次期政権を牽制か
【朝日新聞:2016年4月28日】
http://www.asahi.com/articles/ASJ4W5GNKJ4WUHBI02F.html
台湾の馬英九(マーインチウ)総統は27日、安全保障担当の高官会議を開き、日本最南端の沖ノ
鳥島について「島ではなく岩礁」とし、日本は排他的経済水域(EEZ)を設定できないと主張し
た。馬氏はこの海域で操業する台湾漁民の保護を指示。5月20日の退任を前に日本や対日重視を掲
げる次期政権を牽制(けんせい)する狙いと見られる。
EEZには沿岸国に天然資源開発の権利があり、沿岸から200カイリ(約370キロ)内に設けられ
るが、岩には設定できない。沖ノ鳥島については中国や韓国が「岩」と主張。台湾の外交部は
「(島か岩か)国際法上の地位について争いがある」としていたが、岩だとの明言は避けていた。
外交部は沖ノ鳥島周辺に日本がEEZを設定できるかどうかには議論があるとしつつ、2014年に
は日本の取り締まりによるトラブルを避けるためとして、この海域での操業を控えるよう漁民に働
きかけていた。だが、この海域で操業した台湾漁船の船長が25日、海上保安庁に無許可操業の疑い
で逮捕され、漁民らの間で反発が広がった。
船長は担保金を払って釈放されたが、張善政(チャンシャンチョン)・行政院長(首相)は26
日、「畳3枚分の大きさ。どうやったら島と言えるのか」などと言及。馬氏は会議で、公文書では
「沖ノ鳥島」という言葉を使わずに「沖ノ鳥礁」と表記するよう指示した。海岸巡防署(海上保安
庁に相当)などに漁民保護のための具体策立案も求めた。野党・民進党主席の蔡英文(ツァイイン
ウェン)・次期総統の就任後も簡単に変更できないようにする思惑がありそうだ。
27日は、台北市にある日本の対台窓口機関、交流協会の事務所前で漁民らが与野党の立法委員
(国会議員)らと日本への抗議活動を展開。建物に向かって生卵を投げる一幕もあった。
(台北=鵜飼啓)