台湾の頼清徳・総統は11月30日から、台湾と一貫して外交関係を有している大洋州のツバル、マーシャル諸島共和国、パラグアイ共和国を歴訪し、その途次にトランジットで立ち寄ったハワイやグアムで米国議員と電話やオンラインで会談、12月6日に帰台した。
頼総統は最終日の12月6日、パラオで外遊に同行しているメディアとの茶話会の際、中国を名指しして「拳を振り上げるよりも、両手を広げるべきだ。
何度も軍事演習を行い、軍艦、戦闘機によって周辺国を脅迫しても、いかなる国家からも尊敬を得られることはない」と中国を牽制するとともに「中国はルールに基づく国際秩序に則り、共に地域の平和、発展に尽力するべきだ。
これこそが中国が歩む道」だと指し示した。
頼総統は5月20日の総統就任式で「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属していない」と述べた。
中国を「中華人民共和国」と表現したのは、1992年以来、頼氏が初めてのことだった。
さらに、10月10日の双十国慶節祝賀大会における演説でも「中華民国はすでに台湾、澎湖、金門、馬祖に根を下ろしており、中華人民共和国とは互いに隷属していません」と強調した。
この外遊ではさらに一歩踏み込んで「中国が歩む道」を指し示した。
この強気とも思える発言の背景に、安倍晋三総理が2016年8月28日にケニアのアフリカ開発会議において提示した「自由で開かれたインド太平洋」構想があるようだ。
安倍総理のこの構想は、まず米国のトランプ政権が戦略として取り込み、英国やオーストラリア、G7やEUなども賛同した。
また、そこから菅義偉総理が2021年4月のバイデン大統領との日米首脳会談で導き出したのが「台湾海峡の平和と安定の重要性」で、岸田文雄総理によって2023年5月の広島サミットで「国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する」と補強された。
頼総統はこの認識について、総統就任式の演説で「国際間にはすでに、台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素であるという高度なコンセンサスがあります」と位置づけている。
この高度なコンセンサスが台湾を押し上げたというのが頼総統の理解であり、何度も「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属していない」と述べ、さらには「中国が歩む道」をも指し示すという強気とも思える発言のバックボーンになっているようだ。
頼総統の外遊直前の11月25日と26日にイタリアのフィウッジ・アナーニでG7外相会合が開催され、26日に採択された「声明」でも、これまでのG7と同じく「我々は、 南シナ海における中国の軍事化、威圧的かつ脅迫的な活動への反対を改めて表明する」と中国の南シナ海における活動への反対を表明し、「台湾海峡の平和と安定の維持は、国際社会の安全と繁栄にとって不可欠である。
我々は、両岸問題の平和的解決を求める」と謳っていた。
外遊に出発する頼総統をどれほど勇気づけたか、想像に難くない。
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