を「返還」していない
日本には、まだまだ蒋介石の「以徳報怨神話」を信じていたり、台湾が中国の一部だと
思い込んでいる人々が少なくありません。10月10日の国慶節(双十節)を台湾の建国記念
日だと思い込んで、お祝いしている人もいます。
そこで、このような台湾認識を正していこうという趣旨で、日本李登輝友の会の機関誌
『日台共栄』の2月号(第11号)から多田恵理事による連載「間違いだらけの台湾認識」
が始まりました。ここにご紹介します。 (編集部)
間違いだらけの台湾認識(1)台湾への正確な認識を広めるために
【機関誌『日台共栄』第11号】
理事 多田 恵
台湾はシナの一部ではない。だが、この正確な認識を阻んでいるのが、シナ人によるプ
ロパガンダであり、台湾の地位について明確にすることをためらう国際社会、そして長年
の国民党による思想統制の結果、台湾で台湾人史観がまだ十分に普及していないからだ。
■台湾はもともとシナではない
豊臣秀吉が「高山国」に国書を送り、明史には外国として台湾(雞籠山)が登場する。
オランダ、スペイン、鄭成功による支配を受けた台湾は古来シナの領土ではなかった。オ
ランダ時代にはアルファベットによるシラヤ語表記が定着したことは、台湾の非シナ性を
示している。
鄭氏政権の後、清が支配を及ぼすが全島には及んでいない。一八六七年、台湾南部十八
蕃社を率いる大頭目トゥキトクと米国との条約や牡丹社事件への清国の対応に示されてい
る。ただ、台湾出兵後の処理において日本は台湾を清の領土と認めた。
■日本は台湾を「占領」していない
朝鮮を巡って起きた日清戦争の結果、台湾は日本に割譲された。自国の領土に軍隊を派
遣することは占領ではない。また軍政も敷かれていない。存在が未確認である「カイロ宣
言」では日本が台湾を「盗取」したとしているが、これは連合国の「領土不拡大方針」と
の矛盾回避のためのでっちあげにすぎない。国民政府はこの立場を徹底するために、「日
治(日本統治)」という用語を「日拠(日本占拠)」と呼ぶよう統制を行った(「台湾省
新聞處」一九五一年十一月十五日の通知)。
■日本は台湾を「返還」していない
大東亜戦争での日本の降伏を国府は「無条件降伏」だと宣伝している。軍隊は無条件降
伏で解体されたが、国家は無条件降伏ではない。その後、連合国軍を代表して台湾を占領
した陳儀・「台湾省行政長官兼警備総司令」は台湾がシナに返還されたと宣伝し、台湾人
および国際社会を欺こうとした。台北での降伏式典の写真や文書を見れば、日本軍がシナ
ではなく連合国に対して降伏したことは明らかである。
その後、サンフランシスコ平和条約で日本は台湾への権利をはじめて放棄した。この放
棄条項は、国府と結んだ日華平和条約でもこれは認められている。台湾は決して「返還」
されていない。