5月28日、台湾で野党の中国国民党と台湾民衆党が共同提出した「立法院職権行使法」と「刑法改正案」が本会議で可決された。
「立法院職権行使法」では、総統に立法院での定期的な政治報告を義務付けているという。
台湾の報道によれば「総統は立法委員からの口頭の質問に対して順番通りに即時に回答しなければなりません。
立法委員に聞き返したり、立法委員の質問への回答を拒否することができません」(台湾国際放送)という。
また、立法院の調査権拡大と併せて、「国会侮辱罪」も新設したことを伝え、公務員や民間人が立法院での証言を拒否したり、答弁者が質問の回答を拒否したり、政府機関や企業、団体などが資料の提出などを拒むなど、国会を蔑視するようなことがあった場合、最高20万台湾元(約97万日本円)の罰金が科されるという。
つまり、立法院の権限を強化し、総統の権限を弱める措置を合法的に立法化した。
国会侮辱罪について、栖来ひかり氏は「香港の国安法と同じく非常に恣意的に運用が可能であり、気に入らない人物を何かしらの理由で国会に呼びつけ、難癖をつけて罰金、最悪なら一年の懲役にかけることができ」るようになると指摘していた。
時事通信も「台湾では、日本の特定秘密保護法に当たる情報漏えい防止の法整備が行われていない。
政府関係者の間では『台湾が自主開発した潜水艦や、半導体の機密情報が野党を通じて中国に漏れやすくなる』と懸念する声が上がっている」と報じている。
事実、中国国民党の「中国詣で」は今年に入ってから頻繁に続いている。
同党の立法院団総召集人で、「花蓮王」と呼ばれる傅[山昆]●・立法委員は、1月の「総統・立法委員選挙の後に2度も中国を訪問し、中国国民党の洪秀柱元主席も「立法院職権行使法」などが審議されているさ中の5月28日に中国を訪問し、広東省広州市で台湾事務弁公室の宋涛主任と会談している。
(●=草冠に其)
「機密情報が野党を通じて中国に漏れやすくなる」と懸念する声が上がるのも当然だろう。
台湾民主主義の危機と言ってよい事態だが、自らの犠牲も大きくなる武力侵攻で統一するのではなく、棚ぼた式に統一できることを一番望んでいる中国の習近平にとっては理想的な展開になりつつあるようだ。
野党主導の議会権限拡大法案が可決、総統の定期報告が常態化に【台湾国際放送:2024年5月29日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/99474
野党・国民党と台湾民衆党主導の、国会の権限拡大に関する二つの法案「立法院職権行使法」と「刑法改正案」が28日夜、立法院(国会)の本会議を通過しました。
国民党の立法委員(国会議員)は、花のアンスリウムを手に、議場内で「国会改革、国会再生」を声高に叫び、与党・民進党の立法委員は「憲法解釈で人民を後押しする」と叫んでいます。
28日まで野党主導の国会の権限拡大に関する五つの法案はすでに三つが可決され、残りの「立法院組織法」と「立法委員による院長・副院長(正副議長)選出法」は別の日に審議されるということです。
「立法院職権行使法」の可決により、国家元首である総統の国会での報告が常態化し、総統は立法委員からの口頭の質問に対して順番通りに即時に回答しなければなりません。
立法委員に聞き返したり、立法委員の質問への回答を拒否することができません。
国会を蔑視するようなことがあった場合、最高20万台湾元(約97万日本円)の罰金が科されます。
今回の法改正により、国会である立法院に調査権と聴証権(hearing)も付与されました。
日本のメディアは「新政権への揺さぶり」、「政権に痛手」、「頼清徳政権への影響も懸念」と分析しています。
なお、行政院(内閣)はこの二つの法案を立法院に差し戻して再検討を求めると共に、与党・民進党の立法院団体もこの二つの法案について憲法解釈を求める予定です。
総統府は、それを尊重するとし、法律に則って関連手続きを進めていくと明らかにしました。
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