辞表提出を拒否した田母神氏 [ジャーナリスト 花岡 信昭]

空幕長を解任された田母神俊雄氏は、11月3日付で定年退職となった。先にも紹介し
た懸賞論文の審査員をつとめた花岡信昭氏が今朝のメルマガで、野党が国会招致を考え
ていることについて、「田母神氏は国会の場で野党議員をこてんぱんにやっつけてほし
い。いずれが『国家・国民』を大切に思っているか、国民の前に明らかになる」と、国
会での発言を勧めている。田母神氏自身も記者会見で、国会招致があれば積極的に応じ
たいと答えている。やはり武人である。

 昨夜、時事通信社で行われた田母神氏の記者会見の模様を産経新聞のネット配信から
引用しているので、そのまま併せてご紹介したい。

 なお、些細なことだが、田母神論文中に「中国では蒋介石も日本の陸軍士官学校を卒
業」とあるが、これは広く流布している誤伝であり、蒋介石が陸軍士官学校を卒業した
事実はない。

 確かに蒋介石自身が「日本士官学校第六期卒業生」と自称し、身分証明証の学歴欄に
も「日本士官学校」と記し、『蒋介石全集』でもそのように記している。だがこれは明
らかな学歴詐称だ。実は、陸軍士官学校に進むための予備校である振武学校には入学し
ていたが、その後は新潟県高田町にあった陸軍第13師団野砲兵第19連隊の二等兵実習生
(士官候補生の説もあり)として過ごしていたというのが事実だ。詳しくは黄文雄著
『蒋介石神話の嘘』(明成社)などをご参照いただきたい。

 蒋介石自身が自称し、その全集でさえそのように記しているのであるから、田母神氏
の間違いではあっても責められるべきことではない。だから「些細なこと」と記した次
第だ。

 また、花岡氏が引用した産経新聞の会見詳報のネット配信には続報があり、かなり長
くなるが、それも加えてご紹介したい。

 田母神氏の「日本は侵略国家であったのか」はアパグループのホームページに掲載さ
れている。それほど長くない論文なので、ぜひご一読を。

                    (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬)

■田母神俊雄「日本は侵略国家であったのか」(アパグループHP)
 www.apa.co.jp/book_report/index.html


【11月4日「花岡信昭メールマガジン」第645号】
http://www.melma.com:80/backnumber_142868/

辞表提出を拒否した田母神氏

 空幕長を解任された田母神俊雄氏は、辞表を提出しなかった。その結果、定年退職扱
いとなった。これでいい。辞表を提出しなかったところに大きな意味がある。

 田母神氏は60歳。空幕長解任によって、空将の定年にあてはまることになり、防衛省
はこれを適用した。

 防衛省としては、懲戒処分も検討したというが、田母神氏が事情聴取を拒否した。こ
れはこれで防衛省の立場をおもんばかったものだ。

 懲戒処分となると、いったいどういう理由をつけたらいいのか、防衛省も頭を悩ます
ところだった。論文募集に応じたことを官房長に文書で報告していなかったため、内規
違反の適用も検討したようだが、となると、省内の士気低下といった副作用を招きかね
ない。

 論文が機密漏洩にあたるという解釈も難しい。事情聴取して田母神氏が堂々と反論し
たら、これまた対応は難しくなる。

 知恵者はいるもので、定年退職の適用に落ち着いた。防衛省としてはこれでスピーデ
ィーな処理ができることになる。

 田母神氏は記者会見で「日本もそろそろ自由に発言できる時期になったと思った私の
判断が誤っていたかもしれない」と述べた。

 そこは当方も同じ認識だ。「村山談話」はあの当時の政治的判断を踏まえて出された
ものだ。こういう内容にしなければ、中国、韓国がおさまらなかった。

 それがいまだに呪縛として残っていたわけだが、いま、村山談話の内容を変更するだ
けの政治的余裕は麻生政権にはない。それだけのエネルギーはとてもではないが、持ち
得ない。

 したがって、本音で言えば、多くの保守政治家は「あの戦争は1000%侵略戦争だっ
た」とは思っていない。麻生首相も浜田防衛相もそうだと思う。しかし、表でそのこと
を言うわけにはいかない。

 「田母神論文」には、いくつかの歴史の事実関係で異論を持つ向きもある。それはそ
れでいい。だが、個々の記述の是非にとらわれていたら、「田母神論文」が提起した大
きなテーマを見失うことになる。

 辞めてから発言すればよかった、という指摘もあるが、現職の空幕長だったからこそ、
これだけの反響を呼んだのである。OBの立場になってからの発言とは影響力が違う。

 野党は田母神氏を国会招致する方針だという。審議引き延ばしの批判をかわす格好の
材料となった。

 それもいい。田母神氏は国会の場で野党議員をこてんぱんにやっつけてほしい。いず
れが「国家・国民」を大切に思っているか、国民の前に明らかになる。

 以下、田母神氏の記者会見についての産経ネット配信記事。

 民間懸賞論文に政府見解とは異なる歴史認識を主張する内容を発表して航空幕僚長を
解任された田母神俊雄氏が3日夜、時事通信社(東京・東銀座)会議室で記者会見を行
い、「一言も反論できないなら北朝鮮と同じだ」などと語った。詳細は以下のとおり。

【冒頭発言】

 このほど自衛隊を退職するにあたって一言所感を申し上げます。私は10月31日付で航
空幕僚長を解任され、11月3日付で自衛官の身分を失うことになりました。自衛隊に勤
務して37年7カ月、防衛大学校から数えれば通算41年7カ月になります。自衛隊関係者や
国民の皆様方の支えがあって今日まで勤め上げることができました。感謝に堪えません、
誠にありがとうございました。

 解任の理由は、私が民間の懸賞論文に応募したその内容が「政府見解と異なって不適
切である」というものでした。しかし、私は国家国民のためという信念に従って書いた
もので、自ら辞表の提出は致しておりません。その結果、解任という事態となりました
ことは自衛隊とともに歩んでまいりました私にとりまして断腸の思いであります。もと
より私にとって今回のことが政治に利用されるのは本意ではありません。また、航空自
衛官、ひいては自衛隊全体の名誉が汚されることを何よりも心配致しております。

 私は常々、「志は高く熱く燃える」ということを指導してまいりました。志が高いと
いうことは自分のことよりも国家や国民のことを優先するということです。熱く燃える
ということは、任務遂行にあたりいかなる困難に突き当たろうとも決してあきらめない
ということです。論文に書きましたように、日本は古い歴史と優れた伝統を持つすばら
しい国家です。決して「侵略国家」ではありません。しかし、戦後教育による「侵略国
家」という呪縛(じゆばく)が国民の自信を喪失させるとともに、自衛隊の士気を低下
させ、従って国家安全保障体制を損ねております。

 日本の自衛隊ほどシビリアンコントロール(文民統制)が徹底している「軍隊」は世
界にありません。私の解任で、自衛官の発言が困難になったり、議論が収縮したりする
のではなく、むしろこれを契機に歴史認識と国家・国防のあり方について率直で活発な
議論が巻き起こることを日本のために心から願っております。

(質疑応答)

【論文を書いた理由】

 ──(論文は)持論ということだが、政府見解と異なる歴史認識の論文を現役のこの
時期に書いた理由は何か

「私が常々考えていたことでありますけれども、日本が21世紀に国家として発展してゆ
くためには、この自虐史観、そういった歴史観から解放されないと、日本のいろんな政
策に影響が出て、なかなか国とした、いわゆる日本が自主的に判断する政策がやりにく
いのではないか、と常々思っていまして。日本が悪い国だと、日本のやってきたことは
みな間違っていたと、いったことが修正される必要があるのではないか、と思います」

 ──現役をおやめになって発言されるのは比較的自由だと思うが、どうして現役の今、
書かれたのか

「私、実は、これほどですね、大騒ぎになるとは予測していませんでした。もうそろそ
ろ日本も自由に発言できる時期になったのではないのか、という私の判断がひょっとし
たら誤っていたかもしれません」

──きょう記者会見を開いた理由は?

「みなさんの一部から私に電話があって、ぜひやってくれという話があったからであり
ます」

【解任について】

 ──解任され、任半ばでおやめになることで無念なことは何か

「日本はまさにシビリアンコントロールの国でありますから、大臣が適切でないと判断
して、やめろということであればそれは当然のことであるというふうに思います。結果
が出たことについて、無念とかそういうことを考えていると次に前進ができないので、
これは気持ちを切り替えて次、またどうしたらいいかということを考えていきたいとい
うふうに思っています」

 ──後輩の自衛官に言い残すことはないか

「これは私がずっといってきたことですが、われわれは国家の最後の大黒柱である。従
って、志を高くもって、どんな困難があっても常に情熱を燃やし続ける、と。志が高い
ということは、さっきいったように、自分のことより、国家や国民のためを常に優先し
た言動をとる必要があるというふうに思います」

【論文の内容】

 ──論文の内容については、今も変わらないか

 「内容については誤っていると思いません」

 ──論文を拝読して、市販の雑誌から引用が多い。田母神さんご自身が発見されたこ
とはほとんどないと思うが

「それはおっしゃるとおりで、私自身が歴史を研究してというより、いろんな研究家の
書かれたものを読んで勉強して、それらについて意見をまとめるということであります。
なかなか現職で歴史そのものを深く分析する時間はなかなかつくれないと思います」

 ──さきほどこれほど大騒ぎになるとは予測しなかったとおっしゃったが、それは論
文がこれほど読まれることはないだろう、という意味なのか、内容について国家が受け
入れるようになると思われたのか

「後者の方です。日本の国がいわゆる言論の、どちらかというと日本の国は日本のこと
を守る、親日的な言論は比較的制約されてきたのではないかと思います。で、日本のこ
とを悪くいう自由は無限に認められてきたのではないか。しかし、その状況が最近変わ
ってきたのではないか、という風に判断をしておりました」

 ──懸賞論文が広く皆が読むということになるとはご承知の上でしたか

「そういう風になることは当初は、まったくしりませんでした。ただの普通の懸賞論文
として」

 ──APA(懸賞論文の主催者)側はそういうことは言わなかったのか。

「ぜんぜん」

 ──公表されるとは思わなかった

「優秀な論文はAPAが出しているアップルタウンという雑誌に発表されるということ
は知っていた。まさか、私が優秀論文に入賞するとは夢にも思っていませんでした」

以上、産経配信記事。


【前空幕長会見詳報】(3)完「参考人招致があれば、積極的に応じたい」

【参考人招致問題】

 ──今後は。政治家に転身しようとか

「いや、まだまったく今のところ心の中は白紙です」

 ──民主党などが国会で取りあげようという動きがあるが

「それはまことに遺憾であります。今いったように、政治にこれが利用されるというこ
とについては、まったく私の本意ではありません」

 ──参考人招致には応じるつもりか

「はい、参考人招致があれば、積極的に応じたいと思います」

 ──会見を行うことは内局は知っているか

「たぶん知らないと思います。私、今日は朝の零時から、なんか民間人になりました。
それを知ったのは夕方でしたけれど」

 ──さきほど国家、国民のため、とおっしゃったが、対外関係に影響を与えた。それ
でも国家、国民のためになったと思うのか

「私はですね、やはり日本が今まで相手の言い分にできるだけあわせて、日本国民はい
わばイイヒトだな、ということだと思うんですね。相手がいえば、ちょっと譲歩してや
ろうとやってきた結果が、だんだん良くなっているかというとそうではないんではない
かと。やはり国際社会の中で日本がきちんと主張していくことが、やはり長期的にみた
ら日本の国益にかなうことではないかな、と思います」

 ──自衛官官退任の連絡は夕方だということだが

「航空幕僚副長から、そういう辞令がでたと電話で連絡がきました。夕方5時くらい」

【歴史認識】

 ──政府の歴史認識が誤っていると思うか

「私は検証してしかるべきだと思います」

 ──自分の考えが偏っているという風には思わないか

「私はさほど偏っているとは思っておりません」

 ──有る意味、田母神さんの気に入った雑誌などだけを引用をしているようにみえるが

「日本が悪いことをしたということも、そっちの方が山ほど多いわけですから、そうい
うのはいっぱい読んでいるわけですね、もちろん。そうでないという歴史観の方も勉強
してらっしゃる方もおられますね。その両方を読んで、いったい何が真実かということ
を、私なりに判断したつもりです」

 ──大臣とはこの件についてどんなお話を

「中身についてはなにも話しておりません」

 ──31日、大臣とはお話になりましたか

「電話で、31日に」

【懸賞論文応募の経緯】

 ──応募は単独で

「単独で」

 ──自衛隊内で誘い合ってではない

「こんなのあるよ、といったことはあるが、出せとか強制はない」

 ──懸賞論文募集はどこで知ったのか?

「アップルタウンというAPAの雑誌で。私は航空自衛隊小松基地の司令をしていた関
係でAPAグループ代表が航空自衛隊金沢友の会の会長をしておられました。そういう
ことから、小松にいるときからアップルタウンの雑誌を送っていただいてました」

 ──会長(APAグループ代表)とは親しいのか

「小松時代にだいぶお世話になりました」

 ──会長がF15にのっている写真がありましたが、便宜供与などもあったのか

「特定の方だけに便宜供与をあたえるというわけではありません。みなさんに航空自衛
隊をよく知っていただくために、公平に公正に自衛隊の飛行機にのったりということは
してもらっています」

 ──中国、韓国が不快感を示しているが。

「それは見解の相違ですから、相手がどう思うかはこちらがコントロールできませんか
ら。向こうがこちらが言ったことに対して不快感を感じることもあるでしょう。そこは
大人と大人で、相手はこう思っているとお互い理解しあってつきあえばいいのではない
かと思います」

【言論の自由】

 ──制服組のトップの立場で発言をされたことについては

「私はさきほどいったようにですね、このくらいのことを言えないようでは、自由民主
主義の国ではないんではないかと思います。政府見解とかに一言も反論できないという
なら、北朝鮮と一緒ですね」

 ──一論文で集団的自衛権の行使や武器使用についてマインドコントロールがある、
とあり、一読するとそういうことを認めるべきだと読めるが

「書いてあるとおりです、論文に」

 ──「つまり集団的自衛権を認めるべきだと」

「そう思います」

 ──今までも、外部の雑誌に投稿されたことは

「それはありません。部内では相当書いていましたが、外部に論文を発表するのは初め
てです」

 ──旧軍の反省にたって、自衛隊がつくられたが、旧軍に対しての反省はないのでは

「そんなことはありません」

 ──では何を反省しているのか?

「軍が政治的な決定に対し、いろんな手段をもちいて反旗を翻すという、そういうとこ
ろが昔は少しあったかなというふうに思います。もちろん226(事件)とか515
(事件)などテロが行われることもありましたしね、それによって政治目的を達成する
と。現在は自衛隊はまったくそんなことを考えてませんし、現在は政治の決断が下れば
機関銃一丁でも、自衛隊はどこにでも行くと」

 ──政府の見解と違うことを今の立場でおっしゃるのは、それに通じるところはない
か?

「私はともかく、大臣の決定に従ってやめろといわれれば、やめていますしね。まさに
シビリアンコントロールに屈服しているわけですね。私がこれに対していろいろ抵抗す
るとすれば、それは問題があるでしょう。政治の決定が下れば、それに反することをや
るというのは問題があると思います。ただ、民主主義社会ですから、一度決めたことが
時代が変わってちょっと違うのではないか、ということは、私は議論されてしかるべき
だと思います」

──政府の見解とはあるいみ政治の決定ではないか

「それは、政治が決めたんですが、その村山談話なるものが、私は論文の中ではまった
く触れていませんが、本当に検証されて、日本国民がみな納得できるものなのかは疑問
があります」

 ──今回の論文の授賞式や賞金の授与は堂々と受けられるのか

「そうですね。はい」

 ──自衛隊には同じような考え方は多いのか

「多いか少ないかは分かりませんが、調べたことがないので。私と同じ意見を持つ人も
いると思いますね」


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