共産党<国民党<民進党―台湾本土派はどこへ行く? 迫田 勝敏(ジャーナリスト)

【台湾ダイジェスト:11月号】

 中国の亡命作家、袁紅冰氏が面白いことを言っている。中国の台湾戦略は「国民党の共
産党化、民進党の国民党化だ」と。台湾社などが開いた座談会での発言だ。座談会を聞い
ていないので、袁氏の意味するところは分からないが、台湾の政治情勢は確かにその方向
で動いているようにみえる。この流れが続く限り、いつか台湾から台湾本土派の思いを代
表する政党はなくなってしまう…。

◆05年から国民党は共産党

 国民党の共産党化は今に始まった話ではない。2005年4月に中国共産党の胡錦濤総書記と
中国国民党の連戦主席が北京で会談したときから始まったとみていい。会談は1945年の毛
沢東と蒋介石の重慶会談以来、実に60年ぶりの国共トップ会談だった。

 その連胡会談では「台湾独立に反対し、台湾海峡の平和と安定、中台対話促進を促進す
る」ことで合意、国民、共産両党が協力する「第三次国共合作の始まり」との観測が広ま
った。1924年の第一次国共合作は共産党員が国民党に入党した。1937年の第二次国共合作
では共産党軍(紅軍)は名称を変え、国民党の国民政府軍の指揮下に入った。過去2度の国
共合作は国民党が共産党を取り込み、いわば共産党の国民党化を促した。実際には共産党
は取り込まれたフリをして自分の勢力拡大に努めていた。

◆時計の針を戻した馬総統

 だが、今回の「第三次国共合作」は逆。共産党が国民党を取り込もうとしている。い
や、むしろ国民党が共産党にすり寄っている。馬英九総統は2008年に就任するや否や中国
人観光客を受け入れ、中国投資規制を緩和、矢継ぎ早に関係緊密化政策を打ち出し、野党
からは「傾中」と批判された。

 中国が関係改善のプレゼントとしてパンダを贈ると、輸送の沿道から中華民国旗を下ろ
すという気配りで、中華民国を消そうとしているかのよう。中国と台湾の関係は中国の中
の大陸地区と台湾地区という「一国二区」とまで言い出した。民進党政権の陳水扁総統が
言ったそれぞれ別の国という「一辺一国」論からの大きな後退であり、国民党政権だった
李登輝総統が「特殊な国と国の関係」といった1999年よりも前に時計の針を戻してしまっ
た。

 経済面で中国と一体化しようというのが一昨年の経済協力枠組み協定(ECFA)。台
湾経済は今や中国経済なしで生きられなくなろうとしている。政治面では今回の尖閣諸島
問題で「中国と共闘はしない」といいながら、現実には中国の強硬姿勢に呼応するよう民
間のデモを容認、米紙に尖閣は台湾の領土だと主張する意見広告を民間団体でなく、政府
(外交部)が掲載している。こうなると確かに国民党は共産党化してきたと思える。

◆謝歓待は中国の統戦工作?

 中国にすり寄る国民党をみて野党の民進党は批判しながらも、党の重鎮、謝長廷元行政
院長が訪中し、戴秉国国務委員や王毅台湾事務室主任と会った。これまでの民進党の幹部
の訪中でこれほど高位の共産党幹部と会ったことはない。破格の待遇に謝氏は「収穫は期
待以上」とご満悦だった。謝氏周辺には総統選の敗北は蔡英文候補に明確な対中政策がな
かったからだとの分析がある。

 その謝氏訪中に民進党内で表立っての異論はなかった。それでも奥歯にものが挟まった
ような表現は、積極評価ではないことがわかる。「中国の統一戦線工作だ」と真っ向から
批判したのは台湾団結連盟(台連)だけだった。

 民進党が中国と交流することは悪いことではないが、台連の言う通り、中国の謝歓待は
統一戦線工作の一環だろう。総統選で国民党が勝ったから、中国は歓待した。もし謝氏の
訪中が総統選前の昨秋だったら、歓待どころか、無視されただろう。

◆「国民党化」すれば民心離反

 総統選で蔡候補は昨秋、中国との関係を「現状維持」と位置づけ、さらには「台湾は中
華民国であり、中華民国は台湾」と明言した。従来の民進党の主張からみれば、国民党の
主張に近づく大転換であり、これは民進党の「国民党化」になる。「選挙のためだ」との
声もあったが、本土派からは「独立放棄か」と強い反発も出た。それでも中国の蔡評価は
なく、徹底して馬総統を支えたのだ。

 謝氏は今後、設置される民進党の中国事務委員会のトップに就任するといわれる。そこ
でどんな対中政策を打ち出すのか。傾中の馬総統の支持率は今や10%台に低迷している。
民進党の国民党化はやがては共産党化、つまりは中国化の道。台湾の民心はさらに離反す
るだろう。


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