超越藍緑―政権奪回に向け民進党は脱皮できるのか  迫田 勝敏(ジャーナリスト)

台湾では今年の11月29日に統一地方選挙が実施され、2016年の総統選挙の前哨戦と位置づけられ
ている。馬英九総統の支持率は10%を割っているので、野党第1党の民進党に有利と思いきや、ど
うも民進党がパッとしない。

 中日新聞・東京新聞で台北支局長の後に論説委員をつとめ、台湾在住ジャーナリストの迫田勝敏
(さこだ・かつとし)氏が民進党の現状を分析、「時代の風を受け入れるべきだろう」と釘を刺し
ている。

 なお、迫田氏も書かれているように、11月の地方統一選挙は7種類の市長や議員を選ぶ選挙とな
る。これは台湾の選挙史上初めてのことだそうで、7種類とは、行政院直轄市の市長と市議会議
員、県長(知事)・市長、県議会議員・市議会議員、郷長・鎮長・市長、郷長・鎮長・市民代表、
村長・里長。

 これは未だに台湾省を廃止できない台湾独特の地方制度に基づいている。台湾には現在、行政院
直轄市が5市(台北市、新北市、台中市、台南市、高雄市)あり、台湾省轄市が3市(基隆市、新竹
市、嘉義市)、それ以外に県と県轄市があるという複雑な地方制度になっているためだ。また、桃
園県が今年の12月に行政院直轄市に昇格して桃園市となるため直轄市が6つとなり、初の直轄市長
選が行われる。

 投票は約1万5千カ所の投票所で午前8時から午後4時まで行われ、即日開票される。


超越藍緑―政権奪回に向け民進党は脱皮できるのか
【エコノタイワン:2月号】

 台湾にまた「政治の季節」がやってきた。2年後の総統選挙の前哨戦でもある年末の統一地方選
挙の動きが活発になってきている。その選挙情勢に国民党主席でもある総統、馬英九の不人気が影
響し、世論調査では野党、民進党有利のデータが相次いでいる。となれば次の総統選は民進党、政
権奪回の好機だが、その民進党がもう一つパッとしない。相も変わらず党内団結に「?」が付けら
れている。

◆統一地方選で勢力図変化も

 年末の選挙は、台北市など直轄市の市長と市議会議員。県(市)長と県(市)議会議員、郷
(鎮)長と郷(鎮)民代表、そして里長の7つを同時に行うため「七合一」選挙と呼ばれている。

 七合一の最大の焦点は直轄市長選挙。直轄市は北から台北、新北、台中、台南、高雄の5市で、
年末には桃園県市が合併して大桃園市になり、6番目の直轄市に昇格する予定。6直轄市の住民は合
計すると、台湾全住民の7割近くになる。それだけに6市を抑えれば、台湾全土を事実上、掌握する
ことになり、総統選挙も有利になる。

 現状は、台北、新北、台中を中国との統一志向の藍陣営の国民党が握り、台南、高雄は独立志向
の緑陣営の民進党がトップ。台湾の北は藍、南は緑に色分けされているわけだ。新たに昇格予定の
桃園は国民党が強く、それを含めると直轄市のトップは藍4、緑2ということになる。

 ところが、この勢力図が変わる可能性もある。台中市は前々回、立候補し、敗れた民進党の現立
法委員、林佳龍が各種世論調査で優勢。台南、高雄は民進党の現職の再選が確実とされ、3対3。注
目は台北市長選。国民党有利だが、無党派で、台湾大学病院医師の柯文哲が人気急上昇。勝てば藍
2、緑3、緑系(野党系)1となり、藍優勢の台湾地図は緑優勢に塗り替えられる。

◆民進党のチャンスなのに…

 この勢力図の変調は馬英九の不人気が原因。昨秋の世論調査で支持率9・2%という数字が出て、
「史上最低の総統」の汚名を着せられたが、年初、新台湾国策智庫の調査でも、支持率(満意度)
9・9%と相変わらず。

 ここまで不人気な最大の原因は経済だろう。馬政権としても手は打ってはいるが、一向に改善し
ない。今後も経済パフォーマンスが目に見えて改善する兆候はほとんど見えないとなれば、与党へ
の投票を躊躇う人は出てくる。

 逆に言えば、これは野党のチャンス。当然、野党側は次の総統選も見据えて意気盛ん─と思いき
や、意外にもそれほど盛り上がってはいない。それどころか民進党内には亀裂もみえる。

 亀裂の一因は「中国」。2012年の総統選挙は蔡英文が善戦したが、最終的には80万票の差をつけ
られて破れた。党内にはその敗因は「対中政策」だとする声が多かった。中国との両岸関係が緊密
化している中で中国とどう付き合うのか、民進党の姿勢がはっきり見えない。有権者はそこに不安
を感じて、蔡英文への投票を躊躇ったというわけだ。

◆「台湾独立綱領」凍結論も

 そこで年初、党内で対中政策の練り直しの討議が行われ、一部に党の基本綱領凍結論も出た。
「主権独立自主の台湾共和国の建設」を綱領の筆頭に掲げている。これでは中国は相手にしてくれ
ない。だから凍結して、事実上、空文化しようというのだが、結局、強い反対論もあり、凍結には
ならず、討議は目新しい施策もないまま終わった。

 当然だろう。「台湾独立」で勢力を伸ばしてきた民進党だ、空文化したら、民進党でなくなる。
それに選挙の敗因を「対中政策」、つまりその裏側にある「台湾独立問題」だというのは違うだろう。

 いまや台湾人の8割は、自分は台湾人で、中国人ではないという。この人たちは口に出さなくて
も本音は台湾独立志向だ。独立綱領を凍結して中国に媚を売ろうものなら民進党の支持率は一気に
急降下する。いまや統一か独立かは争点にならない。

 むしろ問題は民進党の団結だ。総統選の最中、蔡英文の足を引っ張るような事件がいくつかあ
り、そのなかには火元は党内だというのもあった。対中政策を巡る議論でも凍結論は主席、蘇貞昌
反対派閥が提起したともいう。

◆統一独立論争を超えて

 そんななか元主席、謝長廷が、蘇貞昌が主席兼総統候補となるつもりなら「徹底的に苦しめてや
る」と言っていると聨合報が報道した。ご本人は否定したが、謝長廷は5月に予定される民進党の
主席選挙に出馬する意向ともいわれる。なにやらまた党内の争いが始まった印象だ。

 台北市長選の候補、柯文哲の人気がなぜ高いのか、民進党はもっと分析、研究すべきだろう。柯
はあまり統一独立論争はしない。暮らしの問題が中心で、政党のしがらみがないことが、好感され
ている。今の有権者は統一独立の藍緑対立を超越し、政党対立も超越している、柯はそんな有権者
の心情に近い候補なのではないか。民進党もそういう時代の風を受け入れるべきだろう。

                          (敬称略、ジャーナリスト・迫田勝敏)


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