ら第2回目となる総統候補者のTV政見放送が行われ、「92年コンセンサス」に論議が集中
したと伝えられている。
しかし、腑に落ちないというより、明らかに中国国民党の馬英九候補を応援する発言が
対中窓口機関である海峡交流基金会の江丙坤・董事長と高孔廉・副董事長より、政権放送
前日の29日に行われた。
特に高孔廉・副董事長の発言はあからさまに民進党の蔡英文候補を名指しで批判する内
容で、蔡氏が唱える「台湾コンセンサス」について「内容不明で(金額未記入の)白地小
切手みたいだ」と批判したという。
また、江丙坤・董事長は、蔡英文氏の名前こそ出さなかったものの、馬英九現総統が主
張するピースメーカーの政治理念が実現したことにより、両岸関係は過去60年来最もいい
状態にあると、この3年間の対中政策を褒め称えたという。そして「来年もこのような関係
を維持していきたい」と表明し、馬氏をバックアップした。
この江丙坤氏と高孔廉氏の発言を受け、馬英九氏は翌日の政見放送で、蔡氏の「台湾コ
ンセンサス」について「その中身に関する説明を蔡主席は未だに行っていない。空中楼閣
のようなものだ」と批判したという。
それに対して蔡氏は、政見放送で下記のように反論したと報じられている。
≪民主的プロセスによる「台湾コンセンサス」は台湾内部の多数意見を受け入れることが
できるほか、両岸間の真の意思疎通にもつながると反論。「北京当局の『一つの中国』原
則に同調し、いわゆる『92年コンセンサス』を認めれば、『最終的に中国大陸と統一す
る』という代価を支払わなければならない」と警告した。≫(中央通訊社)
海峡交流基金会は財団法人とはいえ、中国との経済協力枠組み協定(ECFA)を締結
するなどほぼ政府機関の役割を担っている。中国政府が台湾を国家として認めないことか
ら、中国の海峡両岸関係協会をカウンターパートとしているものの、台中両政府も実質的
に政府機関としての役割を認めているのが実態だ。所管する大陸委員会の手足ではなく、
総統の意向を受けて独自の動きをする存在だ。日本の経団連などよりも政府機関の色彩は
強い。
そのような準政府機関というべきところのトップなどが現政府を擁護するのは当り前か
もしれないが、あからさまに与党候補者を応援し、野党候補者を批判するという構図はど
うにも腑に落ちない。明らかに踏み込みすぎなのではないだろうか。
いずれにしろ、与党の中国国民党が総掛りで野党の蔡氏を攻撃している、熾烈さを増し
た乾坤一擲の総統選挙戦と言ってよいだろう。