馬英九候補は防戦を強いられているようだ。
親民党の宋楚瑜候補と票田を分け合っているため、宋氏に票が流れれば、民進党の蔡英
文候補が漁夫の利を得るため、馬氏には不利となる。宋氏がキャスティングボートを握る
形勢に傾きつつあるようだ。
一方、中国は台湾の選挙への不介入を表明している。しかし、昨年11月くらいから、駐
日大使を務めたこともある中国国務院台湾事務弁公室の王毅・主任は、蔡英文氏が否定し、
馬氏が容認する「92年コンセンサス」について「『92年コンセンサス』の否定を容認しな
い」「両岸関係の後退を容認しない」などと表明(11月17日、台湾ウィーク開幕式)、非
常に分かりやすい形で馬氏支持を打ち出している。
さらに、毎日新聞が伝えるところによれば、国務院台湾事務弁公室は「中国に駐在中の
台湾人ビジネスマンに直接電話をかけて投票のための帰省を促したり、航空券を手配した
りの“場外選挙応援”を活発化させている」という。馬氏の形勢不利と見ての“電話作戦”
のようだ。しかし、誰がどうみても選挙介入そのものだ。その記事を下記に紹介したい。
また、中国との交易を優先したいエバー・グリーン・グループ(長栄集団)の張栄発総
裁をはじめ台湾の財界の多くが馬氏支持を表明したが、庶民の反発を買っているようで、
中国政府の介入と同様、逆バネになりかねない雰囲気が強くなっている模様だ。
惑う台湾:12年総統選 中国政府、駐在台湾人に投票圧力 馬氏支援、帰省便も手配
【毎日新聞:2012年1月6日】
【台北・大谷麻由美】14日投開票の台湾総統選を巡り、中国の対台湾政策を主管する国
務院台湾事務弁公室(国台弁)が、対中関係改善を進めてきた与党・国民党候補の馬英九
総統(61)への支援のため、中国に駐在中の台湾人ビジネスマンに直接電話をかけて投票
のための帰省を促したり、航空券を手配したりの“場外選挙応援”を活発化させているこ
とがわかった。独立志向の強い最大野党・民進党候補の蔡英文主席(55)が当選すれば、
中国の対台湾政策の見直しが迫られるため。しかし、馬氏にとっては台湾人ビジネスマン
の票田は重要だが、中国の露骨な支援は対立陣営から主権を中国に売り渡していると批判
されかねず、「ありがた迷惑」との声も出ている。
台湾人ビジネスマンの間には中台関係の安定を求める傾向が強く、6〜7割が馬氏支持と
推計されるが、不在者投票制度がなく、帰省しか選挙に参加する方法がない。過去の総統
選では04年が約15万人、08年が約18万人帰省し、投票率の1%強を占めた。馬、蔡両氏の選
挙情勢はこう着が続いており、ビジネスマンらの投票行動は大きな影響を与える。
国台弁から電話を受けた台湾中部・台中市出身で中国山東省で働く王世隆さんは取材に、
「誰に投票しろとかは言われなかった。けれど『投票にはいつ帰るのか』『航空券はとれ
たか』と確認された。多くの知人が同様の電話を受けた」と明かした。
今年は投票日の14日が23日の春節(旧正月)直前のため、多くの台湾ビジネスマンたち
が仕事に忙殺されて帰省できない可能性が指摘されている。台湾人ビジネスマンによる馬
氏後援会の広報担当、葉恵徳さんは「まだ帰省の確約がとれない人が多い」と語り、「(国
台弁から)航空便が足りなかったら、航空会社と掛け合うとの申し出があった」ことを明
らかにした。
国台弁は実際、帰省の便宜を図るため、選挙用に計約200便の増便を決定。航空券の価格
も現在は4〜6割引きになっている。また、蔡氏の選挙運動を手伝っている台湾人ビジネス
マンのチェックにも余念がなく、台湾のテレビ番組で姿を見つけると電話で「テレビで見
ました」とだけ伝えるという。この台湾人は民進党側に「今後は表だって手伝えない」と
伝えてきた。
一方、中国側は台湾の選挙に対して、公式には「不介入」を表明している。
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■ことば 中国国務院台湾事務弁公室
中国政府が1988年、将来の中台統一を見据えて設立。対台湾政策を研究したり、中国政
府の決定した政策を実行するほか、台湾の関係事務全般を担う。地方の政府機関にも下部
組織が置かれており、中国に進出する台湾人ビジネスマンの管理・交流も行っている。