本県と台北間にエバー航空の定期便が就航したこともあって、台湾に関するニュース
がこれまで以上に気になる。
そんな中、日本が実効支配し、中国と台湾が領有権を主張する尖閣諸島(中国名・釣
魚島)沖で日本の巡視船と衝突した台湾の遊漁船が沈没した。
台湾で激しい対日批判の声がわき上がり、台湾の抗議船と巡視船九隻が尖閣近くの領
海に侵入する異例の事態に発展した。
日台の指導者に望みたい。問題をエスカレートさせず、誤りを検証して、冷静かつ速
やかに解決してほしい。日台関係はかつてないほど良好である。その関係を大切にすべ
きだ。
■警備の問題点を検証■
台湾の馬英九総統はこれ以上の強硬策をとるべきではない。
また、日本側は遊漁船を沈没させるに至った警備方法に問題がなかったか、真摯(し
んし)に検証する必要がある。
中国大陸で旧日本軍と戦った国民党の一部に根強い反日感情が残る。馬総統自身、学
生時代は「保釣(釣魚島防衛)運動」の活動家であり、尖閣の領有権を主張した著書も
ある。
こうした経歴から馬総統は「反日派」との見方をされがちだが、馬氏自身は「親日派、
知日派になりたい」と対日関係を重視する姿勢を強調している。
馬総統は尖閣の領有権をあらためて主張した上で、日本に明確な謝罪と賠償を要求した。
その一方で問題の平和的解決を呼び掛け、抗議船と巡視船の尖閣行きに「ガス抜き」
効果を求め、事態の沈静化に乗り出した。この手順は評価できる。
■軽率で過激発言多い■
台湾側が猛省すべきは、政治家の軽率な過激発言が多い点だ。
国防部長(国防相)は軍艦派遣もあり得るとの考えを表明した。
領有権問題を解決する最終手段として「日本との開戦も排除しない」などの発言もあ
った。不穏当な発言をした政治家は適切に処分されるべきだろう。
日本の対応にも問題があった。海上保安庁が日本の領海や排他的経済水域(EEZ)
で違法操業する国外船を取り締まるのは当然のことだが、なぜ、遊漁船を沈没させる事
態を招いたのか。
同胞の安全が脅かされたことに台湾の住民感情が反発するのは無理もない。対日不信
は反日のタカ派ばかりではなく、一般庶民の間にも広がったという。
海保は当初、「逃走中の遊漁船が突然ぶつかってきた」と説明。4日後に巡視船の過
失を認めた。こうした主張のぶれも台湾側の不信感を高めた。
尖閣の領有権争いを短期間で解決するのは難しい。難問は棚上げにしたままで、未解
決の漁業交渉を思い切って推進したい。まずは、尖閣周辺を含む日台間の海域で、双方
の漁民が安心して操業できる方策を探るべきだろう。