総統府大ホールに独裁者の名前を掲げるな  小林 正成(台湾独立建国聯盟日本本部顧問)

去る3月29日、台湾の馬英九総統は、総統府3階の大ホールの名称を「経国庁」と命名した。経国
とは、もちろん蒋経国に由来する。馬氏は1980年代に蒋経国の通訳を務めたことがあり、その理由
について「蒋氏の国家に対する多大な貢献を国民に知ってもらうため」だと説明しているという。

 しかし、中央通信社はこのニュースを伝えた際「時代力量の林昶佐・立法委員(国会議員)は、
蒋介石氏や蒋経国氏が崇拝するに値する人物であるかは、さらなる議論が必要だと指摘。(5月
の)退任を目前に控えた時期に、馬総統の個人的な感情によって、公共の建築物を使い神格化を行
うことは不適切だと批判した」とも伝えている。

 実は、日本にも林昶佐議員と同様の思いを抱く人がいる。現在、台湾独立建国聯盟日本本部の顧
問をつとめる小林正成(こばやし・まさなり)氏だ。

 小林氏は台湾独立運動のため、1971年5月9日、戒厳令下の台湾で台北市内のビルからビラを撒い
て逮捕された。ときの総統はその4年後に亡くなる最晩年の蒋介石、厳家淦(げん・かかん)が副
総統と行政院長を兼務していたものの、実質的な政策決定権は副行政院長の蒋経国が握っていた。

 逮捕されてから2ヵ月後の7月6日、小林氏は台湾警備総司令部の獄舎で蒋経国と対面している。
小林氏はその著『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)━白色テロ見聞体験記』(展転社、2013年刊)
で、そのときの模様を次のように記す。

<こいつは元ソビエト共産党員で、現在は行政院長であり、救国団(中国青年反共救国団)の頭
目。無辜の台湾青年を数多く殺した奴か。しかし、親父の蒋介石とはまったく顔立ちも体型も似て
いない。本当に父親の種が入っているのか。体型的には、弟の蒋偉国の方が似ているなあ。

 奴が挨拶しないので、私も挨拶をしない。黙って見つめながら奴の品定めをしていた。二分以上
見つめ合った無言の会見は非常に短く感じられた。

 なにゆえ蒋経国が私に会いに来たか、私には想像がつく。

 彼ら支那人のよく使う手だ。目標に定めた人物をある程度まで追いつめておき、突然、自分が現
場に現れて、正義の味方か、救世主の役を演じるのだ。そして、相手に物心両面の利益を与えて籠
絡し、逆スパイとして使用するのだ。

 蒋経国は、こんな事例を数多く見聞きしていた私の冷ややかな眼差しを感じたのだろう。私を利
用価値ゼロと判断したようだ。痩せても枯れても、私は日本男児の端くれだ。支那人などに利用さ
れる玉ではないのだ。

 二分もの間、誰かと見つめ合うという経験をした人はそういないだろうと思う。ニコリともせ
ず、睨み合うでもなく、ただ凝視し合う、不思議な光景だった。

 (先に視線を逸らしたら負けだ)

 そんなくだらない気持ちも働いたのは確かだ。奴もなかなかやるものだ。しかし、こちらは暇を
持て余す身分だ。我慢くらべのつもりでもあった。

 ヤッター。奴が先に目を逸らした。「勝った!」とささやかな自己満足に浸った一幕であった。>

 戒厳令下の台湾で小林氏が拘禁された台湾警備総司令部は、政治犯を拘置し、裁判を行って刑を
執行していた。小林氏の隣の房には、彭明敏氏とともに「台湾自救宣言」を発表しようとして逮捕
された後の立法委員の謝聰敏氏が入っていた。

 小林氏が8月末、晴れて追放の身になったとき、謝氏と謀って密かに持ち出したのが謝氏の獄中
書簡だった。この書簡は翌年、アメリカの「ニューヨーク・タイムス」に掲載され、処刑されるこ
とになっていた謝氏らの減刑につながったという。

 台湾警備総司令部は現在、景美人権博物館となって、拘禁されていた房や裁判所跡をそのまま残
し、白色テロ時代の文物史料を展示するなどしている。

 台湾の民主化に貢献したとして、台湾独立建国聯盟日本本部の宗像隆幸(むなかた・たかゆき)
氏と小林氏の写真も展示している。

 また小林氏の『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)』には、李登輝元総統も下記の推薦の辞を寄
せられていて、本会でも取扱っている。

<こういう日本人がいたことに驚いた。戦後台湾の白色テロ時代に、台湾の民主化を要求するビラ
を気球に積んで台北の空からばらまいたとは、当時を知る私には信じがたい事実だ。我が身を顧み
ず台湾のために尽力した日本人は少なくないが、小林氏もその系譜に連なる躬行実践の人だ。本書
は、台湾の民主化の陰に日本人も関わっていた歴史を証す台日交流秘話と言ってよい。>

◆小林正成著『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)』(展転社、定価;1,944円)
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総統府大ホールに独裁者の名前を掲げるな 小林 正成(台湾独立建国聯盟日本本部顧問)
【台湾の声:2016年4月20日】

 国民党の馬英九が退任を前にして、総統府の大ホールに、国家に多大な業績を残した先人とし
て、蒋経国の名を冠したと聞き、私は、大きな驚きと怒りを感じました。総統も議会も、過半数を
獲得した台湾議会がこのことを容認したとたら、台湾人は底抜けのお人好しと言わざるを得ないで
しょう。

 救国団という自己の親衛隊ともいう違法な集団を作り、白色テロと相俟って、台湾人民を恐怖の
ドン底に落し入れ続けた独裁者を、崇め奉るようなことは絶対に阻止すべきです。

 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」というような、簡単な問題ではありません。

 台湾人民が、台湾人としてのアイデンティティを高く掲げ、真の民主国家建設に邁進するには、
悪しき過去を徹底的に排除しなければなりません。

◆蒋経国は、台湾の民主化を計ってはいない

 台湾人が、国民党の不条理な政治に反発、目覚め、潮目が変わったのは中歴事件でした。1977年
12月に行われた統一地方選挙で、桃園県長選挙において、国民党側の不正が発覚し、大衆暴動が発
生。国民党は軍隊を出して鎮圧しようとしたが、大衆に「台湾軍隊は、台湾人を殺すのか!」と叫
ばれると、銃口を下にさげ、引き揚げていった。

 このことは、心ある台湾の人たちが、一つの突破口を見出すきっかけとなり、1979年8月には月
刊誌「美麗島」が刊行され、民衆の共感を呼び、一つのうねりが出来、民衆が覚醒していき、1986
年に民主進歩党の結成に至りました。

 そのとき国民党は、力で解散させると暴動が起きると考え、容認ではなく、黙認という形で受け
入れました。

 国際社会で孤立が深まる中、経国は鰹節を削るように、台湾人民に権力の譲渡を行いました。戒
厳令の解除・政党の成立も、そうせざるを得ない状況に追い込まれて行ったもので、蒋経国の自発
的民主化によるものではありません。

◆台湾の経済発展は、蒋経国の功績だけではない。蒋経国による十大建設とは?

 大陸反攻の虚言スローガンも使えなくなり、対外的にも孤立化が進み、民衆の不満も高まってき
たとき、彼らの不満を和らげる政策のヒントとしたのが目覚ましい日本の経済発展でした。

 十大建設なる政策を唱え≪開発独裁≫を推し進め、アジアの≪4匹の小龍≫の一つに数えられる
まで台湾経済を発展させました。

 しかし、この台湾経済の発展は、蒋経国の功績によるものだけではないと、私は考えます。

 インフラ整備・教育による勤勉な民度の向上等、総て、基礎は日本時代に出来ていた。その上
に、独裁権力による≪開発独裁≫が機能し、相乗効果で成功したのです。蒋経国の功績は、その一
部に過ぎないのです。

 私は、1971年、台湾独立運動のために戒厳令下の台北でビラを撒き、逮捕されました。1971年7
月6日、台湾警備総司令部の獄舎で、蒋経国と会見した折り、台湾独立建国聯盟に身を置く者とし
て、彼を最大の敵と位置付けて対峙しました。今もその考えに変わりはありません。

 敢えて蒋経国の功績をあげるとすれば

(1) 副総統に李 登輝を抜擢した
(2) この世界から早く去った

 以上が私の揺るぎなき確信的意見です。


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・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


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