絵本で八田與一の事績を紹介

留学生や台湾を知り始めた方々には最適のテキスト

 日台交流に携わる方々には、八田與一といえば知らない人はいないといってよ
いでしょう。もし知らなかったとしたら「モグリ」です。
 李登輝前総統の慶応大学におけるまぼろしの講演も八田與一がテーマでしたし
、古くは司馬遼太郎氏の『台湾紀行』でも紹介され、さらには1997年(平成9年)
に台湾で刊行された中学校教科書『認識台湾』でも紹介されていました。
 八田與一はいわば日台交流のシンボルのようになっています。
 その八田與一が今度は絵本で紹介されています。2月15日に刊行された、かこ
さとし著『海外の建設工事に活躍した技術者たち』(瑞雲舎、定価:1,260円)と
いう絵本です。
 本書は、世界でその力を発揮した日本の技術者3人を取り上げていて、パナマ
運河建設に力を尽くした青山士(あおやま あきら)、台湾の烏山頭ダムを建設
した八田與一、朝鮮で世界最大の水豊ダムを完成させた久保田豊(くぼた ゆた
か)がその3人です。
 その3人を育てた恩師で、小樽港工事をおこなった東大教授の広井勇(ひろい
 いさみ)の紹介からはじまる本書は、確かにすべての漢字に振り仮名がふって
ありますが、絵本といって決して侮れない豊かな内容となっています。
 八田與一は「台湾を変えた土木技師・八田與一」というタイトルで、10ページ
を費やしています。小見出しはそれぞれ、1、海を渡った大きな夢 2、不毛の
地をよい農地にする大計画 3、大たんでしかも綿密な工事の進め方 4、嘉南
大しゅうの父 5、心の懸け橋を残した人、となっています。
 ダム造りの工法である「セミハイドロリックフィル工法」の説明や、給水路や
排水路1万6000?について「愛知用水の10倍、万里長城の6倍、台湾の13周
分、地球赤道の半周にあたる」という注があったり、最後の方で、毎年5月8日
の命日にその墓前で慰霊祭が行われていることもきちんと紹介されていて、大人
が読んでも読み応えがある充実した内容となっています。
 台湾からの留学生や台湾を知り始めた方々には、最適のテキストかもしれませ
ん。紀伊国屋書店や八重洲ブックセンターなど大手書店で取り扱っているそうで
す。
青山士や久保田豊の事績は一般的にあまり語られることは少ないようで、特に朝
鮮に世界最大のダムを建設したことなどは、戦前の歴史を知る上でもっと知られ
てよい事績ですので、小学生をお持ちの親御さんなどにお勧めします。

■著 者 かこ さとし(加古 里子) 児童問題の研究、児童文学・絵本の創作。
 東京大学、都立大学、横浜国立大学、山梨大学などの講師を歴任。有限会社加
 古綜合研究所社長、工学博士、技術士。
■出版社 瑞雲舎 〒108-0074 東京都港区高輪2-16-36-505
         TEL 03-5449-0653 FAX 03-5449-2830



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