アメリカ連邦議会の下院は7月21日、中国が台湾に対して軍事行動を取った場合、中国の高官が米国内で保有する資産を公開するなどの制裁を科すよう政府に求め、紛争の抑止を狙う「台湾紛争抑止法案」(Taiwan Conflict Deterrence Act)」を全会一致で可決したと報じられています。
この法案は、共和党のリサ・マクレーン議員と民主党のブラッド・シャーマン議員の超党派によるもので、今年2月に提出したそうです。
今後、同じ文案の法案が上院で可決され、トランプ大統領が署名することで成立します。
台湾国際放送は「今期のアメリカ連邦議会では台湾を支持する法案が20件以上提出・通過している」と伝えています。
確かに、3月には、中華民国(台湾)の在米代表機関「駐米台北経済文化代表処」の名称を「台湾代表処」に変更するよう政府に求める法案(共和党のジョン・カーティス上院議員と民主党のジェフ・マークリー上院議員による共同提案)。
4月には、台湾侵攻への野心をもつ中国への抑止効果もあるという、ロシアがウクライナとの和平交渉を拒否したり、将来的な和平協定を破って再び侵略したりした場合、追加制裁を科すとする法案(共和党のリンゼー・グラム上院議員と民主党のリチャード・ブルーメンソール上院議員による共同提案)。
5月には、国務省に対し、台湾との交流に関するガイドラインの定期的な見直しや交流制限の解除計画を提出するよう求める内容の「台湾保証実施法案」と、アルバニア決議が「中華人民共和国政府が国連における唯一合法な中国の代表とするものだが、台湾および台湾の人々の国連や国連機関における代表権について言及していない」とした「台湾国際団結法案」が5月5日に下院にて可決。
7月には、台湾周辺の海底ケーブルを守るための法案「S. 2222((IS)─ Taiwan Undersea Cable Resilience Initiative Act」(共和党のジョン・カーティス上院議員と民主党のジャッキー・ローゼン上院議員による共同提案)。
そして、このたび下院で可決された「台湾紛争抑止法案」です。
法案が成立するのは少ないようですが、上院も下院も、議員の台湾への理解と関心はかなり深い印象を受けます。
法案を提出すること自体が中国への抑止力として働いている面もあるかもしれません。
中国は現在、サイバーを使って世論を変えようとする認知戦を台湾に仕掛け、立法院などへの浸透工作を進め、米国が手を出しにくいグレーゾーン作戦を展開していると言われています。
アメリカ連邦議会の議員は、中国による台湾への認知戦や浸透工作をよく理解しつつ、「台湾関係法」や「台湾旅行法」、「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ2019年法」(台北法)などの法律や、連邦議会として可決した「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とすることを再確認する第38号両院一致決議」をバックボーンとして、米国なりの法戦で戦っているようです。
翻って、日本の現状を見ますと、日本には台湾に関する法律は1本もありません。
日本政府が「緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」「自由や民主主義、法の支配という基本的価値観を共有する」と位置づける台湾に関し、日本はただの1本の法律も持っていないのです。
台湾に関するなにがしかの法案が提出されたとの話も寡聞ながら知りません。
台湾問題に関わっていますと、米国と日本の議員の落差の原因はどこにあるのだろうといつも思いますが、草莽の私どもは、日本の台湾への認識を深める活動を積極的に進めつつ、台湾がなぜ日本にとって重要なのか、「政策提言」などの具体性をもって立法府の国会議員に届けてゆくこと続けてゆくしかないようです。
本日、今年度の政策提言「日米台のサイバー空間における安全保障協力体制を構築せよ」(日文、中文、英文)の冊子が印刷所から納品されます。
台湾問題に関心が深い議員の方々に手渡しながら、趣旨をしっかり伝えてゆきたいと思います。
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