英国の下院外交委員会は8月30日に発表したインド太平洋政策に関する報告書で、「台湾はすでに独立した国家である。名を中華民国(ROC)と呼ぶ」と明記。「台湾は永続的住民、一定の領土、政府、他国との関係を取り結ぶ能力といった国家の構成要件を全て有している。不足しているのは、より広い国際承認だけだ」と指摘した、と台湾の中央通信社は報じている。
米国も8月29日、国務省が通常は主権国家向けに使われる「対外軍事融資(FMF)」の制度を台湾に初めて適用して台湾への軍事支援を承認し、議会に通知したと報じられた。米国はFMFの活用により、米国の現在の在庫にある装備品などを台湾に売却できるようになるという。
米英両国が奇しくも同時期に、英国は下院外交委員会の報告書、片や米国は軍事支援制度で、台湾を独立した主権国家と認める措置を取った。米英ともに初めての対応だという。
安倍元総理が2016年に唱道した「自由で開かれたインド太平洋」構想は、米英やG7で受け入れられ、菅政権が「台湾海峡の平和と安定の重要性」に目を向けさせ、岸田政権で台湾海峡の平和と安定の重要性は「国際社会の安全と繁栄に不可欠」と位置づけたことが定着しつつある。
これによって、台湾が覇権国家中国の外洋への展開を扼する、戦略的要衝であることが世界的な認識に広がりつつあった。ヨーロッパ各国も中国への反中感情と裏腹に台湾に注目するようになった。
米英は、日本の中国抑止を狙った戦略的構想をテコにさらに一歩踏み込み、台湾を独立した主権国家と認める措置を取り、中国が唱える「『一つの中国』原則」を否定し、真っ向から立ち向かう形になったと言ってよい。
今後、米国も英国も、台湾と高官による相互訪問交流などを実施することで、措置の内実を高めていくのではないかとみられる。日本もまた、台湾のCPTPPТ(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への早期加盟に向けすでに動き出しているようだが、米英の措置によって加速されるかもしれない。米英日の今後の動きに要注目だ。
—————————————————————————————–米政権、台湾への軍事支援承認 主権国家に適用される制度を初利用【CNNニュース:2023年8月31日】https://www.cnn.co.jp/usa/35208487.html
(CNN) バイデン米政権が、通常は主権国家に適用されるプログラムを通じた台湾への装備品供与を初めて承認したことが分かった。29日に連邦議会に送られた通知で明らかになった。
国務省の「対外軍事資金(FMF)プログラム」の一環で支援が行われる。総額8000万ドル(約116億円)に上る費用は米国民の税金でまかなわれる。
CNNが確認した国務省の議会宛て通知では、「FMFは統合共同防衛力や強化された海洋状況把握、海洋安全保障能力を通じて台湾の自衛能力を強化するために活用される」と説明している。
国務省の報道官はFMFプログラムを通じた初の供与について確認した。
報道官は「台湾関係法や長年の『一つの中国』政策に沿い、米国は台湾が十分な自衛力を維持するのに必要な防衛物資やサービスを提供する」と説明。「米国は台湾海峡の平和と安定に不変の関心を有する。台湾海峡の平和と安定は地域や世界の安全保障と繁栄にとって不可欠だ」と述べた。
台湾支援を続けてきた米国の新たな動きは、中国の怒りを買う可能性が高い。中国は台湾を自国の一部と主張している。
米国はこれまで、「対外有償軍事援助」と呼ばれる別のプログラムを通じて台湾に武器を売却してきた。FMFの活用により、米国の現在の在庫にある装備品などを台湾に売却できるようになる。
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