いまだ日本からワクチン124万回分を台湾に提供した嬉しい気分が残る6月6日朝、今度は米国が上院議員のタミー・ダックワース(民主党)、ダン・サリバン(共和党)、クリストファー・クーンズ(民主党)の3氏らを乗せた米軍の輸送機を台湾に派遣し、ワクチン75万回分を寄付すると発表した。
ホワイトハウスが6月3日発表したところによれば、6月末までに海外に供給する新型コロナウイルスワクチン8,000万回分のうち、700万回分は台湾やインド、マレーシア、ベトナムなどを含むアジア諸国に届けられるとしていたが、時期や割当量は不明だった。
松山空港の空軍基地内で3議員と面会した蔡英文総統に、ダックワース議員は「台湾へのワクチン提供について『緊急の需要があると判断した。そして、私たちはこのパートナーシップを重視している』と語った」(中央通信社)という。台湾の感染拡大の抑止は「緊急」を要するというバイデン政権の判断があったことをうかがわせる。
ただ、提供時期は明らかにされていない。これもまた日本と同じように、中国の妨害を封じるため極秘裡に進められるようだ。
台湾はこれまで2,000万回分以上のワクチンを契約しているものの、5月19日に国際的枠組み「コバックス(COVAX)」を通してアストラゼネカ製ワクチン40万回分(有効期限8月31日)を初めて受け取り、次に5月28日にモデルナ製15万回分が到着するなど約86万回分しか受け取っていなかったが、そこに日本からの124万回分が加わり、そして米国からの75万回分を加え、約285万回分を確保したことになる。
しかし、285万回分といえども全人口2,360万人の12%に留まっている。
茂木敏充・外務大臣が6月4日の記者会見で明らかにしたように「7月以降は台湾での生産体制が整ってきますが、当面、この現状において非常にワクチンの調達が厳しい状況にあるという中で、日本として支援を行った」と緊急支援の事情を説明、今後は「COVAX等を中心にしながら、国際的な枠組みでも提供を現物として、していきたいと思いますが、同時に各国のニーズ等を踏まえた場合に、バイでの協力とか、他の国際機関を通じた協力、こういったことも行っていきたい」と述べているように、台湾側から追加供給の依頼があった場合は、それに応えることを想定しているようだ。
6月4日付の産経新聞も「政府は台湾に対し、追加的なアストラゼネカ製ワクチンの提供も検討する方針だ」と伝えている。
—————————————————————————————–蔡総統、米に感謝 ワクチン支援は「干天の慈雨」 台湾に75万回分提供へ【中央通信社:2021年6月6日】https://japan.cna.com.tw/news/apol/202106060003.aspx
(台北中央社)蔡英文(さいえいぶん)総統は6日、台湾を訪問した米議会上院の超党派議員3人と台北市内で面会した。米政府からの新型コロナウイルスワクチン75万回分の提供発表を受け、蔡氏は「台湾にとって干天の慈雨となった。この助けを心に深く刻む」と感謝した。
この日、バイデン大統領の側近として知られるクーンズ議員(民主党)らが到着。一行は米軍の輸送機で訪問した。空港に降り立ったダックワース議員(同)は、台湾へのワクチン提供について「緊急の需要があると判断した。そして、私たちはこのパートナーシップを重視している」と語った。サリバン議員(共和党)は台湾から支援されたマスクを着用し、ワクチン提供は「恩返し」だと話した。
台湾は、バイデン政権が海外へのワクチン提供を発表した最初の供給先の1つ。また4日には、日本から提供された124万回分が到着した。蔡氏は、米国と日本からの支援でワクチンを入手するより多くの機会に恵まれたと言及。今後は米国や日本などの国と連携し、目の前の挑戦に立ち向かっていきたいと述べた。
(葉素萍、鍾佑貞/編集:楊千慧)
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