米国では高等教育を破壊する「トロイの木馬」と評され、中国共産党のプロパ ガンダ機関と指摘されていて、政府関連の情報を違法入手するスパイ活動にかかわっているとも指摘されていた。90校のうち、これまでシカゴ大学、ペンシルベニア大学、ウエストフロリダ大学、ノースカロライナ州立大学、アイオワ大学、ノースフロリダ大学、ミシガン大学などが閉鎖しまたは閉鎖を発表したという。
米国内で最初に設置したメリーランド大学も1月17日に閉鎖を発表し、カンザス大学は今月中、来月にはデラウェア大学も閉鎖するそうだ。
米国で孔子学院が次々と閉鎖される背景には、2018年8月13日にトランプ大統領が署名して成立した2019年度国防権限法において、孔子学院の受け入れを続ける大学に対する国防総省からの資金援助の制限を定めたことがある。
実は、中国共産党は孔子学院が国の宣伝機関であることを公式に認め、李長春・元政治局常務委員は「中国の外国におけるプロパガンダ組織の重要な一部」だと証言していた(Newsweek日本版:2018年3月24日)。
ジャーナリストの有本香氏は2年前に「ファーウェイの次は『孔子学院』締め出しを」を発表し、このたび産経新聞論説副委員長の佐々木類氏も「一昨年夏、立命館アジア太平洋大学(APU)孔子学院(大分県)を取材で訪れた。学院入り口の壁に掲げられた立体地図では、沖縄県・尖閣諸島が中国領になっていた」という驚くべき事実を紹介しつつ、世界の潮流に逆行して日本だけで増えている奇妙奇天烈な日本の現状を伝えている。
—————————————————————————————–佐々木類(産経新聞論説副委員長)日本で静かに増殖する中国・孔子学院米ではFBIの捜査対象、世界で“締め出し”傾向も…日本は逆行!?「どこまでお気楽なのか」【ZAKZAK(夕刊フジ)「日本復喝」:2020年1月23日】
中国がソフトパワーの先兵として、世界各国に設置を進めているのが「孔子学院」である。英紙フィナンシャル・タイムズは以前、孔子学院の設立目的について、「3つのT、すなわち、『台湾』『チベット』『天安門事件』から国内外の目をそらすことである」と報じた。
米国では、中国共産党のプロパガンダ(政治・思想宣伝)と、スパイ活動を行った疑惑を受け、連邦捜査局(FBI)捜査対象となり、安全保障上の理由などから閉鎖が相次いでいる。全米に90校近くある孔子学院のうち、米東部の名門デラウェア大学は来月、中部のカンザス大学は今月中に孔子学院を閉鎖する。
米議会超党派の議員らも、米国内の孔子学院に対し、外国人代理人登録法に基づく外国人代理人として登録するよう求めている。
こうした動きに逆行しているのが日本だ。「どこまでお気楽なのか」と、暗澹(あんたん)たる思いにとらわれている。
昨年5月、山梨学院大学に日本で15番目の孔子学院が開校した。当時、開校式に保守論客として知られた自民党の宮川典子衆院議員が出席していたのを知り、驚いて議員会館に話を聞きに行った。
宮川氏によると、懸念されている思想洗脳工作などについては、山梨学院大学側が脇を締め、中国人講師陣との距離感も心得ているから問題ないとのことだった。
教育問題に熱心に取り組んでいた宮川氏は昨年9月、40歳という若さで亡くなった。反論できない相手に筆を進めるのはどうかと自問したが、宮川氏の持論をきちんと紹介することこそが、レクイエム(鎮魂曲)になると信じ、拙著『日本が消える日』(ハート出版)でも紹介させていただいた。
同書では、米国やカナダの孔子学院の実態が毛沢東学院であり、習近平学院というべき代物であることを、現地の報道などをもとに指摘した。
孔子学院を併設する早稲田大学(東京)の大隈庭園には、いつの間にか孔子像が鎮座していた。筆者は一昨年夏、立命館アジア太平洋大学(APU)孔子学院(大分県)を取材で訪れた。学院入り口の壁に掲げられた立体地図では、沖縄県・尖閣諸島が中国領になっていた。
孔子学院を頭から否定するものではない。ただ、運営方法や資金源があいまいなのは、教育機関として問題ではないのか。
筆者は、早稲田大学をはじめ、全国すべての孔子学院に簡易書留で質問状を郵送した。京都市の立命館大学孔子学院だけが、「取材に応じられない」という返事を返してきただけである。
世界の潮流が、孔子学院の締め出しに傾いているときに、日本だけで増殖している。今春、習氏を「国賓」として招待するだけのことはある。
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佐々木類(ささき・るい)産経新聞論説副委員長1964年、東京都生まれ。89年、入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現職。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『日本が消える日』(ハート出版)、『静かなる日本侵略』(同)、『日本人はなぜこんなにも韓国人に甘いのか』(アイバス出版)など。