パームビーチの高級別荘「マール・ア・ラーゴ」で2日間にわたる首脳会談を始めた。
これに先だつ4月5日、トランプ政権で、アジア政策を担当する国家安全保障会議(NSC)アジ
ア上級部長のマット・ポティンガー氏が外国人記者を対象にした記者会見を開き、会談スケジュー
ルと内容について説明、この中で米国の「一つの中国」政策にも言及し、それは「中国との3つの
共同コミュニケと台湾関係法」だと明言したという。台湾の台湾国際放送が伝えているので下記に
紹介したい。
2月9日夕に行われたトランプ大統領と習近平との電話会談で、トランプ大統領は習主席の要請を
受け入れて「一つの中国」政策を尊重することを約束したと報じられている。
例えば、米中首脳会談について報じた4月5日付のロイターは「トランプ氏が『一つの中国』政策
を認めていなければ、今回の首脳会談は行われなかっただろう。……トランプ氏は2月に習国家主
席と電話会談し、発言を修正した」と伝えている。
未だに日本の識者やジャーナリストの多くも、ロイターと同様に、トランプ大統領は中国が主張
する「一つの中国」を認めて発言を修正したと書いている。しかし、本誌で何度もお伝えしている
ように、トランプ大統領は発言を修正などしていない。
林建良・「台湾の声」編集長がホワイトハウスの正式発表を基に「トランプが尊重しているのは
アメリカの『一つの中国』政策」であり、「これは大きなミスリードと言わざるを得ない」と指摘
していることを紹介し、米国在住のアンディ・チャン氏もホワイトハウスの正式発表を確認しつつ
「トランプは習近平の要請により、中国の『一つの中国』を尊重すると言ったのではなく、『米国
本来の一つの中国政策』を尊重すると答えたのだ」と指摘していることを紹介してきた。
さらに国際政治学者の藤井厳喜氏が「トランプ大統領は、所謂『one China Policy』に戻るとは
全く発言していません。日本のマスコミの大部分は、『トランプは一度はone China Policyを否定
したが、前言を翻してチャイナの圧力に屈してone China Policyを承認した』と報道しています。
全くの誤りです。彼は1972年の米中共同声明(上海コミュニケ)の原点に戻ることを主張し続けて
おり、その原則を全く変えていません」と指摘したことも紹介した。
マット・ポティンガーNSCアジア上級部長もまた記者会見で、ホワイトハウスがニュースリ
リースで伝えた「honor our “one China” policy」の「our」(我々)は米国を指し、米国が
「honor」(尊重する)「一つの中国」政策について、「米国の『一つの中国』政策」とは「中国
との3つの共同コミュニケと台湾関係法」だと述べたのだった。
恐らくロイターなどの有名なメディアでも、トランプ大統領は発言を修正したと報道するケース
が後を断たないため釘を刺す意図があったのではないかと思われる。
これまで何度かホワイトハウスがこの電話会談について公式発表したニュースリリースを紹介し
てきたが、改めて下記にご紹介したい。
◆Readout of the President’s Call with President Xi Jinping of China【February 09, 2017】
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/09/readout-presidents-call-president-xi-jinping-china
米高官:ト・習会談で「一中」取引せず
【台湾国際放送:2017年4月6日】
米国ホワイトハウスの高官が、米国のトランプ大統領と中国大陸の指導者・習近平氏の会談で、
「一つの中国」原則に関する取引は行われないとしている。米国のトランプ政権で、アジア政策を
担当する国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長であるマット・ポティンガー氏は5日、米国に駐
在する外国人記者を対象にした記者会見で、6日と7日に行われるトランプ大統領と、中国大陸の習
近平氏との会談のスケジュールと内容について説明した。
この中で、ポティンガー氏は、トランプ大統領は今年2月に、「米国の『一つの中国』政策」を
重ねて確認しており、習近平氏との会談で、対北朝鮮政策、一つの中国政策、そして台湾向けの武
器売却をめぐる、いわゆる「取引」は行われないと指摘した。ポティンガー氏は、米国の「一つの
中国」政策は、米国と中国大陸との3つの共同コミュニケ、ならびに台湾関係法に合致していると
話した。
これに対し、外交部の王珮玲・報道官は6日、米国が台湾関係法に基づく約束を守るとする発言
を歓迎すると述べた。トランプ大統領と習近平氏との会談について外交部は引き続きこれを注視す
る他、米国は会談前と後に、台湾にその内容などを報告することになると説明している。